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第29音 転校生と君の音

――3年前。


中学二年。


音羽ミオ 14歳。


まだ正式なヒーローではなく。


夜だけこっそり活動する“仮ヒーロー”。


昼間は普通の学生。


……のはずだった。


教室。


ミオは机に突っ伏していた。


「ねむ……」


原因。


深夜のノイズ退治。


ビートが机の中から小声で言う。


「自業自得」


「昨日のノイズ強かったんだもん……」


その時。


教室のドアが開く。


担任が言う。


「転校生を紹介する」


クラスがざわつく。


女子達。


「え、男子!?」


「イケメンかな!?」


男子達。


「頼む普通であれ」


ミオは眠そうに顔を上げる。


すると。


教室へ入ってきた少年。


黒髪。


少し長め。


優しそうな目。


静かな雰囲気。


でもどこか不思議。


その男子が自己紹介する。


「……天城レンです」


教室がざわつく。


「え、めっちゃイケメンじゃん」


「ドラマ出てそう」


ミオはぼーっと見ていた。


すると。


レンの視線が一瞬だけミオへ向く。


ミオがなぜか慌てる。


「な、なんで見た!?」


ビートが呆れる。


「自意識過剰」


昼休み。


ミオは屋上で一人ご飯。


最近はずっとそうだった。


ゼロビートを失ってから。


人と関わるのが少し苦手になっていた。


そこへ。


「ここ、いい?」


レンだった。


ミオが驚く。


「えっ」


レンは自然に座る。


無理やりじゃない。


変に距離も近くない。


ちょうどいい感じ。


ミオが少し戸惑う。


「……なんでここに」


レンは笑う。


「静かだから」


それだけ。


でも。


なんか安心する。


ミオが少し笑う。


「……変な人」


「よく言われる」


会話が続く。


自然に。


無理なく。


久しぶりだった。


こんな感じ。


放課後。


音楽室。


ミオは誰もいないと思ってギターを弾いていた。


静かなメロディ。


少し寂しい曲。


だが。


後ろから拍手。


「上手いね」


ミオが飛び上がる。


「うわぁぁぁ!?」


レンだった。


「き、聞いてたの!?」


「少しだけ」


ミオが顔を赤くする。


「最悪……」


レンは笑う。


「でも本当に良かった」


「音に気持ちが乗ってる」


ミオが少し黙る。


そんなこと。


初めて言われた。


レンが静かに聞く。


「音楽好きなんだね」


ミオが頷く。


「うん」


「大好き」


その時の笑顔は。


本当に嬉しそうだった。


レンは少しだけ目を細める。


「……そっか」


数週間後。


中学校行事。


【林間学校】


クラスが大盛り上がり。


「班決めだー!!」


「頼む陽キャ来い!!」


ミオは静かにしていた。


すると。


先生が言う。


「音羽、天城、同じ班な」


ミオ。


「……え?」


レン。


「よろしく」


さらに。


他のメンバーも偶然相性がよく。


ミオは自然と班の中心にいることになる。


料理。


自由行動。


キャンプファイヤー。


全部。


レンと一緒だった。


山道。


班行動中。


ミオが転びそうになる。


「あっ」


その瞬間。


レンが手を掴む。


「危ない」


ミオの心臓が跳ねる。


近い。


顔が。


ミオが真っ赤になる。


「あ、ありがと……」


レンは自然に笑う。


「どういたしまして」


ビートが小声。


「青春」


「うるさい!!」


キャンプファイヤー。


みんな盛り上がる。


ミオは少し離れた場所で火を見ていた。


すると。


レンが隣に座る。


静かな時間。


炎の音だけ。


レンが言う。


「ミオってさ」


名前呼び。


ミオが少しドキッとする。


「……なに」


「無理して笑う時あるよね」


ミオの表情が止まる。


図星だった。


レンは優しく続ける。


「辛い時は頼っていいんだよ」


その瞬間。


ミオの胸が苦しくなる。


優しい。


まっすぐ。


だから。


意識してしまう。


ミオは火を見ながら小さく言う。


「……レンって」


「なんかズルい」


レンが笑う。


「何それ」


ミオも少し笑った。


その時。


遠くの暗闇で。


紫色の目が二人を見ていたことを。


まだ誰も知らない。


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