第27音 消滅と壊れたロボット
崩壊する施設。
空は黒いノイズに覆われていた。
世界中から集まる負の音。
怒り。
悲しみ。
憎しみ。
その全てを。
《ノクターン》
が吸収していた。
紫のエネルギーが膨れ上がる。
その圧力だけで大地が崩壊。
ヒーローたちが到着し始める。
だが。
全員が止まった。
「……なんだよ」
ブレイズハウルが汗を流す。
「この化け物……」
クロノスも顔をしかめる。
「ゼロビートでも押し切れねぇのか」
セレスティアは空を見上げる。
そして。
小さく呟いた。
「……お願い」
施設中心。
ゼロビートが静かに立つ。
装甲はボロボロ。
エネルギー残量も限界。
だが。
その瞳だけは消えていない。
ミオが泣きながら叫ぶ。
「もうやめて!!」
「逃げようよ!!」
ゼロビートは振り返る。
優しい声。
「ミオ」
「君を守るために作られた」
「だから」
「最後まで守る」
ミオの涙が止まらない。
「嫌だ……」
ゼロビートは空を見る。
ノクターン。
世界を滅ぼす存在。
止められるのは。
自分しかいない。
その瞬間。
ゼロビートの全身が白く輝き始める。
警告音。
【LIMIT解除】
【全エネルギー解放】
【最終戦闘形態】
翼が砕けながら展開。
装甲が変形。
巨大な白銀のリング。
音が世界へ広がる。
《FINAL FINALE MODE》
ファイナル・フィナーレ・モード
ヒーローたちが息を呑む。
クロノスが震える。
「……まさか」
オラクルが青ざめる。
「やめて……!」
「そのモードは!!」
全エネルギー消費。
発動=死。
ゼロビート自身が消滅する最終形態。
ノクターンが目を細める。
「そこまでして守るか」
ゼロビートの返答。
「当然だ」
次の瞬間。
世界が白く染まった。
超高速。
もはや誰も見えない。
音だけが響く。
斬撃。
爆発。
ノイズ崩壊。
空間断裂。
二人が激突するたび。
街が消し飛ぶ。
ヒーローたちはただ見ているしかなかった。
次元が違う。
そして。
ゼロビートが最後の力で踏み込む。
「終わらせる」
白銀の巨大剣。
ノクターンへ直撃。
ザァァァァァン!!!!!!
ノクターンの身体が大きく裂ける。
致命傷。
破音五人衆が絶叫。
「ノクターン様ァ!!」
だが。
ゼロビートのエネルギーも尽き始める。
装甲崩壊。
翼消滅。
ノクターンが静かに言う。
「……見事」
ゼロビートがミオを見る。
最後の視線。
優しかった。
「生きて」
その瞬間。
ゼロビートがノクターンを掴む。
ノクターンが理解する。
「自爆か」
ゼロビートは静かに答える。
「お前だけは残せない」
ミオが絶叫する。
「やめてぇぇぇぇぇ!!!!」
ゼロビートのコアが臨界。
白銀の音が世界へ響く。
まるで。
最後の歌。
そして。
ドォォォォォォォォォォォン!!!!!!
白い光が空を飲み込んだ。
誰も目を開けられない。
衝撃。
轟音。
そして。
静寂。
爆発後。
街は半壊していた。
ノイズは消滅。
ノクターンと破音五人衆の反応も消失。
ヒーローたちが瓦礫の中を探す。
セレスティアが震える。
「……ゼロビート」
返事はない。
残っていたのは。
砕けた白銀装甲。
そして。
小さなコアだけ。
クロノスが目を伏せる。
「……世界を救いやがった」
オラクルが涙を流す。
第一次ノイズ大戦。
それは。
ゼロビートの犠牲によって終結した。
数日後。
ミオは廃墟となった研究所跡地へ来ていた。
雨。
静かな空間。
ミオはまだ立ち直れていない。
「……ゼロビート」
返事はない。
もういない。
その時。
ガコン。
瓦礫が動く。
ミオが振り向く。
そこにいた。
小さなロボット。
丸っこい。
ボロボロ。
片目が壊れている。
ふらふら飛んでいた。
「……ピ」
ミオが目を見開く。
ロボットが転ぶ。
ガシャ。
「いたた……」
間抜けな声。
ミオが呆然。
「……え」
小型ロボットはミオを見る。
そして。
少し壊れた声で言った。
「……ミオ?」
その瞬間。
ミオの涙が溢れる。
「……ゼロビート?」
小型ロボットは少し考える。
「違う」
「ビート」
それが。
今のビートだった。
夕焼け。
帰り道。
ビートはミオの肩に乗っていた。
「ボク、戦えない」
「壊れてるから」
ミオは静かに前を見る。
そして。
涙を拭いた。
「なら」
「今度は私が戦う」
ビートが目を丸くする。
ミオは拳を握る。
「ゼロビートが守った世界を」
「私が守る」
その瞳には。
強い光。
そして。
遠く離れた闇の中。
わずかに紫色の光が灯る。
《ノクターン生存反応》
物語は。
ここから始まっていくのだった




