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第21音 忘れられた研究所と汚れた白衣


夜。



雨が降っていた。


ミオは傘を握りしめる。


その隣をビートが静かに飛んでいた。


先のサイレントとの戦いから数日たった日のことだった


街外れ。


誰も近づかない区域。


そこにあった。


巨大な廃研究所。


錆びた看板。


かすかに残る文字。


《OTOHA SOUND LAB》


ミオが小さく呟く。


「……ここが」


自分の両親の研究所。


昔は来たことがあるはずなのに。


何も思い出せない。


ビートが珍しく緊張していた。


「……本当に行くの?」


ミオは頷く。


「知りたい」


「原初音って何なのか」


「私に何があるのか」


ビートは少し黙る。


そして。


「……分かった」


自動ロックされた扉。


ミオが端末へ触れる。


ピッ――


【認証:音羽ミオ】


重い扉が開く。


ギィィィ……


暗闇。


冷たい空気。


そして。


異様な静けさ。


懐中電灯を照らす。


研究所内部はボロボロだった。


壁には爪痕。


爆発跡。


焼け焦げ。


まるで戦場。


ミオが震える。


「ここで……戦ったの」


ビートが静かに言う。


「5年前」


「ノイザーが襲撃した」


床に転がる機械部品。


壊れたロボットアーム。


散乱したモニター。


そして。


大量の“ゼロビート用パーツ”。


ミオが足を止める。


「これ……」


ビートは少し悲しそうだった。


「ボクの身体」


白銀装甲の残骸。


さらに奥。


研究室。


そこに。


一枚の白衣。


ボロボロ。


黒ずんだ血痕。


ミオの呼吸が止まる。


「……っ」


胸が苦しい。


知らないはずなのに。


涙が出そうになる。


白衣の胸元には名前。

 

《音羽レイ》


ミオの父親。


ビートが静かに言う。


「……最後まで戦ってた」


ミオは震える手で白衣を掴む。


「お父さん……」


その瞬間。


頭痛。


激しいノイズ。


視界が揺れる。


警報。


研究員たちの悲鳴。


幼いミオ。


母親が抱きしめる。


『ミオ、絶対に生きて』


研究所が揺れる。


ノイズが侵入。


黒い怪物。


そして。


白いヒーロー。


ゼロビート。


『間に合った!!』


だが。


その奥から現れる。


黒い指揮者。


ノクターン。


『原初音を渡せ』


父親が叫ぶ。


『誰が渡すか!!』


ノクターンが手を上げる。


次の瞬間。


家が血に染まる。


「っぁ……!!」


ミオが膝をつく。


ビートが慌てる。


「ミオ!!」


ミオの目から涙が落ちる。


「思い出した……」


「少しだけ……」


呼吸が荒い。


怖い。


だけど。


止まれない。


研究所最奥。


巨大扉。


厳重ロック。


ミオが近づく。


すると。


自動起動。


【最終保管室】


【原初音計画データ】


ミオの瞳が揺れる。


「原初音……」


ビートが珍しく焦る。


「待って」


「まだ見るべきじゃ――」


だが。


扉が開く。


そこにあったのは。


巨大カプセル。


そして。


無数のコード。


中央モニターに表示された文字。


《PROJECT:ORIGIN SOUND》


さらに。


その下。


被験体001


音羽ミオ


ミオの思考が止まる。


「……え?」


ビートの光が不安定になる。


「……ミオ」


その瞬間。


研究所全体に警報。


【侵入者確認】


【NOISER反応】


ミオたちが振り向く。


暗闇の奥。


紫色の光。


ゆっくり現れる影。


白い仮面。


不気味な笑み。


《レゾナンス》


「ようやく辿り着いたね」


レゾナンスが両手を広げる。


「“原初音”の器」


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