第20音 原初音と後悔
会議室が静まり返る。
クロノスの言葉。
## 「“原初音”が宿ってる」
ミオの顔が強張る。
「……何、それ」
クロノスはミオを見つめたまま黙る。
セレスティアが鋭く言う。
「それ以上は話さないでください」
空気が張り詰める。
クロノスが小さく笑う。
「相変わらず隠すの好きだな」
「……黙って」
セレスティアの声が珍しく感情的だった。
ミオはさらに困惑する。
「え、ちょっと待って」
「みんな何か知ってるの?」
誰もすぐ答えない。
ビートも静かだった。
その沈黙が逆に怖い。
オラクルが空気を切り替える。
「現在最優先事項はノクターンの動向把握です」
モニターに世界地図。
各地にノイズ反応。
「破音五人衆も活発化しています」
ブレイズハウルが舌打ち。
「全面戦争じゃねぇか」
ギガントが低く言う。
「4年前以上になる」
ミオはその言葉に息を呑む。
4年前。
それはゼロビートが消えた戦争。
つまり。
本当の地獄。
会議後。
廊下。
ミオが歩いていると。
後ろから声。
「よう」
クロノスだった。
ミオが少し警戒する。
「……何」
クロノスは壁に寄りかかる。
「そんな警戒すんな」
「ノイズ契約者なんて普通警戒するでしょ」
「まぁな」
クロノスは苦笑する。
だが。
次の瞬間。
真面目な顔になった。
「お前、最近夢見てるだろ」
ミオが止まる。
「……っ」
図星だった。
クロノスは続ける。
「施設」
「赤い警報」
「ノクターン」
「白いヒーロー」
ミオの顔が青ざめる。
「なんで知ってるの……!?」
クロノスは静かに答える。
「俺もあの戦争にいたからだ」
窓の外を見るクロノス。
「4年前」
「ノクターンはある研究施設を襲撃した」
「目的は“原初音”の回収」
ミオの鼓動が速くなる。
「その時ゼロビートが現れて」
「お前を逃がした」
ミオが震える。
夢と同じだった。
つまり。
夢じゃない。
記憶。
ビートが小さく震える。
「……クロノス」
クロノスはビートを見る。
「久しぶりだな、ゼロビート」
ミオが振り向く。
「やっぱり知ってるんだ」
ビートは少し黙る。
そして。
「……うん」
「4年前、一緒に戦った」
クロノスは笑う。
「当時のアイツはバケモンだったぞ」
「単騎で軍勢ぶっ飛ばすし」
「ノクターンと殴り合うし」
ビートが小さくため息。
「昔の話」
ミオが聞く。
「なんでノイズと契約したの」
クロノスは少し黙った。
そして。
「勝つためだ」
短い答え。
「4年前、俺は弱かった」
「仲間を守れなかった」
「だから力を求めた」
彼の瞳に一瞬だけ後悔が見える。
「その結果、ヒーローを追放された」
ミオは少し複雑な顔になる。
クロノスは笑う。
「まぁ自業自得だ」
その瞬間。
協会全体に警報。
【緊急警報】
【超高濃度ノイズ反応】
全員が振り向く。
モニター点灯。
映し出されたのは。
巨大な黒い塔。
街の中心部へ出現。
ミオが息を呑む。
「ノイズタワー……!」
さらに。
その前に立つ人物。
白い髪。
黒いドレス。
無表情。
《サイレンス》
サイレンスが静かに言う。
「……回収する」
セレスティアが即座に立ち上がる。
「総員出動」
ブレイズハウルが笑う。
「待ってましたァ!!」
ギガントも武装展開。
クロノスは小さく呟く。
「もう始まったか」
ミオが拳を握る。
正式ヒーローとして。
初めての本格戦争。
そして。
サイレンスの視線は。
真っ直ぐミオへ向いていた。
「原初音」
「こちらへ」
その瞬間。
ミオの胸の奥で。
何かが脈打った。




