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プロの壁と私の音


翌日――


「昨日のノイザー事件、見た?」


教室がざわつく。


「プロヒーロー来てたらしいよ」

「でもその前に誰か戦ってたって…」


ミオは窓の外を見ながら、イヤホンをつける。


(……バレてはない、よね)


その時。


「ミオ、来てるよ」


机の中から、ひそひそ声。


ビートが顔を出す。


「ノイズ反応。昨日より大きいかも」


ミオは静かに立ち上がる。


「……行く」


都市の中心部。

巨大なショッピングモールの前。


空気が歪み、人々が避難している。


その中心にいたのは――


これまでとは明らかに違うノイザー。


身体は複数のスピーカーや機械が絡み合ったような形。

低く、重いノイズを放ち続けている。


「……デカいね」


「うん……そして、ちょっと嫌な感じ」


ミオが動こうとした瞬間――


轟音。


上空から何かが高速で降下する。


「ここから先は任務区域だ。一般人は下がれ」


低く響く声。


そこに立っていたのは、重厚な装甲スーツの男。


腕には巨大な砲身のような装置。


「……プロヒーロー」


ビートが小さく呟く。


「識別:27位ヒーロー――**鋼鉄の砲撃手(ガンナー)・バルクライン**」


ミオは思わず見つめる。


(これが……プロ)


バルクラインは無駄のない動きで前に出る。


「ターゲット確認。殲滅を開始する」


ノイザーが襲いかかる。


だが――


「遅い」


ドンッ!!


腕の砲撃が炸裂。


純粋な破壊力。

音ではない、圧倒的な“物理”。


ノイザーの一部が吹き飛ぶ。


さらに連続射撃。


無駄のない動き、正確な判断。


「……すご」


ミオは思わず呟く。


「戦い方、全然違うね」


「うん……音とか関係ない」


だが――


ノイザーは消えない。


むしろ、形を変えて再構築していく。


「……再生してる?」


ビートが分析する。


「この個体、外部エネルギーじゃなくて……周囲の“ノイズ”で強化されてる」


つまり――


ただ壊すだけでは倒せない。


「……やるしかない」


ミオは一歩踏み出す。


「待て」


バルクラインの声。


「お前、一般人だな。ここは危険だ」


ミオはフードの奥で笑う。


「……それ、昨日も言われた気がする」


「何?」


次の瞬間。


ミオはスーツを起動する。


「――仮ヒーロー、参戦ってね」


音が弾け、姿が変わる。


バルクラインがわずかに目を細める。


「非公認か……」


「文句ある?」


「足手まといになるな」


少しムッとするミオ。


「なら、見ててよ」


「今回は――こっち!」


**EDM**


スーツが青く発光。


ビートがテンポを刻む


「スピーカーランチャー!」


高速で放たれるビート弾。


ノイザーの動きが鈍る。


「今!」


だが、バルクラインは合わせない。


独自のタイミングで砲撃。


攻撃がズレる。


「ちょっと!合わせてよ!」


「連携の許可は出していない」


「はぁ!?」


完全に噛み合わない。


その時、ミオは理解する。


(この人、強いけど……)


(“整える”戦い方じゃない)


(壊すだけじゃ、このノイズは……)


「ビート!」


「うん、わかってる!」


ミオは深呼吸する。


「フィールド整える!」


スピーカーを展開。


リズムを広げる。


バラバラだった“音”を統一していく。


街のノイズが、少しずつ整う。


「なにをしている」


「倒す準備!」


ノイザーの再生が止まる。


「今なら通る!」


バルクラインがわずかに動きを止める。


そして――理解する。


「……なるほど」


構え直す。


「一発で終わらせる」


ミオが叫ぶ。


「いけるよ!!」


ドンッ!!!!!!


最大出力の砲撃。


整えられた空間を貫き、ノイザーの核を粉砕する。


静まり返る現場。


バルクラインがミオを見る。


「……非公認にしては悪くない」


「上からだなぁ」


「事実だ」


少し間。


「だが――」


「?」


「お前の能力は特殊だ。勝手に使えば、いずれ問題になる」


ミオは肩をすくめる。


「でも、誰かがやらないとでしょ」


バルクラインは何も言わない。


ただ一言。


「……名前は」


ミオは少し考えて、笑う。


「まだ秘密」


そう言って走り去る。


その背中を見ながら、バルクラインが呟く。


「音で戦うヒーロー、か……」


ビートの残した微かなリズムが、まだ空気に残っていた。



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