↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/37

第1音 ノイズの街に響け最初のビート

夕暮れの街。

人通りの多いスクランブル交差点に、ざらついた音が混じり始めていた。


最初は誰も気にしない。

イヤホンの音が途切れたような、小さな違和感。


――だが次の瞬間。


「……っ、なにこの音……!」


スピーカーから流れていたBGMが歪み、

空気そのものが震え出す。


黒い靄のようなものが集まり、形を持つ。


それは、人の顔のようにも、スピーカーの塊のようにも見える異形――


**ノイズ。**


人々のざわめきが恐怖へと変わり、逃げ惑う。


その少し離れた場所。


イヤホンを外した少女が、静かにその様子を見ていた。


「……やっぱり、出た」


音羽ミオ。


普通の学生。

――そして、非公認の仮ヒーロー。


彼女の肩の横で、小型ロボットがふらふらと浮かぶ。


「ノイズレベル上昇……たぶん、強め……たぶんね……」


「“たぶん”って何よ、ビート」


「ボク、ちょっと壊れてるから……」


ミオは小さくため息をつきながらも、笑う。


「でも、頼りにしてるよ」


そう言って、カバンの中から小型デバイスを取り出す。


「――スーツ、起動」


音が弾けるように、光がミオを包む。


身体にフィットするヒーロースーツが展開され、

背中にはスピーカーユニット、腕には音響デバイスが装着される。


胸元のコアが、リズムのように脈打つ。


「ジャンル選択……」


ミオが軽く指を動かすと、UIが浮かび上がる。


**ROCK / EDM / CLASSIC / POP**


「最初は――これでしょ」


彼女は迷わずタップする。


**ROCK**


瞬間、スーツの各部が赤く発光する。


ミオは屋上から飛び降りる。


着地と同時に、背中のスピーカーが低く唸る。


「ギターアックス、展開!」


光が収束し、ギター型の巨大斧が手に現れる。


ノイザーが不快なノイズを放ちながら襲いかかる。


「ギィィィィ――!!」


「うるさいっての!」


ミオは弦を強く弾く。


――ドンッ!!


重い音が衝撃波となり、ノイザーの一部を吹き飛ばす。


だがすぐに再生する。


「再生速度、高いよミオ!」


「わかってる!」


ノイザーが音を歪ませ、周囲の看板や機器を暴走させる。


街全体が“騒音の塊”になる。


「くっ……!」


音が乱れる。

リズムが崩れる。


ミオの動きが鈍る。


「音が……ぐちゃぐちゃで、リズム取れない……」


その時。


ビートがノイズ混じりの声で言う。


「……ミオ、外の音じゃなくて……自分の音、聞いて」


「え……?」


「ミオの中にある音……それ、まだ消えてない」


ミオは目を閉じる。


周囲の騒音ではなく、

自分の心臓の鼓動に意識を向ける。


ドクン、ドクン――


「……これが、私のビート」


目を開く。


「リズム、取り戻した!」


「ボイスブレードマイク、起動!」


マイクを握り、声を乗せる。


「――いくよ!!」


彼女が歌い出す。


荒く、力強く、ロックな旋律。


声が刃となり、ノイザーを切り裂く。


「ギィィィ!?」


さらにギターアックスで追撃。


音と音が重なり、爆発的な一撃になる。


「これが――私の音!!」


ノイザーの核が露出する。


「ビート!」


「位置、そこ!」


「ありがとう!」


ミオは最後に弦を思い切りかき鳴らす。


――ズガァン!!


巨大な音の波が、ノイザーを貫く。


黒い靄は弾け、消滅した。


静けさが戻る街。


遠くでサイレンが鳴り、プロヒーローたちが到着し始める。


ミオはフードを被り、そっとその場を離れる。


「……今日もバレなかったね」


「うん……ギリギリ」


ビートがくるくる回る。


「でもさ、ミオ」


「なに?」


「ミオの音、すごく良かったよ」


少し照れながら、ミオは笑う。


「……でしょ?」


その様子を、ビルの上から見ている影があった。


「非公認であの出力か……面白い」


その胸には、正式なヒーローのエンブレム。


「音羽ミオ……だったか」


――物語は、まだ始まったばかり。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。