第18音 悪夢と戦線布告
夜。
静かな雨が降っていた。
ミオは眠っていた。
だが。
その表情は苦しそうだった。
暗い施設。
冷たい床。
幼いミオが泣いている。
「やだ……」
周囲には無数の機械。
赤い警告灯。
そして。
聞こえる。
不気味な“音”。
ノイズ。
誰かの声。
『適合率上昇』
『原初音反応確認』
『被験体コード――』
ミオが震える。
「お母さん……」
その時。
施設が爆発する。
白い光。
誰かが駆け込んでくる。
白銀のヒーロー。
《ゼロビート》
幼いミオへ手を伸ばす。
『ミオ!!』
だが。
その直後。
空間が黒く染まる。
巨大な影。
無数のスピーカー。
歪んだ音。
そこに立っていた。
《ノクターン》
『その子は世界を変える』
低い声。
世界が揺れる。
幼いミオが泣き叫ぶ。
「いやぁぁぁぁ!!」
ノクターンがゆっくり手を伸ばす。
『いずれ目覚める』
『“原初音”が』
その瞬間。
夢が崩壊する。
「っはぁ!!」
ミオが飛び起きる。
全身汗だく。
呼吸が荒い。
「……夢」
窓の外はまだ夜だった。
ビートが心配そうに飛んでくる。
「大丈夫?」
ミオは頭を押さえる。
夢の内容が。
消えない。
「……なんなの」
知らないはずなのに。
妙に“現実感”があった。
ビートは少し黙る。
そして。
「……ごめん」
それしか言えなかった。
ヒーローランキング第4位
《アークヴェイル》
スピード型ヒーロー。
高層ビル上空を巡回中。
「最近ノイズ多すぎだろ……」
軽くぼやく。
その時。
空気が止まる。
「……?」
音が消えた。
次の瞬間。
黒いノイズゲート。
そこから現れる。
長いコート。
黒い指揮棒。
紫の瞳。
《ノクターン》
アークヴェイルの顔が凍る。
「……は?」
一瞬で理解した。
ヤバい。
本能が叫ぶ。
逃げろ。
だが。
身体が動かない。
ノクターンは静かに言う。
「弱くなったな」
次の瞬間。
ノクターンが指揮棒を振るう。
空間に黒い音波。
アークヴェイルが即座にスピードで駆け回る
音速から生まれる風圧
都市を吹き飛ばすレベル。
しかし。
ノクターンは片手で止めた。
「え……?」
空間そのものが“ノイズ化”される。
紫色へ変質。
アークヴェイルが青ざめる。
「嘘だろ……!」
ノクターンが一歩踏み出す。
それだけで。
ビルが崩壊する。
圧倒的。
格が違う。
アークヴェイルが叫ぶ。
「ヒーロー協会へ――」
最後まで言えなかった。
黒い音が身体を貫く。
ドォン。
静かだった。
あまりにも。
アークヴェイルは崩れ落ちる。
同時刻。
ランキング第22位。
## 《アイアンメテオ》
重武装ヒーロー。
緊急通信を受け現場へ到着する。
だが。
そこには。
瓦礫。
破壊された街。
そして。
アークヴェイルの残骸。
「……おい」
アイアンメテオが固まる。
その奥。
ノクターンが静かに立っていた。
「また会ったな」
アイアンメテオが震える。
「4年前の……」
ノクターンが指揮棒を構える。
「まだ抗うか」
アイアンメテオは全武装展開。
ミサイル。
レールガン。
エネルギー砲。
全弾発射。
夜空が爆発する。
だが。
ノクターンは避けない。
全てを受ける。
煙が晴れる。
無傷。
アイアンメテオの顔から血の気が引く。
「化け物……」
ノクターンの周囲に巨大なノイズリング。
空間そのものが歪む。
「世界は静寂へ還る」
指揮棒を振るう。
その瞬間。
超重装甲ごと。
アイアンメテオの身体が両断された。
街が沈黙する。
ニュースは緊急速報だらけだった。
【トップヒーロー二名、戦闘不能】
【現場には未知の高濃度ノイズ反応】
街全体が騒然としていた。
ミオは学校へ向かう途中。
偶然。
現場付近へ来てしまう。
規制線。
壊滅した道路。
そして。
運ばれていく二人のヒーロー。
ミオの足が止まる。
「……え」
周囲の人々が震えていた。
「誰がこんな……」
「4年前の再来だ……」
ミオは崩壊したビルを見る。
そこに残っていた。
巨大な黒い音の跡。
その瞬間。
昨夜の悪夢が頭をよぎる。
ノクターンの声。
『原初音』
ミオが震える。
ビートも静かだった。
そして。
崩壊した壁に残されていた。
紫色の紋章。
NOISER。
ノクターンからの“宣戦布告”だった。




