第16音 星の剣と完全無音
無音。
完全なる静寂。
サイレンスの能力によって、戦場から“音”が消えていた。
ミオのスーツは停止。
ソラとルナも動きづらそうにしている。
「まずい……!」
ミオが立ち上がろうとした、その時。
空から星の光が降る。
静かに。
だが圧倒的に。
白銀のマントが揺れる。
その手には――
一振りの光の剣。
《スターライト・ブレード》
星光を凝縮して形成される超高密度エネルギー剣。
刀身は透き通る青白い光。
まるで宇宙そのものを切り取ったようだった。
ミオが息を呑む。
「……綺麗」
サイレンスが静かに言う。
「……またあなた」
セレスティアは剣を構える。
「ここで止めます」
次の瞬間。
サイレンスが消える。
完全無音の高速移動。
だが。
セレスティアは反応した。
キィィン!!
星光剣が火花を散らす。
「見えてる!?」
ミオが驚く。
サイレンスの不可視攻撃を、完全に防いでいた。
アークヴェイルが苦笑する。
「そりゃ一位だ」
サイレンスが連続攻撃。
無音斬撃。
空間そのものが切り裂かれる。
しかし。
セレスティアは全て捌く。
斬る。
避ける。
流す。
動きが美しすぎる。
戦闘というより舞だった。
ギガントが腕を組む。
「相変わらず化け物だ」
サイレンスが初めて感情を見せる。
「……邪魔」
世界がさらに静かになる。
完全消音領域。
ミオたちの鼓動すら聞こえない。
セレスティアの周囲の星光が弱まる。
「能力を封じてる……!」
リズが驚愕する。
だが。
セレスティアは静かだった。
「音を消しても」
剣を握る。
「光は消えません」
瞬間。
スターライト・ブレードが眩く輝く。
戦場全体が白く染まる。
「星光解放」
空に巨大な光の紋章。
セレスティアが剣を振るう。
その一撃は。
まるで流星。
ドォォォォォン!!!
無音世界そのものが切り裂かれる。
サイレンスが初めて吹き飛ぶ。
「っ……!」
ノイズ装甲が砕ける。
会場中が震える。
ミオたちが呆然と見上げる。
「すご……」
ソラが完全に目を輝かせる。
ルナも珍しく興奮。
「かっこいい」
セレスティアの戦いを見ながら。
ミオは気づく。
(この人……)
ただ強いだけじゃない。
一人一人を守るために戦っている。
だから。
あんなに綺麗なんだ。
ビートが小さく言う。
「見えてきた?」
「え?」
「ヒーローの意味」
ミオは静かにセレスティアを見る。
そして小さく頷いた。
サイレンスは切られた腕を押さえる。
「……想定以上」
セレスティアが剣を向ける。
「終わりです」
だが。
サイレンスは笑った。
「まだ始まったばかり」
その瞬間。
ノイズゲートが開く。
撤退。
大量のノイズも消えていく。
戦場に静寂だけが残った。
数時間後。
試験施設。
受験者たちは疲れ切っていた。
だが。
試験官は真剣な顔で言う。
「今回の戦闘行動を正式試験結果へ反映する」
巨大モニターに映る順位。
ミオたちも息を呑む。
特別評価対象
音羽ミオ
・学力 B+
・戦闘能力 A
・救助能力 S
・適応能力 S
・協調性 A+
会場がざわつく。
「高っ!?」
「仮ヒーローだろ!?」
セレスティアが静かに言う。
「あなたはもう十分戦えている」
「ですが」
ミオを見る。
「力だけではヒーローにはなれない」
「……はい」
ミオは真剣に頷く。
夜。
帰り道。
ミオは空を見る。
「正式ヒーロー、かぁ……」
ビートが肩に乗る。
「近づいてる」
その時。
遠くのビル屋上。
誰かがミオを見ていた。
白い仮面。
紫のノイズ。
レゾナンス。
「やはり危険だ」
そして静かに呟く。
「“原初音”が目覚める前に――」
「消さなければ」
黒いノイズが夜へ溶けていった。




