番外編 ifの物語 ミレイユが転生したらどうなっていたのか? 前編
番外編4話を4日連続で投稿していきます。
まずはifの物語からです
「どうして私がこんな目に。。」
いくら泣いてもわめいても誰も助ける者はいなかった。
ギロチン台の上に両手を後ろに縛られた状態で乗せられたミレイユ。
恐怖で涙が止まらない。
「い。。いやだ! 嫌嫌嫌嫌嫌!」
ミレイユの懇願の言葉も虚しく響き渡り、ギロチンの刃は落とされた。
"ザン!"
「いやあああああ」
ミレイユは大声を上げて目を覚ます。
額からは汗が流れ落ち、心臓は強く脈うっていた。
「夢? 夢だったの?」
自分がギロチン台で首を切られるシーンで目が覚めたのだ。
夢にしては生々しいまでの映像。
首を切られた時の記憶がよみがえり、思わず頭を抱える。
叫び声を聞いてメイドが部屋にかけつけた。
「ミレイユ様、どうなされました?」
メイドの顔を見て少し落ち着いたのか、ミレイユらため息を一つついた。
「何でもない。少し嫌な夢を見てうなされただけよ。戻っていいわ」
ミレイユにそう言われて、何事もなかったと確認出来るとメイドはおじぎをして部屋へ戻って行く。
「私は首を切られて死ぬって言うの? そんなのありえない。。」
恐怖で体の震えが止まらない。
どういう事なのかを必死で考える。
「あれは、私にこれから起きる事なの?」
自分で自分に問いかける。
未来の予知夢なのか。
一度死んでやり直しの人生なのか。
ミレイユはどちらにしても自分の未来を見た事になる。
「あれが私の運命なら、避けなければ。。14歳で私の人生が終わるなんて嫌よ」
将来の王妃としての輝かしい未来ではなく、エルドラストがジダルクに攻め滅ぼされて自分が処刑される未来。
こんなのあり得ない。
こんな事は絶対に阻止しなければ。
「その原因となるのがクラリスとジュリアン。気に入らないといってあいつを処分すれば私はジュリアンに殺される。。」
これは神が私に与えてくれたやり直しの人生。
そう考えたミレイユは自分の処刑を阻止する行動に入る事となる。
最初の関門となる社交舞踏会の日。
この時、クラリスが10歳、ミレイユは8歳であった。
ミレイユはダンスが下手でペアを組む相手が見つからず1人で座っていた。
それを見たクラリスが心配して声をかけて来た。
「どうしたの? 元気ないみたいだけど」
前世でのミレイユはここでクラリスに八つ当たりし、王位継承権を振りかざしたのをジュリアンに見られていた。
これが命取りとなる始まりだったのだ。
思わず手を払いたくなるのをミレイユはグッと堪えた。
ギロチンで首が飛ぶ恐怖に比べたらこのくらいの我慢など。。この気持ちを前世で持っていたらと思っても仕方のない事であるが。
「何でもない。ダンスが上手く踊れなくて悩んでいただけよ」
それを聞いたクラリスはミレイユの手を取る。
「なら私が教えてあげるよ。一緒に踊ろう」
「え? ちょっと。。」
クラリスに手を引っ張られてミレイユは言われるがままにダンスを踊る。
女の子同士のダンスが珍しくて会場の人たちから笑みがこぼれている。
ミレイユは恥ずかしいながらも、クラリスの手ほどきで少しずつダンスが上手くなっていく。
それを見ていた何人かの王子たちからお誘いの声がかかり出した。
ミレイユはようやくペアとなる相手を見つける事が出来て社交界で恥をかかずにすんだのだ。
まずは最初の関門を突破した。
ダンスを踊るミレイユを見て微笑むクラリス。
ミレイユはため息をつきながら思う。
〔あいつ、自分より私が上手くいった事を喜んでいるのね。。まあいい、この場は乗り切った。次は政略結婚の時までどうするかだわ〕
政略結婚は受けようと受けまいとエルドラストはジダルク王国に攻め滅ぼされる。
ジュリアンの目当てはクラリスだからだ。
それを防ぐためににはどうしたらいいのか。
「大丈夫、まだ6年ある」
ジュリアンはダンス会場で見たクラリスが忘れられなかった。
ダンスに誘いたかったが、妹に手ほどきしているのを邪魔してはいけないと、思いとどまった。
今の自分では彼女に相応しくない。
もっと成長して彼女に相応しい人間になって迎えに行く。
それからジュリアンはエルドラストの内情を調査した。
王位継承権があるのは妹のミレイユの方。
姉であるクラリスには王位継承権がないどころか、名前ばかりの王女という立ち位置である事もわかった。
「ならばクラリスを指名しよう。妹の方に来られては話がややこしくなる。文句を言って来たらその時はその時だ」
ジュリアンは軍事力を盾にエルドラストに政略結婚を持ちかける事を思いついたのだ。
彼はクラリスを指名してジャクリーヌ王妃がクレームをつけてきたら軍事力で黙らせる考えもあった。
だが、なるべく手荒な事は避けたい。
そこで姉であるヴィクトワールに男と偽って自分は王位継承二位という事にしてくれと頼んだのだ。
「これならジャクリーヌも文句は言うまい。あの女は権力しか目のない人間だからな」
「ジダルク王国から婚約交渉が来た。先方はジュリアン王子の相手にクラリスを指名したきたのだが。。」
歯切れの悪い国王の話にジャクリーヌが癇癪を起こす。
「クラリスですって? どうしてミレイユに話が来ないの? 王位継承権があるのはミレイユの方ですよ」
「先方がそう言っているのだ。それにジュリアン王子は王位継承二位だ。それならクラリスでも問題あるまい」
「一度ミレイユが指名された上でこちらが断るのなら面目も立ちましょうが、最初からミレイユ無視でクラリスと言うのが気に入りません。国王として文句を言って下さい」
ジャクリーヌの剣幕に国王はたじたじである。
そこにミレイユが割って入った。
「待って、お母様。ここはクラリスで構わないわ。ジュリアン王子はクラリスがお目当てのようですし、下手に文句をつければ軍事力で抑えに来る可能性があるわ」
軍事力でと言われるとジャクリーヌも感情を抑えざるを得ない。
「あなたはそれでいいの?」
「相手が求めていないのだから怒っても仕方ないでしょう。国が攻められるのを考えたら私が我慢すれば良いだけでしょ」
精一杯の作り笑いを浮かべて母を説得する。
「あなたがそれでいいなら、仕方ないわね」
ミレイユの言葉にジャクリーヌも怒りの矛を収める事となる。
「ぐぎぎ。。私を無視してクラリス指名とは。。」
ミレイユは歯茎から血が出るかと思うほど屈辱で歯をギシギシ噛み締めた。
政略結婚で王位継承権のある正統王女を無視して継承権のないクラリスを指名するとは。
屈辱で今すぐクラリスを張っ倒しに行きたい衝動にかられたが、心の中で涙を流してかろうじて怒りを抑えた。
「癪にさわるけど、ジュリアンがクラリスを好きなのはわかっていた事。私の首と国家滅亡がかかってるんじゃ。。」
前世で見たジュリアンの冷徹さ。
彼はクラリスを苦しめた者に対して情け容赦がない。
自分の首がギロチンで飛ぶ恐怖に比べたら。。
もうそれしか頭の中になかった。
☆☆☆
※中世ヨーロッパではお酒は何歳からという法は調べた限りありませんでした。
お酒でも飲まなきゃ落ち着かない。
ミレイユはメイドを呼びつけた。
「誰か、ワインを持って来て」
「はい、ただいま」
しばらくして慌ただしくメイドがワインとグラスを持って来た。
エルドラスト製の高級白ワインであった。
しかし、緊張からか足元がおぼつかないメイドはミレイユの目の前で足を床に引っ掛けて壮大にワインボトルを落として割ってしまう。
「何をしているの!」
「申し訳ございません」
この役立たずメイド!
ミレイユはその場を解雇を言い渡そうとして顔を見た時に動きが止まった。
〔こいつは。。〕
そのメイドは前世でクラリス暗殺のために使い捨ての駒にしたセリーヌであった。
ミレイユは一度振り上げた手を止めて下ろした。
〔落ち着け。。こいつを上手く利用する方法が何かあるはずだ。いざというとき私の盾になるような。。〕
ミレイユは何事もなかったかのように別のメイドを呼ぶ。
「みんなで手分けして片付けなさい。それと代わりのワインを持って来てちょうだい」
あの王女様が怒らないとは。
メイドたちは戦々恐々としながらも割れた瓶を片付けて床を掃除した。
ひと通り片付け終わり、テーブルに新しいワインとグラスが置かれると、セリーヌ以外のメイドたちは退出した。
「本当に申し訳ございませんでした」
何度も頭を下げて謝るセリーヌにミレイユはため息をつく。
みっともなくいつまでも頭を下げているんじゃないわよ。
そう言いたいのを堪えて新しく用意されたワインをひと口飲んで心にもない言葉をかける。
「もう謝罪はいいから次から気をつけなさい」
セリーヌは自分が解雇されると思っていたのだ。
病気の妹の治療費を稼ぐためにやっと受かった王室メイドの仕事がわずか数日で自分のミスで失う事になるとは。
目に涙を浮かべているセリーヌを見てミレイユは状況を察した。
ああ、こいつには病気の妹がいたんだっけな。。
ここで解雇にするのは容易いが、私にとってどうするのが一番いいのか。
クラリスだけでなく、こいつにも恩を売っておく。
処刑回避の種を蒔くのは多ければ多いほどいい。
前世で処刑が決まった時、クラリスは助けてくれなかった。
今回も助けてくれるという期待は低い。
奴はジュリアンに従順だからな。
その可能性を少しでもあげるには色んな人間に恩を売っておくしかない。
これもそのうちの一つだ。
そしてミレイユは決断を下す。
「セリーヌ、あなたを明日から私の専属メイドにします」
ミレイユの専属メイドは15人のグループで、髪を結う者やドレスを準備する者などに役割担当がある。
ここに選ばれた者は他のメイドよりワンランク上になり給金も倍以上になる。
「私が。。ミレイユ王女の専属メイド?」
セリーヌは突然の事にまだ頭が状況についていけず呆然としていた。
〔だからそう言ってるでしょ。頭の悪い女ね!〕
心の中ではそう思っても口に出さない。
この女はギロチンを食い止める私の大事な盾。
ここで良くしておけば私のために動くでしょう。
ミレイユはセリーヌに純金のブローチを手渡した。
これは王女の専属メイドを証明するもので、王女が認めた者しか持つ事を許されない特別な物だ。
受け取ったセリーヌの手が震えていた。
「あなた病気の妹がいるんでしょ。それをここで解雇にするほど私はバカじゃないわ。明日からまた頑張りなさい」
自分の言葉に反吐が出る気分であった。
ワインで口をゆすぎたくなるほど本音とかけ離れた言葉をかけたミレイユ。
「あ、ありがとうございます」
セリーヌは嬉しさで涙を流し、お礼を言って部屋を出ていく。
「うぎゃー!」
ミレイユはストレス発散のために大声を上げた後、ワインで三度ほど口をゆすいだ




