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2 おじいさまとお話しします

食堂に行くと、おじいさまがお見えになっていた。


「はは、おどろいただろう。サプライズだ」

私はおじいさまに飛びついてハグした。


おじいさまはオルロー領におられたのだが、11月2日に私が学園や王妃教育をお休みしたいと言い出したので、キアラがタウンハウスに連絡し、そこからオルロー領に2日かけて伝令が届き、さらにおじいさまが大急ぎでこちらに来てくださったそうだ。


使用人たちが忙しそうにしていたのは、私に内緒でおじいさまをお迎えする用意をしていたからだったのね。



「少し見ないうちに、私のライラは、また大きくなったね」


おじいさまは、私を抱きしめた手を放しながら、そうおっしゃった。

王都に来て私に会うたびにいつもこうおっしゃるのだ。だから、これは私たちの間のちょっとした冗談のようなものだ。



おじいさまに前にお会いしたのは、ほんの2か月ほど前、9月の始めだった。


その時、私は、おじいさまに、イヴァン殿下が人の話を聞かない、女性関係が乱れているという理由で婚約解消をお願いした。

おじいさまは、私に謝ってくださったうえで、現在の政治状況からすれば、婚約解消はできないとはっきりおっしゃった。



オルロー家は、アルテリアの初代王の弟が、ディアスとの国境に接した領地を下賜されて興した。

この弟は戦場での功績があり、また王の信頼が厚かったことから、初代王の直系であるアルテリア王家が何らかの理由で滅んだ時には、オルロー家がアルテリア王国を存続させるよう、初代王の遺言が残されている。


このため、オルロー家は他の公爵家と異なり王位承継権を持っている。

つまり、オルロー家は、王家のスペアのような地位にある。



そしてお父様の子供は私一人であり、アルテリア王国では女性の王位承継権は認められていない。

つまり、オルロー家の王位継承権を存続させるためには、お父様の次の代の後継者として王家の血を引く者を用意しなくてはならないのだ。


だが、それだけなら王族や、なんならいったん臣籍降下した者を王族に戻すなどして、オルロー家の養子にする方法もなくはなかった。


しかし、ここで私の血が問題となる。


私のおばあさまは、ディアス皇家の第三皇女でいらっしゃる。

そして、ディアス皇家では、女性も皇統継承権があるうえ、傍系(つまり、家を継がなかった人とその子孫)も三代まで皇位承継権がある。

私は、ディアス皇家の皇位承継権者であり、私をないがしろにしてオルロー家の後継者を決めることはできない。

つまり、アルテリア王国の王位継承権を持っていて、かつそれなりの格を有する家の者を私と結婚させてオルロー家の後継者にするしか、アルテリア王国とディアス帝国の双方の顔を立てる方法がなかったのだ。


私と釣り合う年齢の王族男性は、第一王子ピョートル殿下と第三王子イヴァン殿下しかおらず、アルテリア王になるピョートル殿下は婿入りなさることができない。

このため、私はイヴァン殿下と結婚するしかない、というのが、前回お願いした時におじいさまからご説明いただいた結論だった。


オルロー家の特殊な地位や自分に流れる血の重みは重々理解しているから、私はその説明を受けて引き下がらざるを得なかった。



あの時のおじいさまは、たいへんお辛そうだった。


かわいがっている孫に不幸な結婚を勧めるのは辛いだろう。

しかも、当時は気がついていなかったが、【公爵令嬢のお願い】スキルは前回話した時も発動していたはずだから、おじいさまにとっては、ますます断りにくかっただろう。


だが、おじいさまは、きっぱりと私の婚約解消のお願いを断られた。

それだけ重い政治判断が背景にあったということだ。



しかし、私が前世を思い出したことにより、このままではオルロー家は没落し、アルテリア王国とディアス帝国との戦争が勃発し、オルロー領が戦場になってしまうことがわかった。

結果として、悲惨な目にあうのは、オルロー領の領民たちだ。

それは絶対に避けたい。


難しい交渉であることはわかっている。

でも、私としては、どうやればおじいさまを説得できるかをひたすらにシミュレーションしながらお昼をいただいた。



食後は、客間に移動し、お茶の用意が整えられた。


おじいさまは、人払いをすると率直にお尋ねになった。


「ライラ、体調が悪いと聞いたが、大丈夫かい」


「ええ、おじいさま。普通にしている分には平気でございます。


ただ、その、私、殿下がどこかの男爵令嬢とイチャイチャしているのを見たら、あの時は、もう嫌になってしまったというか、あまりに私を馬鹿にした態度だと思ってしまいましたの。」


おじいさまには、あまり嘘はつきたくないし、今までの経験から、噓をついても見破られてしまうことはわかっていた。

ただ、できるだけ本当のことを言えば、おじいさまなら信じてくださる確率が高いということでもある。


だから、体調については、できるだけ本当のことを伝えた。

もっとも、私が感情的になっていると思われるのは困る。


「もう、あの時の怒りの感情は落ち着いたと思います。


ただ、ある事情から、学園と交渉し、もう出席しなくても卒業できるよう、手配しようと思います。

あと、王子妃教育は、昨日、ゴルトヴァ夫人から合格をいただきましたので、修了しております」


「ああ、私のかわいいライラ、あいかわらず優秀だね。


ただ、怒りがおさまったのなら、もうイヴァン殿下に会いたくないというわけではないよね。


よければ、学園に出席しなくてもよいように手配した理由について話してくれないか?」


「そうですね、、、。


たくさんの込み入った事情があり、おじいさまに、どこからお話すればいいのかわからず、困っております。

信じていただけるような話かどうかもわかりませんし。


一つめの事情としては、私はスキルをすでに授かっていたのでございます」

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