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3 おじいさまとお話しました

「私はスキルをすでに授かっていたのでございます」


ややこしいことを説明するためには、わかりやすい項目から相手に説明して、前提知識を同じにしていく、これも「職場の人間関係に疲れたとき読む本」に書いてあったと思う。

あれ、「周囲の人を味方にする仕事術」だったっけ。

・・・前世の私、どれだけ職場でのコミュニケーションに悩んでいたのかしら。



「自分のスキルに気が付いたのか。

どういったスキルであるかも、わかっているのかな?」


「おじいさま、やはり御存じだったのですね。

スキルの名前と内容もわかっております」



貴族であれば、スキルを授かる者のほうが多いのだから、本人の将来を守るためにも、家の体面を保つためにも、本人がスキルを授かったことに気が付いていない可能性を考えて、念のために鑑定させることもあると、図書館の本に書いてあった。

そして、おじいさまの公爵としての地位と人脈、財力をもってすれば、神官を呼び出して孫をこっそり鑑定させることはたやすい。


だが、おじいさまは今まで私にスキルがあることは明らかにしなかった。

そもそも鑑定させていないのか、それともスキルを明らかにしてはまずい事情があるのかだと思っていたが、どうも後者だったようだ。


「そうか。

神官の鑑定により判明するのは、スキルの有無、そしてスキルがある場合はスキルの名前だけだ。


ライラのスキル名は、【公爵令嬢のお願い】だったかな。


体力増強といったありきたりのスキルであれば、名前からスキル効果は容易に推測できるが、支援系のスキルは効果が生じる範囲や内容がよくわからないことが多い。


だが、ライラのスキルについては、なんとなく危ない気がしたのだ。


お前のおばあさまは、【皇女様の命令】という支援系のスキル持ちだ。

これは、おばあさまの3m以内に近づいた者に対して、おばあさまが何かを命令すれば、その者は身命を賭してもその命令を実現してしまうというスキルだ。

素晴らしいスキルに見えるが、おばあさまが悪意を持った何者かに利用されてしまえば、王家の転覆にすらつながりかねないという危険なスキルだ。


私は、おばあさまの父である当時のディアス皇帝と交渉し、スキル封じの指輪を絶対に外さないこと、そして、おばあさまを私が守り抜くことを約束し、おばあさまと結婚したのだ。


ライラのスキル名は、【公爵令嬢のお願い】だったかな。

おばあさまの美しい姿のみならず、変なところも似てしまったのではないかと心配になってね。


幸い、ライラは自分にスキルがあると気がついていなかったから、このまま隠しておいたほうがいいのかもしれないと思っていたのさ」


「私のスキルは、おばあさまのスキルほど効果が高い訳ではありませんが、似たような効果があります」


「しかし、スキルに気が付いたから人前に出ないようにしたのかい。


確かに、ライラのスキルを使うと、相手を操ってしまうかもしれないからな。

ライラは、やはり優しい、いい子だ」


おじいさまが、勝手に誤解してくださったので、慌てて訂正する。


「いやですわ、おじいさま、いろいろ嫌になってひきこもっていただけです」


「ライラは、謙虚だな。


しかし、これからどうするつもりだい。


スキル封じの指輪はここ何年も探させているが見つかっていないよ。

あれは国宝レベルの聖遺物だからね」


「私は、スキルの使い方を学び、危険な使い方をしないよう自らを律する方法を探したいと思います。


スキル封じの指輪の話は初めて知りましたが、そのようなものがあれば、そういった制約を課されることを受け入れたいと思います。


ただ、もう一つ問題があります。


私は、ある方法で未来を予測しました。

そして、今のまま過ごしていれば、オルロー家に危機が訪れることに気が付いたのでございます」


「未来予測、、、。


確かに、そういったスキルを授かったという詐欺師はたくさんいるね。

まともな者なら誰も相手にしないけれどね」


「ごもっともでございます。

ただ、そういった怪しいスキルに基づくものではなく、そう予測するだけの事情があるとしたら、どうしますか」


「何らかの事実に基づいて、そのように予測したということかな。


ライラの賢さはよくわかっているが、その事実を知るまでは何とも言えないね」

ふむふむ、おじいさまは、興味を持ってくださっているようね。


「そうですね、まず、国家の危機の際に現れるという聖獣様が今私のもとに来ております」


「聖獣様が?どこに?」


「私の部屋にいらっしゃいます。


あとは、人を介して聞いた彼らの言動から推測しているにすぎません。


イヴァン王子は、今の交際相手との結婚を願うあまり、私に無実の罪を擦り付けて断罪し、婚約を破棄しようとしている節があります」


「馬鹿な、そんなことをすれば、彼が婿入り先を失うだけではない。

アルテリア王国自体、存続の危機に陥るのだぞ」


「そんな馬鹿がいるかもしれない、ということでございます。


私は、断罪を免れるために婚約を解消したい。


しかし、婚約の解消ができないのであれば、せめて、私の身に何か起こった時の対策を講じてほしい。

それが私の切なる願いでございます」


「馬鹿な。

ライラに何かあったならば、オルロー家を存続させる意味などない」


「ありがとうございます、おじいさま。


ただ、私が今、私の断罪よりも恐れているのが、アルテリア王国の存亡の危機に瀕した場合、一体どこの領地の被害が大きいかということでございます。


おじいさまは、わざわざ自分の恋愛のために国を滅ぼしかねないような愚かな行動に出る者はいないと決めつけていらっしゃる。


でも、おじいさまだって、おばあさまと恋に落ちて、結婚するために危ない橋を渡ったでしょう。

ひいおじいさまのごきげんによっては、オルロー家が、いえアルテリア王国だって滅びていたかもしれない」


「・・・イヴァン殿下は、その、そういった状態なのかね。

熱に浮かされたというか、冷静さを欠くというか」


「ええ。そう見えます」


「少し考えさせてほしい。私も材料を集めたいと思う。

あと、スキルのことは、形式を踏んで神官に鑑定させたほうがいいだろう。

だが、スキルの内容をどう周りに伝えるかは、少し相談したほうがよさそうだね」


おじいさまは、少し譲歩してくださった。

前回とは違う結果が得られたので、うれしい。


だが、一番うれしかったのは、おじいさまが、私に何かあれば、オルロー家を存続させる意味がないとはっきりおっしゃってくれたことかもしれない。


これが、イヴァン殿下と同じ、個人の感情を王権の安定に優先させる感情的な意見だということはわかっている。


けれど、私がオルロー家の後継者問題について考えるたびに、私が女に生まれてきたばかりにこのような問題が生じてしまったと、私が私ではなく男として生まれるか、いっそ生まれてこなければこんな問題は起きなかったのにと申し訳なく思う気持ちがいつも湧き上がってきていたから、おじいさまが私をまっすぐに肯定してくれたことが、なによりもうれしかった。

本日、2話更新です(これが1話目)。


あと、ギリギリ更新が続いているので、明日から予約投稿時間を19時に変更します。

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