1 王妃様へご挨拶します
アル戦のメインストーリーを考えると、オルロー家の没落を免れ、領地で戦争をさせないためにはURキャラクターが覚醒する必要がある。
そして、仮にミトロヒナ嬢が主人公だとすると、主人公に対する好感度の関係で、まだ覚醒する可能性が残っているURキャラクターは、第一王子ピョートル殿下のみである。
ただ、ピョートル殿下の覚醒にあたっては、イヴァン殿下が王権をかさにきて主人公に最優秀生徒を辞退するよう迫り、ピョートル殿下がそれを助ける必要がある。
ならば、最優秀生徒になってピョートル殿下に接触し、なんとかピョートル殿下に覚醒してもらう方法を探りたい。
仮にイヴァン殿下に理不尽な対応をされている最優秀生徒を助けることが覚醒条件だとすれば、最優秀生徒である私がイヴァン殿下から理不尽に断罪されているのを見て助けてくれるかもしれない。
もともと、スキルを授かっていないと思い込んでいたので、スキル実技の単位が取れないために最優秀生徒になれないことをとても悔しく思っていた。
そういった思いもあり、私は、最優秀生徒になれる可能性があると気が付いた昨日から、最優秀生徒になって、卒業式でスピーチをすることを熱望している。
引きこもって十分休養を取ったこともあり、私は新たにできた目標の達成に向けて結構燃えている。
だが、そのためには、避けては通れない、いくつかの関門があった。
その一つが、王妃様へのご挨拶である。
昨日、レオニード先生は私のスキル理論の論文に対しておっしゃった。
「そうですね、最先端の論文まで抑えた内容で、学園生レベルとしては、十分優秀です。
ただ、まだ推論段階の議論と実証済みの理論を区別できていません。そこを区別した書き方をしていただけると、いいように思います。
あとは、参考文献を引用してください。
さらに上を狙うなら、一部、あなたの推論が入っているように思いますので、そのように推測した根拠となる論文を上げ、またそのように推測した論理過程を記載していただければ、飛び級で修士資格を差し上げたいぐらいですが、まあ、それは難しいでしょうね」
レオニード先生のご指摘に従って論文を修正すれば、最優秀生徒を狙うライバルたちに大幅にリードすることができるだろう。
ただ、この修正を行うためには、現在のこの世界におけるスキル理論の最先端がどの程度なのかを確認しなくてはならない。
私が論文に書いたことは、前世でアル戦の公式HPに書いてあった情報なので正しいことは間違いないが、正しい結論に至る過程を論理的に説明しなければ論文ではない、ということか。
そして、最先端の論文を読むためには、王立図書館に行く必要がある。
王立図書館は、王宮の入り口前にある。
今までのように王宮の奥のコテージに引きこもっているには、ただ息をひそめていればいいが、王立図書館に行くとなれば人目もあるので、王子妃教育を担当されている王妃様へのご挨拶は避けられないだろう。
今日は、キアラに頼んできちんとドレスを着せてもらう。
また、王妃様にお目通りを願うため、ダイがお使いに行ったと思ったら、すぐ帰ってきた。
今日の午前中であれば、お目通りがかなうという。
あわてて、ちょっとした手土産を用意させ、王妃様がいらっしゃる後宮に伺う。
後宮は、コテージの隣にあり、学園に行くより近い。
ダイをおともに、さっさと歩いていく。
「あら、早かったのね。
まあ、歩いてきたの?
あなたは、いつも私をびっくりさせてくださるのね!
まあ、いいわ。楽にしてちょうだい」
王妃様は、後宮の客間でお待ちになってくださっており、にこやかに、かつ隠れたトゲがある感じで話しかけてくださった。
私は、いきなりお目通りを願い出たこと、また王子妃教育を休んでいることを詫び、手土産を差し出した。
「あら、ありがとう。
いつも変わった物を持ってきてくださるので、侍女たちも楽しみにしているのよ。
体調はいかが?」
王妃様は、さらっと手土産は侍女に下げ渡しているとこちらを牽制しつつ、私の体調を訪ねた。




