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余 スビートの独り言1

本日、2話更新です。

僕は聖獣らしい。

ママが言っていた。

だけど、僕にはよくわからない。


僕は、聖霊の国でふわふわ漂っていた時にママに会い、そのまま、ママと一緒にこちら側の世界にやってきた。

僕がこちらに来ると、すぐ、ママは、自分の役目が終わったと言って、どこかに行ってしまった。

それから、僕はずっと一人だった。


最初、僕は、学園の中庭に隠れて住んでいた。

子どもがいっぱいいて、その子たちの様子を眺めるだけでも楽しかった。


だけど、ピンクの髪をした女が、いろいろな男を連れて中庭をうろつくようになった。

僕は、その女の雰囲気が嫌だった。

なんだろう、たくさんの人から発せられた恨みや嘆きの感情をまとっている感じ。


僕は、隠れて、慎重に行動するようにした。



ある日、その女が、別の少女を怒鳴りつけているのを見かけた。


そのうち、女は時々いちゃついていた男を呼び寄せると、その男に訴え始めた。

「イヴァン殿下、助けてください。

マルガリータが私に水たまりの中に入って道を譲れと言いました。

私が平民出身だから。

ひどい差別だと思います。


マルガリータは、ライラ=オルロヴァのとりまきなので、彼女から命令されて私をいつもいじめるのです」


少女は、大きな荷物を持ったまま、下を向いて泣き出しそうだった。


僕は、こっそり見ていたから本当のことを知っている。


少女は先生に頼まれて山のような授業の教材を運んでいた時、荷物で前が見えなかったようで、大声で注意喚起しながら歩いていた。

「すいません、荷物とおりまーす。ご注意ください!」

そこにピンクの髪の女がやってきて、少女の荷物に肩がぶつかったと文句を言いだした。

「私に脇によけろ、ですって?

こんなところで道からそれたら、水たまりに入れってことよね!」


少女は、荷物を持ったまま、ひたすら謝ったが、今度は、荷物を持ったままという態度が失礼だと文句を言われた。


「ごめんなさい、でも、教材なので、地面の上に置くと、しめってしまうから」

「王族に対する礼儀を知らないのね!失礼でしょ」


少女は、泣きながら荷物をベンチの上に置くと、泥水の中にひざまずいて王族への礼をとり謝った。


女たちは満足したのかどこかへ行ってしまった。

少女は、荷物を職員室へ届けると、女子寮へ帰ってしまった。


僕も少女についていった。

中庭は危険だ、と思ったからさ。


少女は、学園の授業に行かずに、ずっと部屋にこもっているようだった。

泥水まみれの制服のままでうろうろしていたから、風邪をひいたのかもしれない。


僕は、女子寮に住み着いている猫たちにあいさつし、女子寮で暮らすようになった。


僕は、女子寮にいるたくさんの人たちから餌をもらった。

僕は別にお腹もすかないし、食べる必要はないのだけれど、食べ物に込められている優しい気持ちは大好きだ。


引きこもってしまった少女からも時々餌をもらった。

少女は、僕を見るとうれしそうだったので、僕もなんだかうれしくなった。


だけど、女子寮には、ピンク髪の女も住んでいて、ある日、僕は彼女に捕まってしまった。


僕は、乱暴なことは嫌いなのに、爪を立てて抵抗し、体をひねって逃げ出した。

そして木の上に登って隠れたのだけれど、高いところに登りすぎて、降りられなくなった。



そこに助けに来てくれたのが、ダイとライラだ。


ライラは不思議な子で、彼女が「大人しくしなさい」と言うと、理由はわからないのに大人しくしなくてはならないような気がする。

だけど、自分で考えて決めたわけではないから、大人しくしながらいらいらする。


それでも、数日経つうち、ライラがピンク髪の女からかくまってくれ、コックに頼んでご飯を食べさせてくれたこと、特に鶏肉の牛乳煮がおいしかったこと、散歩やブラッシングなどお世話をしてくれたことから、なんとなく、ライラはいい子だとわかった。


あと、ライラは、ダイと話をしていて、とてもつらい話を聞いたみたいで、ショックを受けていたのだけれど、絶対に弱音を吐かず、抵抗し続けようとしているのが分かった。


ママは言っていた。

聖獣は、自分の心のままに行動すれば、役目を果たすことができるって。


僕は、ライラを慰めたいと思い、近づいた。

ライラは、僕を撫でながら、

「私、いいスキルを持っているかも」とかブツブツ言いだした。

その時、僕は、自分の中を光が通り抜けていき、ライラをいやしたのが分かった。

なんにせよ、ライラが元気ならいいのさ。


その後、僕はライラに話しかけ、一緒に空を見ていた。

僕は、空を見ながら、ママはどこに行ったのだろう、聖霊の世界にいるのかな、僕は独りぼっちだと思っていた。


だけど、ライラと空を見るうちに、不思議な気持ちになった。


僕は、ライラが僕のことやママのことをわかってくれているような気がして、なんだか彼女に親しみを感じた。



そう、僕とライラは、チームになったんだ。




ダイにも話しかけてみた。

ダイは僕が聖獣だって言っていたけれど、やっぱり難しくてよくわからない。


あ、精霊は、声で会話しているのではなくて、イメージをやり取りしているだけなので、どんな言葉でしゃべっても意味は分かる。


あと、僕と会話していても、僕が声を聞かせようと決めた人以外から見れば、人間が僕相手に独り言を言っているみたいに聞こえるだろう。


僕がライラをいやしたのは、スキル「聖なる光の癒し」を使っていたみたい。


スキルもあるし、僕は聖獣なのかもしれないけれど、でも、争いごとや、面倒なことは嫌だな。

国を助けるとか、ほんと、面倒だよね。


毎日、こうやってごろごろして、時々、鶏肉の牛乳煮をもらったり、ブラッシングしてもらったりしながら、寝て暮らしたいなあ。


あと、あのピンク髪の女がどこかに行ってしまったら、彼女から怒鳴られて、部屋に引きこもっていた少女にもスキルを使ってみたいな。


あの子、元気にしているといいけど。


どうしているかな。


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