2 私のスキルはいいスキル
今日も午後のお茶の給仕はダイだった。
キアラは忙しいらしい。
話を聞きたかったから、ちょうどいいわ。
私は、自室のソファでスビートと並んで座ってお茶をいただく。
「お嬢様、ずいぶん、その猫と仲良くなられたのですね。
マリが、猫が台所に来ないとさみしがっていましたよ」
「名前を付けたの。スビートというのよ」
「よろしく」
とスビートは小さい声で言った。
《おやおや、やはり聖獣様でしたか》
「そういう難しいの、よくわかんないや」
スビートは、ダイの日本語の質問にさらりと答えると、大きなあくびをした。
あら、日本語もわかるの!
なんて賢いのかしら。あと、聖獣って、どういうこと?
だが、今日は、そんなことより、私には重大なミッションがあるのですわ!
《ダイ、今日は私のスキルやほかのURキャラクターの話を聞きたいわ》
《はい、お待たせしました》
ダイは、当然のように私の前のソファに座り、自分用のお茶をカップに注いだ。
《URキャラクターは3体です。
一人はお嬢さま、もう一人は第一王子のピョートル殿下、最後にそこにおわします猫、ならぬ聖獣ザラトーリェーフです》
《え?》
ダイはソファの上で、うつらうつらし始めた猫を指さした。
《その、猫もどきが、アステリア王国の聖獣ザラトーリェーフです》
《スビートが?》
《ええ、スビート様は、ただの猫ではありません。ライオンです。
そして、季節はまさに冬、冬のライオンです!》
ダイはよくわからないメロディを口ずさんだ。
日本の歌みたいだけれど、ごめんなさい、知らないわ。
《これが世代差というやつか》
ダイは恥ずかしがって悶絶していた。
いつもダイから嫌味を言われっぱなしなので、やり返せたようで気分がいい。
一方、スビートは、うとうとし始めたところを、いきなり私たちから見つめられて固まっている。
こんなかわいらしい子猫ちゃんがライオンなんて信じられないわ。
《わかったわ。とりあえずURキャラクターについて教えて》
私は、ノートを開いて、メモを取りながら言った。
《まず1体目、以前からお伝えしているとおり、ライラ=オルロヴァ公爵令嬢、お嬢様ですね。
スカウト条件は、選択授業手芸でエンカウント後、三馬鹿のサブミッションを開始しないでいると開始するお茶会のサブミッションを進め、全て「はい」を回答することです。
スキルタイプは支援、属性は「無」です。
当初スキルは、「公爵令嬢のお願い」です。
ミッションの際にこのスキルが発動すると、一定の割合で敵が無効化されます。
つまり、お嬢様が、ここを通りたい、とか、この目的物が欲しいといったミッションの獲得目標を相手に言うと、相手は従わざるを得ないような圧力を感じる、というものです》
《まあ!
つまり、私は、スキルを獲得すれば、みんなに何でも言うことを聞いてもらえるということね!
すばらしいわ!断罪回避なんて余裕じゃない!
私は、いつ、どうやったら、そのスキルを獲得できるの?》
《みんなに、何でも、というわけではありません。
スキルタイプが魔法攻撃であれば、精神的な抵抗力がありますから、断ることができます。
あと、断りづらいと感じているだけなので、無理なものは無理、と割り切って断ることは可能です。
お嬢様と長く付き合って慣れてくると、申し訳なさそうにしておけば、結構簡単に断ることができるとわかってきます》
《え?》
《いつスキルを取得するかについては、少なくとも、私がお嬢様にお会いした7歳の時には、すでにお嬢様はスキルを取得していましたよ。
「公爵令嬢のお願い」スキルは常時発動するパッシブスキルなので、お嬢様はずっと使っています。
お嬢様が、ご学友から、押しつけがましいとか言われて、なんとなく遠巻きにされているのは、お嬢様に何か言われると、理由はわからないけれど従わなきゃいけないような気がしてもやもやするからだと思います。
お嬢様の場合、あまりに幼いころにスキルを授かった上、パッシブスキルで常時発動していたため、そういう人だと思われてしまい神殿で鑑定を受けなかったのではないですか》
私は、16歳になってもまだスキルを授かっていないため、引け目を感じていたのだけど。
とっくにスキルを授かっていたの?
あと、友達が少ないことも気にしていたのだけれど、それもスキルの効果なの?
ショックで固まる私をよそに、ダイはすらすらと語り始めた。
《このスキルは言うまでもなく強いのですが、さらにすごいのは、属性ですね。
スキル属性が無・無なのです。
無属性は、守備力を高めるのですが、お嬢様は、どのような属性の攻撃を受けても通常の0.8倍×0.8倍の0.64倍のダメージしか受けないのです。
めちゃくちゃ打たれ強いので、頼もしいキャラクターでした。
お嬢様の覚醒条件は、卒業パーティで断罪されて反撃し、無罪放免となることです。
サブミッションでバッドエンドになると、そのキャラクターをパーティメンバーにすることができなくなりますが、お嬢様のバッドエンドは、卒業パーティ段階で、ライラ=オルロヴァ公爵令嬢の主人公への好感度が高すぎることで発生します。
婚約者がいるのに、主人公と恋愛関係と判断されると、断罪が成功してしまいます》
《そう》
とりあえず、私、自分がスキルを取得済みだったという事実を受け入れることに時間がかかりそうですわ。




