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1 猫に名前を付けました

私は張り切っていた。

今日こそ、ダイに私のスキルや、他のキャラクターの話を聞くのですわ。



とはいえ、使用人たちは、今日も忙しそう。




私は、とりあえず、溜まっている手紙のたぐいを整理することにした。



体調不良ということにしているので、お茶会やパーティのお誘いは全部断る。


学園の知人たちは、お見舞いのお手紙やお菓子を送ってくださった。

社交辞令の範囲だろうと思うけど、心配してくださる方がいるというのは、なんだか心強いわね。


マルガリータ・ジュコフスカヤ伯爵令嬢からもお見舞いの手紙が来ていた。

とても心配してくれているみたい。


王妃殿下からもお見舞いの手紙をいただいた。

娘のように思っているので、とても心配している、早く回復を祈ります、と書いてある。


ありがたいけれど、それなら、実の息子であるイヴァン殿下の浮気癖を注意してほしいですわね。

王妃殿下は、なにか腹に一物あるようで、いつも警戒してしまうわ。




これらの手紙全てに返事を書くと、ダイがそれをあちらこちらに届けに行く。


そうだわ、ダイは侍従だもの、手紙を書けば届けに行くわよね。

自分から話を聞くチャンスを失ってしまったわ。

なかなか話を聞くことができなくてじりじりするわね。




コテージ周辺の王宮の庭を散歩することにする。

猫に、散歩に行きましょう、運動不足はよくないわよ、と声をかけると、猫はのっそりと起き上がって付いてきた。




コテージは王宮の外れにあり、一般の人は入れない。

王宮の人も何か用事でもなければ、こんな外れにはこない。


このため、このあたりは、王宮の中でありながら庭の手入れがいい加減で、花が枯れていたり、雑草が伸び放題になっていたりするのだが、それも晩秋の季節らしく、趣がある。


猫は、最初のころは、警戒していたのか、動きがぎこちなかったのだが、今は慣れてきたようだ。


こちらの言っていることを理解しているのか、ちゃんと私の言いつけを守るし、賢くていい猫だと思う。


あと、猫好きのマリがたくさん餌を食べさせるせいだろうか、猫はこの3日ほどでちょっと大きくなったような気がする。

成長期なのかしら。



壊れかけた東屋を見つけて休憩することにする。


ベンチの上でぽけーっと空を見る。

こんなにのんびりしたのは久しぶりかもしれないわ。

学園の授業や、王子妃教育で忙しかったのですもの。


「こんな日が、ずっと続けばいいのにね」

私は、猫に話しかけた。


「本当だね」

猫は返事をした。


「あら、猫ちゃん、しゃべることができたの?」


「まあね」

とだけ猫は答えて、そっぽを向いた。


前世と違って、こちらの猫は喋ることができるのかしら。


今までしゃべる猫がいるなんて聞いたことはないけれど、魔法がある国ですもの、何があってもおかしくないわ。


「どうして最初は喋らなかったの?」


「よくわからない人としゃべっちゃダメって、ママに教わったから」


「あら、ママがいるの?

ママは、あなたがおうちに帰らなくなったら心配しているのかしら」


「ママは、ママは、、、1年ぐらい前に、お役目が終わったからって、どこかに行っちゃったんだ」

猫は、泣きそうになったがこらえた。

そして、泣きそうになったことを恥ずかしがっているように見えた。

私は目をそらして、見なかったふりをした。


「まあ、さみしいわね」

私は、7歳の時に母から引き離された時のことを思い出した。



私たちは、一緒に空を見上げて、じっと座っていた。




ふと私は思いついて言った。

「猫ちゃん、これからは、うちのコテージで暮らすのでしょ。

名前を付けてもいいかしら。

そして、私たち、なかよしになりましょうね」


「なんか、君、押しつけがましいというか、変な話し方をするよね。

断りにくい」


つまり、いいってことか。

猫ちゃんったら、素直になれないのね。

前世でいうところのツンデレだわ。かわいいわ。



ミトロヒナ嬢が猫を連れて行こうとしていたので、ほとぼりが冷めるまではコテージに置いておくつもりだったけれど、その後、猫が外で暮らしたがるかもしれないと思って名前を付けていなかったのだ。



「そうね、毛の色がお日様の光のようだから、スビートはどう?

私の領地の方言で、光という意味なのよ」


「また勝手に決める。

まあ、君が僕を何と呼ぼうと、僕はかまわないよ」


ふふーん、私はニマニマしながらスビートを抱きあげて、もふもふの首回りの毛に顔をうずめた。


「こうやってしゃべっているのは、私のこと、いい人だってわかったからでしょう?」


「勝手にそう思っておけばいいよ」

スビートは迷惑そうな顔をしつつ、もう逃げ出そうとはしなかった。


もふもふツンデレ猫。いいなあ。



近所の地域猫さんは、もふもふだけど、ツンしかない。

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