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終末の黙示録  作者: 無神 創太
第七章 過去との対峙

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第392話 本題2

「そうでもないわ」


 しかし踵を返すように、ノキアさんが言葉を挟む。


「これだけの人が集まるとなれば、相応のセキュリティが必要になるの」


 ノキアさんの視線はタブレット端末に、声は全員に向けられていた。

 今回のパーティ参加者は、およそ千人規模。政財界の要人に加え、王族の来日も予定されている。

 そのため当然、交通規制は敷かれる。車両検問、立ち入り制限区域の設置。要人警護専門部隊の増員。テロや妨害行為を想定した、周到な準備が水面下で進められる予定だ。


「ガイは本部の警備部門と合流。当日の警備を担当してもらうわ」


 ノキアさんの視線が、三番席へ向く。


「力仕事は、得意分野でしょ?」


 ノキアさんの言葉は、決して皮肉ではない。それは、的確な割り振りだった。


「一週間前にはママが帰ってくるの。それにパパも戻ってくるから、私は今回……ほとんど参加できないと思います」


 ハルノは少しだけ、視線を伏せて言った。

 声音はいつも通り落ち着いている。だが、その奥にわずかな硬さがあった。


「一週間前からって、ハルノも何かするのかよ?」


 思わず問い返す。

 パーティ当日ならまだわかる。だが一週間前は、来日組を除けばまだ平時のはずだ。親が帰ってくるとしても、普通なら子どもに直接関係する話ではない。


「いろんな業界の人たちも来るから、関係各所も含めて挨拶回りよ」


 ハルノは淡々と説明する。どうやら母親に同行を求められているらしい。そして――断ることができないようだ。


「ハルノのお母さん。世界を飛び回る有名デザイナーだもんな」


 世界の主要都市に、直営店を構えるブランドのトップ。

 年商は数千億規模。名実ともに成功者だ。多忙を極め、ハルノと顔を合わせるのは年に数回ほど。厳しく芯の通った人物で、隙がない感じだった。


 正直に言えば――少し苦手なんだよな。


「そうよ。私も参加したかったけど、顔合わせもあるから“絶対に来い”ですって」


 心の中でそっと呟くと、ハルノは苦笑混じりに肩をすくめる。

 普段は強気で、誰に対しても臆さないハルノ。だが母親に対してだけは、明確に立場が違う。


「ハルノのお母さん。ちょっと怖いもんな」

「さすがにママが相手は厳しいわ。パパ相手なら、なんとでもなりそうだったんだけど」


 軽くぼかした感想に、ハルノも苦笑で返す。強気な彼女が“厳しい”と言うのだから、やはり本物だ。


「それに当日はパパも一緒に、パーティへ参加することになっているの。だから今回は、そもそも顔を出せそうにないわ」


 ハルノの説明で、ようやく腑に落ちた。

 先ほど感じたわずかな不機嫌。一週間前からの行動制限。任務に参加できないことへの、悔しさ――理由は明確だった。


「父君はジェネシス社の軍総司令ですものね。……オッケー。今回はハルノ抜きで考えましょう」


 ノキアさんが、さらりと言う。

 ハルノの父親は、ジェネシス社の軍総司令。社長・獅子王統夜と懇意にしている重鎮だ。

 だからこそ、幼少期からの付き合い。気心の知れた幼馴染という関係も、ただの偶然ではない。パーティ当日は、軍総司令の娘としての顔を求められているのだ。


「……ねぇ、蓮夜。蓮夜もパーティに参加するんでしょ?」


 話が一区切りしたところで、ハルノが小声で耳打ちしてくる。

 社長の息子なのだから、本来ならば参加は当然。だが――今の自分は、“獅子王”の名を名乗っていない。

 それはご子息様と呼ばれること、肩書きで評価されるのは嫌なため。自分の力で認められたい。そんな背景から、今は母方の一ノ瀬を使っている。


「遅れてにはなるだろうけど、少しは顔を出すよ」


 任務の合間を縫ってでも、参加するつもりではある。今回は社長就任十周年の節目と、さすがに無視するわけにはいかない。

 自分が社長の息子であることを知っているのは、この場ではハルノとノキアさんの二人のみ。個人として見てほしいとの思いから、他のメンバーには伏せられている。


「ってことで――パーティ参加者から適合する人材をリストアップ!! 遠方組には事前アポイントも忘れずに!!」


 空気を切り替えるように、ノキアさんが声を張る。指示を出し終えると、彼女はタブレット端末をまとめ始めた。


「これから別件があるの。あとは進めておいて」


 そうノキアさんは言い残し、司令官は会議室を後にする。

 残されたのは、動き出した作戦。それと、それぞれの立場を抱えたままの選択者たちだった。


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