いいえ、木の棒一本です
俺は王城へ向かう馬車に乗ることになった。
……いや。正確には乗せられた。騎士達に囲まれ、逃げ道は完全に塞がれている。左右にも、背後にも、隙間なく整列した鎧姿が並んでいた。
夕日を浴びたその鎧の群れは、一枚の巨大な壁のようにも見える。逃げようという発想すら湧いてこなかった。
断ろうと思えば断れたのかもしれない。でも、その空気じゃなかった。
完全に英雄を城へお連れする流れが完成している。何人もの騎士が当然のように俺の周りへ道を作っていく。誰一人として、疑問の色を浮かべる者はいない。
「どうぞ、こちらへ」
騎士隊長が恭しく馬車の扉を開ける。
磨き上げられた金具が夕日に照らされ、きらりと輝く。その光の反射だけで、この馬車がどれほど手をかけられて作られたものか嫌でも伝わってくる。指紋一つ残ってないその表面を見ているだけで、自分の存在がひどく場違いに思えてくる。
「いや、俺みたいな一般人が乗っていい馬車じゃないでしょ、これ」
思わず一歩後ずさってしまう。
窓枠には見たこともない宝石が埋め込まれていて、指先で触れることすら躊躇われるほどの造りだった。宝石の一粒一粒が夕日の角度に合わせて、微妙に異なる色を反射していた。
さっきまで魔物に襲われていたとは思えないほど、豪華さだけは健在だった。
座席には分厚い赤のクッション。ふかふかと、見ているだけで沈み込みそうな厚みがある。縫い目一つとっても、丁寧に一針一針施されているのが遠目にもわかった。
床には手足の長い絨毯。踏んだ跡すら残さないよう、細心の注意を払いたくなるような品だ。触れてもいないのに、その柔らかさが指先に伝わってきそうだ。
天井には小さなシャンデリアまでぶら下がっている。馬車が揺れる度に、そこから小さな光の粒がちらちらとこぼれ落ちていた。まるで、狭い箱の中に小さな星空を閉じ込めているかのようだった。
「これ本当に馬車?」
どう見ても走る応接室だ。もはや移動手段という枠組みを超えている気がする。
「ええ、馬車です。気楽に乗っていただいて構いません。あなたは命の恩人です」
「だから偶然の事故なんだって……」
騎士隊長は聞いているのかいないのか、頷く。俺の抗議はきれいに受け流された。
……もう否定するの疲れてきたな。喉の奥まで出かかった言葉を、ため息と一緒に飲み込む。反論する気力そのものが少しずつ麻痺していく。
諦め半分で馬車へ足を掛ける。その瞬間。
「うわ……」
泥だらけの靴が視界へ入った。思わず足が止まってしまう。さっき穴へ落ちたせいで、靴底には土がべっとり付いている。乾きかけた泥が爪先の辺りでひび割れているのも見えた。
こんなので乗ったら絶対怒られる。高そうとかいうレベルじゃない。これ打ち首獄門じゃないか?
俺の人生で見た家具の中でも、ぶっちぎりで一番高そうだ。実家の居間にある家具の総額を足しても、この馬車一台には到底及ばないだろう。
「……あとで弁償とか言われないよな」
小さく呟きながら、できるだけ絨毯を踏まないように端へ足を置く。爪先立ちになりながら、体重をなるべくかけないよう気を配った割に額にじわりと変な汗が滲む。
ものすごく意味のない抵抗だった。恐る恐る腰を下ろす。
「…………は?」
体が沈む。まだ沈む。まるで、体の輪郭ごと座面に包みこまれていくような感覚だった。重力の感じ方すら、少しおかしくなったように錯覚する。
「ちょっ……なにこれ」
反射的に立ち上がり、もう一度座る。結果はさっきと変わらない。
思わず両手で座面を押した。柔らかな弾力が、指先をゆっくりと押し返してくる。押したぶんだけ少し遅れて跳ね返ってくるような、不思議な感触だった。
「柔らかっ!」
ベッドより柔らかい。いや、雲ってこんな感じなのかもしれない。想像上の雲の感触が今、目の前で現実になっている。
座っているだけなのに、眠気が襲ってくる。じわじわと抜けていくようだった。ついさっきまで魔物と対峙していたはずなのに、今はそんなことが嘘のように思えてならない。
「お気に召しましたか?」
向かいへ座ったフィリアが嬉しそうに微笑む。
窓から差し込む夕日が、その頬をほんのり橙色に染める。長い睫毛の先まで、光の粒がまとわりついているように見えた。
「王城の職人が仕立てた特注品なんです」
「俺、この椅子だけで一生暮らせそう」
「それは困りますね」
くすり、とフィリアが笑う。
その笑顔はどこか年相応で、さっきまで見せていた王女としての凛々しさとは少し違っていた。年頃の少女らしい、柔らかな表情で、口元に浮かんだ小さな笑い皺までが、妙に印象に残る。思わず見惚れてしまいそうだ。
いやいや。俺は何を考えている。相手は王女だぞ。住む世界が違いすぎる。
自分の思考を振り払うように俺は軽く頭を振った。首の後ろが少しだけ熱を持っているような気がする。
馬車はゆっくりと走り始めた。
車輪が石を踏んだはずなのに、揺れはほとんどない。座面の柔らかさが、その振動さえ吸収してしまうようだった。まるで水の上を滑るような滑らかさ。
窓の外では騎士達が隊列を組み直し、馬車を囲むように走っている。蹄の音と鎧の擦れる音が規則正しいリズムで重なり合っていた。
その誰もが、ちらちらとこちらを見ていた。しかも目が合うと、何故か嬉しそうに頷く。中には小さく敬礼のような仕草をする者までいた。
「……なんか見られてない?」
「当然です」
隊長が誇らしげに胸を張る。
「英雄を護衛できるなど、一生の名誉ですから」
「あ、違います」
「謙遜なさらず」
「違うって言ってんのに!」
即否定。即却下。この人達、本当に俺の話を聞かない。俺が何を言っても、さすが英雄だという言葉に変換される。便利すぎるだろ、その脳内翻訳機。
抵抗すればするほど、逆に評価が上がっていくような奇妙な悪循環。
俺が頭を抱えていると、フィリアが不思議そうに首を傾けた。さらり、と金色の髪が肩から流れ落ちる。その一房が淡く輝いて見えた。指先で触れれば、絹のような感触がしそうだな。
「カンザキ様」
「はい? なんですか、お嬢様」
「どうしてそこまで、ご自身の功績を否定なさるのですか?」
透き通る青い瞳が真っ直ぐこちらを見つめていた。
窓の外を流れる景色すら、その視線の強さの前では霞んでしまいそうだった。その瞳の奥には、澄んだ湖の底を覗き込んだような不思議な静けさがある。
その瞳には疑いも打算もない。本気で不思議に思っているらしい。
馬車の中に、しばしの沈黙が満ちる。車輪の音と、遠くで響く鳥の声だけが静かにその間を埋めていった。窓の外を流れていく夕焼けの景色が少しずつ色を深めていく。
橙から茜へ、茜から紫紺へと、その境目すらわからないほど緩やかに、空の色が移ろっていた。
俺は何と答えるべきかわからないまま、ただその青い瞳を見つめ返すことしかできなかった。
「お、俺……本当に何もしてないんですよ」
思わず両手を広げる。
今日だけで何回このセリフを言っただろう。もう十回は超えている気がする。指折り数えようとして、途中で馬鹿らしくなってやめた。そろそろ本日のノルマ達成の表示が出てもいい頃だ。
「ですが、結果として助けていただきました」
フィリアは穏やかな微笑みを崩さない。窓から差し込む光の角度が変わり、その微笑みの輪郭を柔らかく縁取っていた。疑う様子も社交辞令を言っている様子もない。
本気でそう思っている顔だった。真っ直ぐな眼差しの奥に、一片の曇りも見当たらない。
「それはスキルが勝手に……」
そこまで口にして、慌てて飲み込む。危ない、危うく全部話すところだった。無理矢理押し留める。
《不幸共有》。
あの駄女神ーーいや、女神が間違えて出してきたスキル。説明を放棄し、満面の笑みでこの世界に送り込んだ張本人。今でも胃の辺りが重くなる。思い返せば、異世界に来てそんなに時間は経っていない。
なのに崖は崩れる、魔物は事故る、俺は穴へ落ちる。
散々である。指折り数えるまでもなく、この短時間で起きた災難の数々が、脳裏を順番に流れていった。
……いや、一番不幸なの俺じゃないか?
もしスキルの説明なんてしたらどうなる。崖を崩す呪いの使い手とか、歩く災厄とか、そんな二つ名を付けられそうだ。想像しただけで背筋に冷たいものが走る。冗談じゃない。
「……運がよかっただけ」
結局、一番無難そうな答えに逃げた。口にした瞬間、自分でもその薄っぺらさに苦笑しそうになる。
フィリアは少しだけ目を細める。その言葉の意味をゆっくり噛みしめるように。長い睫毛が、ゆっくりと瞬きの動きをなぞっていた。
「それでも」
柔らかな声が馬車の中へ静かに響く。車輪の音すら、その一言を邪魔しないように控えめになったように。
青く澄んだ瞳が、真っ直ぐ俺を捉える。
「運を味方につけることも立派な才能ですよ」
「…………」
返す言葉が出なかった。喉の奥に言葉にならない何かが詰まっているような感覚。
この人……いい人すぎないか? 疑うことを知らないのか、それとも人を見る目があるのか。多分前者だ。俺なんか信じちゃ駄目だぞ。
その優しさはいつか悪いやつに騙されるぞ。心の中で勝手にお節介な忠告が浮かんでは消えていく。
なんだか胸の奥がむず痒くなる。
褒められ慣れてないせいか、居心地が悪い。座面の柔らかさが、逆に落ち着かなさを助長している。
何かを応えようとした瞬間、静かな馬車の中へ、盛大な腹の虫が響き渡った。
「「…………」」
全員が止まった。
馬車が止まったわけではない。時間が止まった。
そんな錯覚を覚えるほどの沈黙だった。窓の外を流れる景色だけが変わらず後ろへ流れ続けている。
やめろ。空気を読め。今日はもう十分やらかしただろ。
これ以上、俺の威厳を削らないでくれ。心の中で、自分の腹に向かって必死に語りかけるが、そんな懇願が届くはずもない。
俺は腹を押さえながら、必死に言い訳を考える。
違うんです。これは緊張で。いや、緊張で腹は鳴らないか。じゃあストレス?
どっちにしろ格好悪い。言い訳の候補をいくつ並べても、結局どれも言い訳にすらならないことに気づき、頭を抱えた。
フィリアは一瞬だけ目を丸くした。青い瞳が、驚きでわずかに見開かれる。次の瞬間。
「あっ……ふふっ……あははっ!」
肩を震わせ、お腹を押さえながら笑い始めたではありませんか。さっきまで優雅に微笑んでいた王女とは別人のようだ。
目元が緩み、頬を上気し、先程までの落ち着いた佇まいがすっかり崩れている。
その笑顔につられそうになるくらい楽しそうに。馬車の中の空気が一瞬で軽くなっている。
騎士達は混乱だった。
「ひ、姫様!?」
「お笑いになっておられる!」
「七年ぶりではないか……!」
「え?」
七年? そんな具体的な数字ある?
俺がきょとんとしていると、隊長は感極まったように目頭を押さえた。硬派な鎧姿には似合わない、震える指先が目元を拭っている。
「姫様は幼い頃より、国民の前で決して大笑いなさいませんでした!」
「……そうなの?」
隊長は何度も頷く。その頷き一つに長年の重みが込められているのだろう。
「王族として常に気丈に振る舞われ、ご自身の感情を抑えてこられたのです」
そう言われてフィリアを見る。まだ笑っている。
目元に涙まで浮かべながら、必死に笑いを堪らえようとして失敗を繰り返している。手の甲で目元を拭う仕草さえ、どこか相応で愛らしい。
俺の腹の音で……。複雑だ。ものすごく複雑だ。誇っていいのか、恥じるべきなのか。自分でも判断つかない。
「あなたは姫様の笑顔まで取り戻してくださった」
「違う」
「まさに英雄」
「だから違う!」
否定する。騎士達は頷く。否定する。また頷く。もう会話じゃない。
一人でボケて、一人でツッコんで、それを全員が感動しながら見守っているだけだ、これ。誰も俺の言葉を額面通りに受け取ろうとはしない。
俺は深く息を吐いた。肺の奥に溜まった空気をゆっくりと吐き出していく。
……もう駄目だ。この人達とは一生話が噛み合う気がしない。
誰かが小さく鼻を啜る音が、まだ収まらない感動の余韻を物語っていた。
◇
王城へ向かう馬車は、街道をゆっくりと進んでいた。
窓の外では橙色に染まった草の穂先が風に揺れる度にきらきらと光を反射していた。
戦闘の緊張が嘘のように静かな時間だった。いや、俺の心だけは全然静かじゃない。
王女と同じ馬車。騎士には英雄扱い。
異世界一日目で何をどう間違えたらこんなイベントになるんだ。頭の中で今日一日の出来事を巻き戻してみても、どこにも正常な流れが見当たらない。
普通は町へ行って、冒険者ギルドで受付のお姉さんに説明を受ける流れじゃないのか? 俺のチュートリアルはどこに行った?
そんなことを考えていると、フィリアが窓の外を眺めながら小さく呟いた。
「もうすぐ王都ですよ」
「へぇ……?」
俺も窓の外を見る。遠くに見えていた巨大な城壁が、徐々にその全貌を現し始めていた。馬車が進むごとに地平線の先にあった小さな影が、みるみる存在感を増していく。
「……でっか」
声が漏れてしまう。これはゲームじゃない。本当に巨大だ。画面越しに見る映像とは桁違いの圧迫感がある。
十メートル……いや、二十メートルはありそうな石壁が地平線まで続いている。長年の風雨に晒されたであろう表面には、無数の傷や苔の跡が刻まれていた。
その上には何十人もの兵士が見張りに立ち、槍がずらりと並んでいた。さの穂先の一つ一つが光を受けて鈍く輝いている。
「この国の王都、エルグランツです」
フィリアはどこか誇らしげに微笑む。声にも隠しきれない愛着が滲んで見えた。
「人口はおよそ五十万人です」
「ご……!?」
思わず言葉に詰まってしまう。人口密度半端ないだろ!
「五十万人?」
「はい」
「村どころか県じゃん」
「けん?」
「あ、いや、こっちの話」
危ない危ない。異世界に県なんてあるわけない。冷や汗がまた一つ背中を伝った。
俺が慌てて誤魔化していると、隊長が前方を見据えたまま口を開く。
「門が見えてまいりました」
巨大な正門の前では、多くの馬車が列を作っていた。夕暮れの薄闇の中、それぞれの馬車が持つ提灯の明かりが、ぽつぽつと灯り始めている。
商人らしき人。荷馬車の荷台に、山のように積まれた木箱。
旅人。埃をかぶった外套を纏い、疲れた足取りで列に並ぶ。
冒険者らしい鎧姿の男女。腰に掲げた剣や、背負った盾が夕日を受けて光っていた。いかにもファンタジーな光景に少しだけテンションが上がってしまう。
「おぉ……! 本物初めて見たや……」
これだよ。俺が想像していた異世界は。胸の奥に、じんわりとした高揚感が広がっていく。すると、門番がこちらへ気付いた。
「王家の馬車だな。道を開けろ! 姫様がお戻りだ!」
並んでいた馬車が次々と道を譲る。車輪の軋む音と御者の掛け声が、あちこちで一斉に響いた。もう何を言っているのかわからない。
兵士達も一斉に敬礼した。ガシャンという金属音が、門の周辺に規則正しく重なる。
門がゆっくりと開いていく。重々しい音を立てながら巨大な扉が内側へと押されていく。
すげぇ。VIP待遇ってこういうことか。
俺が感心していると、門番の一人がこちらに気づく。怪しむような視線が一瞬だけ俺の泥だらけの服装を捉える。
「そちらの青年は?」
当然の質問に、隊長が誇らしげに胸を張る。
「姫様の命を救った英雄である!」
やめろ。嫌な予感しかしないんだから、それ。全身の毛が逆立つくらいだ。
「なんと! 英雄殿だったか!」
その声は周囲へ伝染した。水面に落ちた一滴が波紋を広げていくように、囁きが列全体へと広がっていく。
「英雄?」
「英雄だって? 何をしたって言った?」
「姫様を救ったらしいぞ!」
並んでいた人々が一斉に俺を見る。無数の視線がこちらへ突き刺さるようだった。
「……なんか視線が痛いんすけど」
やめて。本当にやめて。その期待に満ちた目を向けないで。俺には何も無いの。何もしてないの。そこら辺にいる村人Aなの。全部事故だから。
心の中で叫んでも、その声は誰にも届かない。
「英雄様ー!」
噂を聞きつけて来たのだろう。小さな男の子が駆け寄ってくる。
両手を目一杯伸ばし、目をきらきら輝かせていた。その無垢な瞳に俺を映さないで!
「握手してください! 握手!」
その後ろから女の子も来る。
「わたしも!」
「ぼくも!」
あっという間に子供達に囲まれた。小さな手が次々と俺の袖や裾を引っ張ってくる。
「え、ちょ、待っ……」
完全包囲である。子供達の熱気に押され、後ずさろうにも一歩も動けなかった。
「英雄様って強いの!?」
「魔王も倒せる!?」
「剣見せて!」
俺は木の棒を掲げた。何の変哲もない、道端に落ちていそうな一本の枝だった。
「俺の武器はこれ」
「……木?」
「え、棒?」
「棒だね」
気まずい空気が流れる。泣いていいですか? それとも自称女神に怒り狂っていいですか?
あ。輝いていた子供達の瞳から光が失われていってる! 俺も気まずい。非常に気まずい。いたたまれない!
隊長が咳払いを一つした。喉の奥から絞り出すような重々しい音だった。
「英雄とは、武器で強さを示す者ではない」
子供達が真剣な顔になる。さっきまでの無邪気さが神妙な表情へと切り替わった。
「じゃあ何で示すのー?」
隊長は俺を見て、力強く言い放つ。その眼差しには、揺るぎない確信が宿っていた。
「心だ……!」
「おぉー!!」
子供達が拍手する。小さな手の平が打ち鳴らす音が次々と重なっていく。
「違う違う違う! 俺にそんな大層な心なんてないし!?」
俺は全力で否定した。
「棒だから! 本当に棒しか持ってないから!」
「さすがだ……」
隊長は静かに頷く。その目には、感動にも似た光さえ浮かんでいた。
「武器すら必要としない境地」
「必要なんだよ、ちくしょうがぁぁぁ!! 殴るよ? そろそろあんた殴るよ!?」
俺の叫びが王都の夕空へ虚しく響き渡った。
空の色だけが、その叫びを静かに受け止めていた。
こうして俺は、異世界に来た初日。あまり時間が経たないうちにーー
『木の棒一本で王女を救った英雄』
という、とんでもなく盛られた噂と共に王都デビューを果たしてしまったのだった。




