第98話 魔王と忍び寄る魔の手
シャクレンが広範囲に赤いオーラを広げ、そのオーラにガイアスも飲み込まれる。
「こんな量のオーラを発するとは…勘弁願いたいでござるな…。」
そして、不気味な能面のようにシャクレンが笑うと、その莫大なオーラを凝縮して刀に纏わせた。
オーラによって真っ赤になった刀身は、オーラを喰らって強化されているように感じる。
「妖刀 神斬は儂のオーラと刀気を喰らってその斬れ味が増すんじゃ。その斬れ味は神ですら防ぐ事はできん。儂の悪の力…『神斬』はこうして生まれたのじゃ…。」
「そうで…ござるか…。剣の極致に辿り着けると思ったのも束の間でしたな…。どうやら拙者はここまでのようでござる…。」
「ふむ。潔し!」
そして、シャクレンがガイアス目掛けて刀を振り下ろす。それをガイアスは魔剣で受けようとしたが、魔剣は妖刀によって紙のように切られ、その凶刃はガイアスの命を喰らうため身体を切裂いていく。
致命傷を受けたガイアスは、地面にうつ伏せに倒れ込んでしまう。
それでも息のあるガイアスに、とどめを刺すためにシャクレンは刀で突き刺す構えをとった。
「紙を切るように神を斬る。ようできた悪の力じゃ。じゃあな、魔剣の兄さん。」
「最後に…拙者の命を懸けた一閃は…届いたようでござるな…。」
地面からシャクレンを睨むように見上げたガイアスは、そう言うと意識を失ってしまう。
シャクレンがその言葉の意味を理解すると同時に、胸部に十字の切り傷が刻まれ、血が噴き出る。
「ぐっ!?なんじゃと!?倒れ際に斬られておったのか!?」
その様子を、路地を曲がってきた女性が目撃し、『キャーーー!!』と大きな悲鳴を上げる。
「もう良い!じいさん!人が来た!面倒事になる前に行くよ!」
「仕方ないか…!しかし、中々の剣士であったな。生き残れれば、また相手してやってもよいぞ。」
そして、シャクレンとシュシュは、誰にも目撃される事なく姿をくらますのであった。
――ガイアスが全てを語り終えると、またしても現れた強大な敵に、ラヴィとルルは言葉が出てこなかった。
「拙者がなんとかできれば良かったでござるが…。あのシャクレンという老人は毛の先程も本気を出していなかったでござる。底など…全く見えなかったでござるよ…。
一緒に居たシュシュという女の子も同様の強さを持っていると感じたでござるな…。」
「何を言っている!生き残って私達に情報を与えてくれただけでも十分だ!これで対策を立てる事ができる!」
「そうですよ!後は私達に任せてガイアスさんは傷を治して下さい!」
「ぐほほwルル殿の治癒魔法で元気元気ですぞ!股間の魔剣も喜んでいるようでござるよw」
「その顔でいつものセクハラ…やめて下さい…。ギャップがエグ過ぎて反吐が出ます…。」
「そうでござるな…。いつもの男前に戻れるようにまた食って食って食いまくるでござる!」
「はぁ…魔剣王は自分の価値を全然理解できていないのだな。せっかくルルが惚れかけていたというのに…。」
「な…!なんですと…!」
「惚れかけてない!というか!ラヴィちゃん!急いでアヤネ達にこの事を知らせないと!」
「そうだな!魔剣王よ!改めて感謝するぞ!」
「不甲斐ない拙者で申し訳ない!回復したらすぐに駆けつけますからな!では後は任せましたぞ!」
そして、ガイアスから光の塊が現れてラヴィの宝玉に吸い込まれる。
【善の力を手に入れました。 種類は託願。】
ラヴィはガイアスから託された願いをしっかりと受け止める。
「あぁ!勇者に任せろ!」
最後にそう答えると、ラヴィとルルは、ガイアスからの話を聞いて、人の目がある所では目立った行動を敵はしてこないと判断し、ガイアスを病院に置いたままにするのであった。
――一方その頃、アルマの元にも四大魔王の魔の手が忍び寄ろうとしていた。
晴れてペルソナ・アルクスのオーナーになったアルマは調子に乗りに乗りまくっていた。
「フハハハ!我が配下達よ!今日も汗水垂らして働くが良い!」
苦笑いをするホスト達の前で、高笑いを上げるアルマを遠目から見ながら、蘭と白石が話をしている。
「まさかアルマっちがオーナーになるなんて思ってもみなかったよ…。」
「もっと反対の声が上がると思っていたのですが…。」
「まさかの一瞬でNo.1になって実力で黙らされる事になるとはね…。」
「2人の姫のおかげですかね。」
「ノンノちゃんとユウナちゃんだよね。ユウナちゃんは一撃の会計が凄いし、ノンノちゃんに至っては毎日のレベルで来店するんだもん。
やっと僕がNo.1になれると思ってたのに参っちゃうよね…。」
チートのような方法とはいえ、オーナーでありながらNo.1という座についたアルマに、今では誰も文句を言えないでいたのだ。
「まぁそれだけじゃないけどね!アルマっちは人を惹きつける才能を持ってるからみんなついていってるんだと思うよ!あのカリスマ性は瑠偉さんより凄いんじゃないかな。」
「そうですね…さすが魔王です…。」
そして、お店がオープンすると、たくさんの姫が来店する。その中にはアルマのエースであるノンノとユウナの姿があった。
いつも通りアルマがまず先にユウナを接客していると、白石がやって来て、アルマ指名の新規の姫がやって来た事を伝える。
「アルマさん!新規の方なのにアルマさんを指名するっていう変わった姫が来店しましたよ!」
「貴様…それは我というよりその女に失礼だろうが…。まぁよい!やはり我の時代がやって来たのだ!フハハハ!」
「またアルマは調子に乗ってるよ…。」
「どうした?ユウナよ。嫉妬しているのか?」
「してない!ノンノさん以外は眼中にないから!」
「ククク…。モテる魔王は辛いな…。して!白石よ!どんな見た目の姫なのだ!?」
「えっと…30代ぐらいの紫色の綺麗なロングヘアーで、気品があって、凄く美人な姫ですよ。
な…なにより…ボインです…。ダイナマイトボディという言葉は、彼女のために作られたのではないかと思う程のスタイルです!」
「うほっ!それは早く行かねばなるまい!」
「バカアルマっ!」
そして、ユウナに尻を蹴られながらアルマはその初指名の姫の席へと向かうのだった。
赤いドレスを着たその姫が、これから起こる波乱のきっかけになるとは知らずに…。




