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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第六章 新しい日々の始まりと神官編
85/116

第85話 勇者と束の間の平穏 その3

 大広間の隅っこで黙々とご飯を食べている浴衣姿のアルマを見ていると、ラヴィは何とも言えない気持ちになってきた。


「なんか…あれだな…。見てはいけないものを見てしまった気分だな…。これだけ楽しい場所なのに、あそこだけどんよりしているというか…。」


「あいつ友達少ないのか…。うちらの中に入れてやったらどうだ…?」


 普段明るい人の暗いプライベートな部分を見てしまった気分になり、全員が同情しているとレナがアルマの元へと駆けていった。


「ニャー!アルマ!何してんの!?」


「ぬお!猫娘か!?貴様こそ何故こんな所に!?」


 アルマがレナの声で驚きながら振り向くと、レナの奥からラヴィ達も向かってきているところだった。


「おい、クサレ魔王。ここで何をしている?」


「何をだと!?当然身体を癒しに決まっているだろうが!」


「あ!ラヴィさんですよね?お久しぶりです!」


 ラヴィとは一度店で会った事があったので、白石が気さくに挨拶をする。


「久しぶりだな!ムッツリエロメガネ!お前が持ってきたコカボムの恨みは忘れてないからな!」


「ニャ?この人ムッツリでエロいの?真面目に見えてやる事やってるタイプなんだね!ニャハハ!」


「もう…なんでアルマさんの周りはこんな人達しか居ないんだ…。」


 出鼻を挫かれた白石は疲れ切った顔で天井を見上げようとしたが、その途中でラヴィの後ろに居たシルヴィアが目に映る。


(え…誰…この美しい人は…。こんな絵画から出てきたような人…見た事ない…。)


 ぼーっと白石がシルヴィアを眺めていると、それに気付いたシルヴィアが汚物を見るかのような表情になる。


「な…何?ジーっと私を見つめて…。やっぱりアルマの連れには変態しかいないの?」


「え…!?いや!そんなつもりはないです!美しい人だなって思いまして!」


「あら?そう?良く分かってるじゃない。ムッツリエロの名は伊達じゃないみたいね。褒めて遣わすわ!」


「あ…あはは…。(なんで上からなんだろ…。)」


 白石イジりが続く中で、アルマが割って入るようにラヴィに質問をする。注目されている白石にちょっと妬いたのだろう。


「貴様ら!さっきから我らをバカにするような態度を取りおって!何がしたいのだ!?」


「ん?アルマが寂しそうに飯を食ってるのを見てな。アヤネが仲間に入れてやったらどうだと提案したんだ。」


「え?我らを…そっちに入れてくれる…のか…?」


 予想外のラヴィの返答に、アルマは嬉しさを隠しきれずに少しニヤける。


「お!出た出た!そのリアクション!本当にお前は魔王のくせにうぶだな!」


「う…!うるさいわ!まぁ良いだろう!どうしてもと言うなら一緒に行動してやっても良いぞ!」


「はいはい!分かったから入りたいなら来いよ。うちらはもう腹ペコで死にそうなんだ。」


 ツンツンしたアルマの態度に、アヤネはそう言うと自分達の夕飯が用意された席へと向かっていく。

 その後ろをラヴィ達もついていき、アルマの席に誰も居なくなると、白石が慌てて小声でアルマに声を掛ける。


「アルマさん!本当に良いの?あんな可愛い人達の中に入っていって…。」


「なんだ?興奮が抑えきれんか?我に任せておけばよい。奴らなど手のひらで転がしてみせるわ!フハハハ!」


「いや…逆に思いっ切り転がされてたじゃん…。」


 そして、アルマと白石が自分達の御膳をラヴィ達の席へと持っていくと、そこからは宴会が始まるのであった。


「全員お酒は持ったか!?では!みんなの協力のおかげでこの世界の平和は守られた!だが…死んでいった者達がいるのもまた事実…。ヤオ様…瑠偉…黒マッシュ高柳…。」


「あ…高柳さんは元気にしてるみたいだよ。ネネさんが復活した時にどさくさに紛れて生き返ったみたい。今は元気に推し活してるみたいだよ。」


 みんなが死んでいたと思っていた黒マッシュ高柳について、ルルから補足が入る。


「そうなのか!あいつはムカつくから今度みんなでしばこうな!

それでは!これからもみんなで仲良く楽しく過ごせていけるように!乾杯!!」


「「かんぱーーーい!!」」


 ラヴィの乾杯の音頭で全員が笑顔で乾杯をする。力を合わせてあれだけの激戦と修羅場を乗り越えたからこその笑顔である。

 そして、そのまま目の前の美味しそうな日本料理をみんなが堪能していると、あまり会話に入ってこないアルマにラヴィが話し掛ける。


「なんだ?借りてきた猫みたいになって。緊張してるのか?」


「しているわけないだろう!我は静かにこの素晴らしい料理に舌鼓を打っているのだ!」


「ふーん…。あ!」


「なんだ?」


「ここの会計、奢れよ。」


「は?何を言っているのだ?」


「いやだから、私達のここの宿泊費とかも全部奢れよ。」


「なんで我が貴様らに奢らなければならないのだ!」


「は!?これだけの美人と酒飲んで飯食ってってできてるんだから当たり前だろう!

それにお前はもう立派な経営者じゃないのか!?こういう所で女子を喜ばす事もできないなんて!ホスト失格だろう!なぁ!?白石!」


「僕に話を振らないで下さいよ!ちょっと!アルマさん!どうするんですか!?この人達結構良いプランで泊まりに来てますよ!」


 とんでもない事を言い出したラヴィを前に、自分に泣きついてきた白石の頭をアルマは優しく撫でる。


「大丈夫だ。白石よ。我に任せよ。」


「アルマさん…。」


 半泣きの白石の横でアルマが堂々と立ち上がると、ラヴィに宣戦布告を始める。


「良かろう!勝負をして我に勝てば貴様らの料金!我が払ってやろうではないか!」


 大声でそう言ったアルマだったが、その声が虚しく大広間に響いただけで誰もリアクションをしなかった。

 少し間を置いて、どり〜むは〜とのみんながボソボソと呟き始める。


「ニャ〜。そんな事言わずに男らしく奢ってくれたら格好良かったのに…。」


「そうね。エルフならプライドを優先して無理してでも奢ったわ。」


「別にさ。うちらも本気で奢ってもらおうなんて思ってないんだから虚勢でも張ってりゃ丸く収まったのにな。」


「ちょ…ちょっと!三人共言い過ぎだよ…!アルマさんプルプル震えてきてるでしょ!」


 ルルの言う通り、アヤネ達の言葉でズタズタにされたアルマは、小刻みに震えながら目に涙が溜まっているようだった。


「き…き…貴様らは…なんで…そこまで厳しいのだ…。たまには…我に優しくしてくれたって…良いだろう…。」


(うわぁ〜。さっきまで勢い凄かったのに、アルマさんガチ泣きしちゃってるよ…。)


 アルマの男泣きに白石が少し心配していると、さすがに悪いと思ったのか、ラヴィが一応仲裁に入る。


「す…すまんなアルマ…。まさかここまでお前がボコボコにされるとは思っていなかった…。奢れとかは冗談だからな!気にするなよ!

ほら!グラスが空いているではないか!私が酌をしてやろう!」


「勝…し…ろ…。」


「え?何か言ったか?」


「勝負するのだ!もう!それしか我の心を治す手はないぞ!負けたら貴様らが我らの分を奢れ!」


 子供が駄々をこねるように振る舞うアルマに、罪悪感でいっぱいのラヴィは勝負を受けるしかなかった。


「よ…よし!良いだろう!勝負を受けてやる!みんな!良いよな!?」


 ラヴィがそうやってみんなに意見を求めるが、明らかに全員が乗り気ではないみたいだ。

 だが、そんな重苦しいを通り越して、押し潰されそうな空気を一変する声が聞こえてきた。ラヴィにとって、それは天からの救いのように感じた。


「おっ!なんじゃなんじゃ!盛り上がっておるのか!?」


 声の方をみんなが振り向くと、そこには満面の笑みの幼女セリーナと、無愛想な表情をしたイリスが立っていた。

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