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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第六章 新しい日々の始まりと神官編
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第82話 勇者、いざ温泉へ!

 セリーナとビルの屋上で話をした翌日、どり〜むは〜との営業終了後にラヴィを含めた異世界組が何やら話をしている。


「打ち上げってどうするの?」


 話を切り出しているのはルルのようだ。


「どっか近場で良いんじゃねーのか?そんなに店も閉めるなんてできねーし。」


「ニャ!この際だから遠出しようよ!」


 アヤネが軽く済ませようとする所に、レナが旅行に行く事を提案する。


「まぁ一泊二日ぐらいならどうにかなりそうよね。私は別に良いよ。」


「じゃあ余裕を持って3日ぐらいはお店を閉めなきゃダメなんだよね…。大丈夫かな…?」


 シルヴィアは旅行肯定派で、ルルはお店を長めに休む事を心配しているようだ。

 この2対2の状況で、偶然にも決定権を持つのがラヴィとなってしまった。

 すると、自然と全員の注目がラヴィに集まってしまう。


「ん?なんだ?みんなして私を見て…。そんなに私は可愛いか?」


「ちげーよ!話聞いてたか!?打ち上げを近場でするか遠出するかで意見が割れてんだよ!後はお前の意見待ちなんだ!」


 天然なのか、狙っているのか分からないような返答をするラヴィに、アヤネがイラつきながら今の状況を説明した。


「う〜ん。私はみんなで行ければどちらでも良いんだが…。」


「レナは温泉に行ってみたいんだけどなー。」


「いや…レナは温泉なんか行ったら耳と尻尾が目立ち過ぎるだろ…。」


「ニャッ!?そうだった…。じゃあ無理かぁ〜。」


 レナが公共の場で風呂に入ると一発で怪しまれる事をアヤネが指摘すると、やはり遠出は無理な空気が流れ出す。

 しかし、そこでシルヴィアが思い出したかのようにある提案をみんなにする。


「そういえば万日前まんにちまえ大通りに、貸し切り露天風呂のある総合施設みたいなのがなかったっけ?」


「あ!そういえばあったね!『都会に旅館の癒しを!』って看板の!あそこならお泊りもできるし、すぐそこだから行き帰りに時間かかんないからお店も長く閉めなくて良いんじゃないかな?」


「おぉ!良いじゃん!そうしようぜ!」


「そこならレナも温泉に入れるんだよね!決定だ!」


 シルヴィアの案にルル達も乗り気になり、このまま決定かと思われたその時だった。ラヴィが悩みながらアホ発言をする。


「う〜む…。北海道という所にするか。海鮮が美味しいらしいぞ!ススキノって所は男のロマンが詰まっていると武夫が言っていた!」


「もうお前は黙ってろよ…。あと、武夫きめぇな…。」


「なんだと!?みんなが私に意見を求めたんだろ!武夫が夢の国だと言っていたおっパブという場所にみんなで行こうじゃないか!」


「もう行く所は決まったんだよ!おっパブなんか五右衛門町にあるから一人で行ってこい!」


「もう!また2人はケンカを始めようとする!やめなって!」


 ルルは胸ぐらを掴み合うラヴィとアヤネを止めるために割って入る。

 こうして、どうにかこうにかどり〜むは〜との打ち上げ先は決まるが、当然平和に終わる事無く、ドタバタと世間を騒がせる未来が見える。

 それはなぜか…。もう一つ違う場所で動きがあったからだ…。



――場所は変わって、ここは白石の家である。アルマが来てからというもの、毎日のように白石の発狂した叫びが近所に鳴り響いている。


「なんで!?なんで家の電気がつかないの!?アルマさん何かした!?」


「僕はしてません。」


「僕って言っちゃったよ!してんじゃん!しちゃったリアクションじゃん!本当の事言ってよ!」


「我はただ…玄関の上についているボックスが気になってイジっただけだ…。」


「はぁ!?ブレーカーとかのボックスの事!?」


「ブレイカー?なんだその格好良い名称は!何かを破壊するのか!?正に今現在あれを破壊してしまった我と一緒だな!フハハハハ!!」


「何笑ってんだよ!ブレーカーだよ!

あーあ…今の時間からじゃ修理とか頼めないし…お風呂も入れない…何もできない…。」


「白石よ!何事も簡単に物事を諦めるんじゃない!強く生きるのだ!」


「お前のせいだよ!」


 真っ暗な部屋の中、白石は無言で少し悩んだ後に、ある提案をアルマにする。


「これじゃ家に居ても仕方ないし、万日前にある銭湯に行く?宿泊もできるし、もう僕は疲れたから少しでも癒しが欲しいよ…。」


「む?よく分からんが白石が行くなら付き合ってやろう!」


「料金はアルマさん持ちだからね!奢れよ!」


「小さい男だな。ここは最近我が覚えたジャンケンで決めようじゃないか!」


「どっちがだよ…。良いよ!やってやるよ!魔王如きが『ジャンケン王』の異名を持つ僕に勝てると思うなよ!」


「ほー。まさか貴様も王を冠する者だったとは!白石のくせにやる気ではないか!かかってくるがよい!!」


「じゃあいくよ!ジャン…!!ケン…!」


「「ポンッ!!」」


 凄まじい熱量を持ったジャンケンは、たった一度で勝敗が決まってしまった。

 アルマはグーを出し、白石はチョキを出している。


「フハハハハ!どうやら我の勝ちのようだな!」


「ふふふ…。それはどうかな?僕の手をよく見るがいいよ!」


 白石の不敵な笑みにゾクリとしたアルマは、もう一度白石の出した手を確認する。


「なんなのだ!?それは!?人差し指と親指だけ開いてあとの指は閉じている!?普通のチョキは人差し指と中指では無いのか!?」


 魔王のくせに丁寧な状況説明をするアルマに、白石はニヤリと口角を上げて答える。


「これは無敵の手っていうのさ!!人差し指と親指はチョキを表し!握られた中指から小指はグーを表す!そして最後に手のひらの部分はパーを表しているんだ!

もう分かったかい!?これは相手がどんな手でこようがブチ倒す最強の手なのさ!!」


「なにぃぃぃぃ!!!!そんな姑息な手段を使うのか!?見損なったぞ!!!!」


「ふっ…。始めに『無敵の手は無しな』って言わなかった時点でアルマさんの負けは決まってたのさ…。」


「くそ…!これだから人間なんて信用ならんのだ…!」


 そこまでが終わった所で、玄関のドアを『ガンガンガンガン!!!』と叩く音がしたかと思うと、『うるせーーーぞっ!!』と隣のおじさんの怒鳴り声が聞こえてきた。


「じゃあ…行こうか…。怒られちゃった…。」


「うむ…。なんか…シュンってなったな…。」


 こうしてアルマと白石も万日前の総合施設である『アムーザビル』へと向かうのであった。


 奇しくもそれは、ラヴィ達が打ち上げを行う日と被ってしまっていたのである。

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