第77話 女神、世界を受け継ぐ
光の柱の中で、ヤオはセリーナに一つお願いをした。
「セリーナ。後もう少しだけ会話をしても良いかい?」
「あぁ、大丈夫じゃ。」
「ありがとう…。ねぇ!ミユミユ!」
突然名前を呼ばれたミユミユは、涙を拭いながら光の柱に近付いていく。
「ミユミユ…君にはもう一度ちゃんと謝らせておくれ。」
「もう…いいよ…。今までの事があったから大切な事にも気付かせてもらえた。理由はどうあれこっちの世界に連れて来てくれたのもあなただ。それはあたしも感謝している。」
「そうかい…。今からね、この一本橋であった15年前の事件と、今回の事件に関しての人々の記憶を改ざんする。君やみんなが悪くならないようにね。」
「えっ!?」
「これが僕にできる最後のケジメだ。全ての元凶である僕が言うのもなんだけど…みんな…健やかにね…。」
言いたい事を伝えたヤオは、世界の修復と記憶の改ざんを遂行するために、命を使って最終段階に入ろうとする。
そこに、ネネを先頭にこの場に居た全員がヤオの前に顔を揃えた。
「あなたのせいではありません!それは…悪に染まってしまったヤオ様がした事かもしれません…!でも!私達はあなたに心の底から感謝しています!善のヤオ様が私達のためにしてくれた事…忘れませんから!」
「ネネ…。」
ネネの周りでは、激闘を繰り広げたはずのラヴィ達も、ヤオを見送るために笑顔を作っている。
そんな中、アルマが一歩前に出てヤオに尋ねる。
「おい、瑠偉はどうなった?復活したのか?」
「瑠偉はどうなったか分からないな…。力を僕が無理矢理奪い取って消滅したから…。
もし、復活していてもここには来ないだろうしね。」
「そうか…。」
「でも、彼の最期が悪くなかったっていうのは分かるよ。恐怖の力を手にした時、彼の強い想いが伝わったからさ。
孤独な魔王を救ってくれてありがとうね。アルマ君。」
「ふん!もうよいわ!」
そして、ヤオはみんなへの最後の挨拶を済ませると、セリーナと目を合わせる。
「おまたせ。じゃあ…後はよろしく頼むね。これから1番大変なのはセリーナだから…。」
「本当じゃぞ。まぁ親友の頼みじゃ。安心していくがよい。」
「〝神官〟がやって来ると思うけど…気を付けてね。」
「あやつらは真面目過ぎて面倒臭いからの〜。まぁなんとかなるじゃろ!」
「僕からは言いにくかった事…ラヴィちゃんとアルマ君に上手いこと伝えるんだよ。」
「ぐぬぬ…それが一番の問題じゃ…。」
「じゃあ…。」
ヤオはセリーナに全てを託すと、光の柱を一回り大きくさせる。
より一層輝きを増した光の中で、セリーナは親友の最期に涙を流しながら、ヤオの額に優しく口づけをする。
「先にいって…また会える日を待っておれ…。」
「うん…大好きだったよ…セリーナ。」
ヤオは光と同化すると、天を衝く巨大な柱の流れに乗って消えていく。
すると、ヤオの声が街全体に響き渡る。
『僕の創造したこの世界の権利を、女神セリーナへと譲渡する。』
その声と共に、セリーナへと光が集まり、周囲の破壊された建物なども元に戻っていく。
神々しい光を纏ったセリーナの姿は、幼女から女神の姿へと変わる。
「ヤオ…。確かにお主の世界と想いは受け継いだぞ。」
そして、眩しいほどの光が全て消えると、そこに立っているセリーナの姿を見て、ラヴィとアルマ以外の全員がその美しさに息を呑む。
「え…セリーナ様っすか…?」
みんなを代表してアヤネが質問をした。
「そうじゃ。どうした?わしが美しすぎてどう接してよいか分からんのか?今まで通りで構わんぞ!」
「いや…まぁ…はい…。すげぇっす…。」
アヤネは、どう答えて良いか分からず、『地元に帰ったらあんまり絡みたくない先輩に会ってしまった』時みたいなリアクションしか出来なかった。
「ふん…どこが美しいのだ。ただの暴力女神だぞ。」
「あ?アルマ…今何か言ったのか?」
「いえ…何も言っておりません…。変わらずお美しい姿だなと…言ったんです…。」
「セリーナ様!これからどうするのですか?」
ラヴィの質問に、セリーナは大きな杖を召喚して構えながら答える。
「まずは時空分離を解除する!その後は、全員どり〜むは〜とに集まるのじゃ!四天王と呼ばれておった者達も含めて全員じゃ!」
「分かりました!」
そして、セリーナは杖を地面に強く叩きつける。すると、そこから幾重もの光の円が、波紋のようになって街全体へと広がっていく。
その光の円が触れると、色が失われたようになっていた街は、時が動き出したかのように活気が戻っていく。
しばらくすると、街の周囲のザワザワとした喧騒が聞こえてきた。
「よし!完了じゃ!わしは人々に見られるとマズイので一度姿を消すぞ!
ではまた後でな!」
セリーナはそう言い残すと一瞬で消えてしまった。
そこで、みんなを取り仕切るようにラヴィがみんなに指示を出す。
「では行こうか!人々の記憶がどう改ざんされたのかまだ分からないし、そんな中、私達がみんなで固まっている所を見られると説明がつかないしな!
しかし…四天王をどうするかだが…。」
「あたしにまかせろよ。あいつらもあたしの言う事ならまだ聞いてくれるだろ。すぐに連れて行くよ。」
ヨルカ達をどうするかについてはミユミユが率先して手を挙げる。
「じゃあ頼んだ!」
「あっ!ラヴィちゃん!どり〜むは〜とには逃げ遅れた人達がいるんだけど…。」
「そうだったか…。」
「じゃあ、それなら私とルルちゃんが先に店に行って、残された人達を帰しておくから、機を見計らって入ってきなさい!」
ネネはそう言うと、ルルと一緒に急いで店の方へと駆けていく。
「では!改めて私達も向かおうか!」
そう言って、ラヴィ達はネネから10分程遅れて出発するのであった。
すると、少し離れたビルの屋上に、その様子を一部始終眺めていた白スーツの男の姿が見える。
「全部終わっちゃったんだね。ヤオ様…良い終わり方だったのではないでしょうか…。
まぁでも!ヤオ様もこんな僕まで復活させるなんてね!
さて!僕は死んだ事になってるし!アルマちゃんみたいな魔王に近付けるように旅でもしようかな!」
男はそう言うと、自由になれた解放感からか、楽しそうに街の中へと消えていくのであった。
――そして30分後、どり〜むは〜との店内には、今回の事件に関係した異世界から来た者達が勢揃いしている。
戦いのすぐ後だからか、どこかまだ重苦しい空気が漂う中に、幼女姿のセリーナが店の扉を開けて入ってきた。




