第76話 勇者と英雄の行方
「本当に…ごめんね…。ネネとミユミユには本当に一番迷惑をかけたね…。」
「………。」
ヤオの謝罪の言葉に、ミユミユは無言で下を俯く。そんな中、アヤネは先程の質問の答えを得るために必死で訴える。
「ヤオ様!前置きは良い!ママはどうなるんですか!?このまま死んじゃうんですか!?」
今にもヤオに飛びつきそうな勢いのアヤネの後ろで、無言でその答えを求めるどり〜むは〜との面々がいる。
そのみんなの顔をヤオは一瞥すると、またゆっくりとした口調で続きを話し始めた。
「いくら時空分離された世界とはいえ…死んだ人間を蘇らせるのは簡単な事じゃないんだ…。」
「え…?じゃあ…ママは…。」
期待していた分、ヤオの答えにアヤネを始めとしたどり〜むは〜とのメンバーは大きく肩を落とす。
その横では、ミユミユも拳を強く握りしめて唇を噛んでいる。
「でもね…。ちゃんと準備をしていればそれも不可能じゃない。」
「準備?」
「たぶん、予定通りであればノンノの腐敗の力でネネの身体は傷まないようになっているはずだけど…。どうかな?」
ヤオのその質問は、シルバとエンジュに向けられているようだった。
「ヤオ様!大丈夫だ!計画の一部として聞いていた通り、ノンノに頼んでネネの身体は綺麗なままだ!」
「まさか本当にネネが死んじゃう事態になるなんて思ってなかったけど〜、ネネとヤオ様が話していた計画通りにしましたよ〜。
ここまで先読みしていたなんて驚きですけど〜。」
「ノンノ!頑張りました!一応黒マッシュ高柳にも腐敗の力を使用しましたよ!」
「そうかい…。それなら良かったよ…。人を諦めた僕が…最後の最後で人を信じて良かったよ…。」
「どういう事なんですか!?ヤオ様!?結局ママは…!!」
アヤネが喋っている途中で、みんなはある気配が近付いてくる事に気付く。
それは晩餐会の会場があった方から近付いてくるようだった。その気配は懐かしくも暖かく、この場に居るほとんどの者がその暖かさに救われた記憶があり、自然と涙がこぼれてしまう。
そして、全員がその気配の方へと目をやると、そこにはボロボロになってはいるが、気品や美しさが損なわれていないクラシカルなメイド服を着た女性が歩いてきている。
キラキラと舞い降る光の粒を身に纏っているようなその姿は、まるで戰場の女神に見えた。
その女性を見るや否や、ラヴィを含むどり〜むは〜とのメンバーは、涙を流しながら女性の所へと駆け寄って行く。
「「うわぁ~〜〜〜んっ!!!」」
全員が大泣きしながらその女性に飛びつくと、女性は困ったように頬をかきながら笑顔を作った。
「あらあら〜!みんなどうしたの?子供みたいに泣いちゃって!」
「だって〜!ネネ…ネネが〜!」
「良かったよ!良かったよママ!また会えた〜!」
「ニャー!ネネの匂いだー!」
「ネネさん…!私はもう…一生会えないかと〜!」
「ネネさん…ネネさん…!あなたが戻ってくれて本当に良かった…!」
そして、泣きじゃくるみんなをネネは大きく大きく抱きしめる。
「心配かけちゃったみたいでごめんなさいね…。今はこうしているけれど、私は本当にどうなるのか最後まで分からなかったから全部話せなかったの…。辛い思いをさせてごめんなさいね…。
でも!みんな頑張ってくれたみたいね!さすが私の可愛い子達ね!
本当に…ありがとう…。」
「「うわぁ〜〜〜〜んっ!!!」」
ネネが抱きしめながら優しく語るその言葉で、みんなは余計に涙が止まらなくなった。
「話したい事はいっぱいあると思うけど、少し待っててね。」
ネネはそれぞれの頭を撫でると、倒れているヤオの元へと歩き始めた。
途中、静かに涙を流しながら笑っているシルバとエンジュの間を通る。
「ネネ!良かったな!全部終わったぞ!」
「お疲れ様ね〜ネネ!またゆっくり話そうね〜!」
「シルバ…エンジュ…。長い間本当にありがとう。あなた達が居てくれたからここまで来れたのよ!エンジュが言うように、今までの事…ゆっくり話しましょう。」
「ガハハ!そうだな!じゃあ…ヤオ様が待ってるぞ…。」
そして、軽く言葉を交わすと、シルバとエンジュは道を譲るように体を避けた。
ネネがそのまま歩いていると、下を俯いたままのミユミユの姿が目に映る。
その姿を見たネネはゆっくり微笑むと、ミユミユの目の前へと歩み寄った。
「ネ…ネネ…。」
「ミユミユ…。」
すると、ずっと我慢していたのか、ネネの声を間近で聞いたミユミユは、涙腺が決壊したかのように大粒の涙を流しながらネネに抱きついた。
「ネネ!ネネ!ごめんね!ごめんね!あたしは!何も知らずに…!」
ネネの胸の中でわんわん泣きながら謝るミユミユを、ネネは優しく強く抱きしめる。
「なんで謝るのよ…。15年前に、あなたに消えない傷をつけてしまったのは私なんだから…。
今回の事も…またあなたに1番辛い思いをさせてしまった…。
本当に…本当にごめんね…。」
「もう…いいんだ…!ネネが生きててくれたなら…!」
「後ね…。ありかとうね…。詳しい事は分からないけれど…状況を見るかぎり…きっとみんなの力になってくれたんだよね?」
「…うん…。遅かったかもしれないけど…。」
「遅い事なんてないから。」
「あたしは…やり直せるかな…?」
「もちろん!私やシルバ達もやり直していかなければならないの。だからこの先も一緒に生きていこうね。」
「うん…!うん…!」
そして、ネネはミユミユの頭をラヴィ達と同じ様に優しく撫でてから離れると、また歩き出してヤオの所へと辿り着いた。
「ヤオ様…。」
「はぁ…。良かったよ…。君がこうして戻ってきてくれて…。」
「全部…無事終わったのですね。」
「みんなが最後まで諦めなかったからね。僕も見習わなくちゃ駄目だ…。」
「では…。今から…?」
「うん。お別れだね…。準備は良いかい?セリーナ。」
「あぁ…。わしはいつでも良いぞ…。」
会話が終わると、ヤオの両手をセリーナがギュッと握りしめる。
すると、この世のものとは思えない程の光量を伴った光が二人を包み込んだ。
だが、燦然と輝いているはずのその光は、何故か見る者に儚さを思わせるのであった。




