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メイド勇者とホスト魔王  作者: わったん
第七章 四大魔王 襲来編
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第106話 魔王候補と超越者

 イリスがシルヴィアとルルを連れて御神木を目指し、ネネ達がエンジュの加護を受けて再度レイヴァンに挑んでいる頃、ローゼンがアルマの元から隠れ家へと戻ってきた。


「ただいまー。って…まだ神の印の解除できないの?これのせいであのアルマってのに舐めた態度取られたんだけど!」


「そうなんだねー。まぁ後一歩ってとこかな!」


「じゃあ早く解除しなさいよ!」


「まぁーまぁー!そんな慌てないでよ。今解除なんてしたら、ベルゼに勘付かれて面倒臭い事になるよ。あいつは、この件が片付いたらあたし達を消すつもりだろうしね。」


「私達を消すですって?あはは!笑わせるわね!誰がそんな事をできるって……。まさか…。」


「気付いた?ベルゼは流浪の勇者ヴァーニー・アンバーナイトを送ってくるはずさ。これは確定的な未来の話だよ。」


「私達 四大魔王を捕縛したヴァーニー…。1番ぶっ殺したい相手ね…。」


「ヴァーニーなら神の印で抑えられている状態のあたし達を殺せるって思ってるんだろうね。だから、タイミングを見て上手い事解除しないと!」


「あの時は遅れをとったけど、今回はそんな事させないわ!」


「というわけで!息抜きがてらに、ちょっとあたしは行く所があるから待っててね!」


 シュシュはそう言うと、魔法陣を描いてどこかへ転移していった。


「あ!待ちなさいよ!もう!あの子は自由なんだから!」


 シュシュの行動に呆れた様子を見せるローゼンの横で、シャクレンが大きく体を伸ばし、欠伸をしながら目を覚ます。


「ふぁ〜〜。なんじゃ?騒がしいの〜。ゆっくり寝る事もできんわい。」


「シュシュが用事があるかなんかでどっかに行っちゃったのよ。」


「そうかそうか。それはたぶんあそこじゃの。さっきヴァーニー対策について話しておった時にチラッと言うておったわ。」


「それはどこなの?」


「この世界を創ったヤオという神が、他の世界から連れてきた魔王候補と呼ばれる者達の所じゃろ。」


「そんな奴らが居たって何の役にも立たないじゃない。足手まといよ。」


 シャクレンが、眠気覚ましに刀を抜いて手入れを始めながら語り出す。


「シュシュがそいつらに何かを感じたと言うなら、それはこの先に関係した重要な事なんじゃろ。

なんせあいつの眼は特殊な魔眼じゃからの。元々全ての事象を『観察』するのが趣味じゃったみたいじゃが、その力はとどまること無く成長を続け、その眼は全てを見透かし、果てには未来予知のような力まで手に入れた。

その力を使い、神の全てを分析、解析して殺し、『観察』は『神殺かんさつ』の力に変わった。

ってシュシュが昔話をする時に話しておったの。」


「人間でありながら神の座に手が届いたから超越者って呼ばれてるらしいけど、能力的には強く感じないわね。」


「儂は神を斬ったが、シュシュは斬れんかった。何もかも見切られてしまっての。

そんな中で敵の弱点を素早く見つけてそこをつついてきおる。嫌気が差して儂から勝負を投げ出したわい。」


「ふ〜ん。あなたがそう言うぐらいなら強いのね。あー!それにしても暇ね!レイヴァンも居ないし!私はどこかでワインでも盗ってくるわ!」


「ほいほい。いってらっしゃい。」


 そして、ローゼンは夜の街へと出ていき、刀の手入れが終わったシャクレンは、静かになった部屋でまた横になって眠り始めた。


 その頃、ヨルカ達が封じられているセリーナのマンションの屋上にシュシュが現れる。


「ふむふむ。やっぱり結界が張られているみたいだね。こんな結界も破れないなんて…ちょっと期待外れかもしれないなー。」


 そう言うとシュシュは張られた結界に手を添えると、魔眼を発動し、結界の文字配列を読み解いて簡単に結界に穴をあける。

 すると、部屋でピザを食べていたヨルカ達が、シュシュが結界を壊した気配を感じ取る。


「ん?変な反応があったアル。あの女神の帰り方とは異なるアルね。」


「誰であれ、わちきのピザの時間を邪魔するお人は許さないでありんす。」


「モグモグ…じゃあ!モグモグ…僕が見てこようか!?」


「ハルは食べ方が本当に汚いアル。」


 ヨルカ達が異様な気配を感じ取ってすぐに、ベランダの引き戸を開けてシュシュが入ってきた。


「お邪魔しますねー!どうも!初めまして!あたしはシュシュって言います!間違えてたらごめんなさいだけど、あなた達がヤオが連れてきた魔王候補の人達ですかー?」


 丁寧にお辞儀をしながらシュシュは自己紹介を済ませただけだが、シュシュの漏れ出ているオーラに、無意識にヨルカ達は食べていたピザを放り投げて臨戦態勢に入っていた。


「お前…何者アルか…?人…いや…神のような気配も感じるアル。でも感じるのは悪の力…。」


「あ!ごめんね!結界を破壊するのにちょっと力使っちゃったからオーラが漏れてたかな?

でも、こんなのでそこまでビビられると気を遣うなー。」


「僕がビビってるだって!?どの口が言ってんの!?」


 シュシュの挑発に簡単に乗ってしまったハルは、彼女を殴るために前に飛び出したが、狂気の力を取り上げられているので、楽に拳を受けられてしまう。


「え〜…。弱過ぎないかい?本当に魔王候補だったの?ガッカリだな〜。」


「お…ま…えーーっ!!調子に乗るなーーっ!!」


 ハルがシュシュに握られた拳をなんとか引き離そうとするが、どれだけ力を込めてもビクともしない。

 どうしようも無くなったハルは、その状態でシュシュに対して蹴りや、残された手で攻撃を仕掛けるが、シュシュはそれを見もせずに躱している。


「あー!もう!話をしたいのに邪魔だな!少し寝ててよ!」


 暴れるハルにイライラしたシュシュが、魔眼でハルを睨みつける。すると、ハルは何か衝撃のようなものを食らったかと思うと、その場で崩れ落ちてしまった。


「大人しくなったね!じゃあ、まだ賢くて冷静そうな2人に話をするね!

あたしは四大魔王の一角をやらせてもらってるんだけど、色々あってこの世界の善の力を持つ異世界人を殺しに来たんだ!君達も腐っても魔王ならあたし達に協力しない?

まぁでも…予想より遥かに弱いみたいだし、どっちでも良くなったけどね。」


「お前…ムカつくアルな。」


 圧倒的な魔王としての力と格の差を見せつけられたヨルカ達だったが、この問題児達が一筋縄ではいかない事を、シュシュはまだ知らない。

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