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SCHEMER〈スキーマー〉  作者: 霧雨ウルフ
第二部 アルトネア制圧戦
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リューリク峠


 皇国の枢機卿が統括しファルツォーネ将軍が先導する連合軍は、アルトネア本土へ踏み入るために進軍を開始した。連合軍は、両国の間に横たわる自然国境コルチャーク山脈をリューリク峠経由で越境するという、最も堅実な行軍ルートで雪山越えに臨むことになった。

 コルチャーク山脈は、ハルゲニー山脈ほど標高が高くない。切り立った山嶺を縫うように何本もの峠道が張り巡らされている。

 しかし、幾つかの山道が開かれているとは言っても、吹雪と雪崩が絶えぬこの真冬に山脈を越えるとあれば、リューリク峠を行軍ルートに選ぶのが賢明であり、常識的な指揮官なら妥当な判断だった。

 連合軍は、特に問題もなく進み続けた。皇国領地の乾いた平地を抜け、コルチャーク山脈の山裾に差し掛かると、蟻の大群よろしく縦列に長く展開する。大軍を率いる先導役のファルツォーネが山脈の切り通し部分に到達したのは、早朝の出発から既に数時間が経過した頃で、既に日も暮れていたため本格的に山道に入る前に幕営となった。

「予定通りの行軍速度とはいえ、冬は日も短く寒さも厳しい。つらい道程になるだろうな」

 テントの設営中に、たまたまテイデと鉢合わせたベズレーは、鼻を啜る幼馴染みに支給品のウシャンカ(毛皮のファー付きの帽子)を投げて寄越した。「大尉みたいに優しくなくて悪かったな。俺は自分の外套を貸してやるほど親切じゃない」

 大尉の話を振られ、赤面しながら言い返すテイデを軽くいなし、彼は風の音がごうごうとこだまする雪山の方を見遣った。宵闇と雪の影響で山稜の輪郭は確認できないが、コルチャーク山脈は圧倒的な存在感と威圧感を放ち軍団の前に立ちはだかっている。

 ベズレーは眉根に皺を寄せた。

「明日は峠道に入る。数日間歩き通しなのは確実だ。しかも、いよいよ敵国との接触が現実味を帯びてきた。逃げ出せるもんなら逃げ出したいぜ、どこかの軍曹みたいにな」

「上官を悪く言うのはやめなよ」

 テイデはすかさず抗議した。ライグ・ダンバーが直属の上官だったわけではないが、オリンダ大尉に次いで兵士たちに慕われていた人だということは知っている。

「今日は、しっかり体を休めて明日に備えよう? 確かに、雪中遠征や雪山越えはあまり経験がないから、私も不安だらけで怖いよ。でも、今の私たちにできるのは、大尉と枢機卿を信じてついていくことだけだもの」

 立派な正論を述べたテイデだったが、声は自信なさげで頼りない。自分に言い聞かせている節もあるのだろう。

 自分の前では少し強がってみせるテイデに呆れつつ、ベズレーは嘲笑とも苦笑ともつかない曖昧な笑みを浮かべた。

「はいはい、あんたの言う通りだよ。だけど、俺は軍曹が予想以上に薄情で自分勝手だったことに失望したんだ。あの人は本当になにもわかっちゃいない。なにもわかってないくせに、自分の感情を押し通そうとして周囲を混乱させた。少しは責任を感じてほしいぜ」

 テイデは、じっとベズレーを見つめる。

 上官に裏切られた、見捨てられたという怒りから言ったのかもしれないが、ベズレーが“なにもわかっていない”という言葉を誇張したのが気になった。

 古い馴染みであるテイデは、自分の奇特な記憶力を隠すため時にベズレーが重大な事実を黙秘することがあると知っていたので、彼の言葉や心情の機微には目敏かった。

「ベズレー、貴方はなにか知ってるの? 軍曹やこの戦争について、まるで詳しく知っているような言い方だよ」

「……いや、お前が期待するようなことはなにも」

 ベズレーは目を反らした。テイデはもう少し強く質問しようとしたが、兵士たちから野営準備の手伝いを求める声が上がった。

 二人は立ち話はやめて協力すべきだと感じ、会話を切り上げ仲間の方へ向かう。

「テイデ」

 ベズレーが、目を合わさずに小声で呼び掛けた。

「一つだけ言えるのは、この雪山越えの最中、確実に大きな出来事が起きる。それがどれほどのものになるか、俺にもわからない。だが、きっと予想外の何かが起こるはずだ」

「えっ……大きな出来事ってなに?」

「さぁな。ともかく、気を緩めるなよ。せいぜい死なないように気を付けろ」

 ベズレーは口早にそう言うと、距離を空け、一度だけ肩越しにテイデを振り返って離れていった。彼も彼なりに幼馴染みを気にかけているようだ。

 話が飲み込めず、ぽかんとした顔でベズレーを見送ったテイデは、帽子を返していないと気づいたものの、しばらくは接触するチャンスはなさそうだ。彼女は意味深なベズレーの言葉を噛み締め、やはり彼はなにかしらの情報を握っているのだろうかと思った。

 しかし、結局、問い詰める勇気もなければ聞き出す権利もないという結論に行き着く。

(貴方が何を知っているのかは私にはわからないし、きっと問い詰めたところではぐらかされるだけだろうけど……私は貴方の言葉を信じてる。だから、貴方も無事でいてね、ベズレー)

 彼女は少しの間幼馴染みの背中を見守り、帽子を深く被り直すと、時魔導師の仲間がいるテントへと歩いていった。




 恐らく、歴史に残る遠征となるだろう。どう転ぼうと、この戦いは三国の未来を変える出来事になるはずだ。

 寒装備を整えた屈強な馬に揺られながら、パラディオは深く息をついた。

 昨晩山麓で一旦夜営した連合軍は、日が昇ると計画通り山脈越えに臨んでいた。幸い雪は小降りで、雪崩が起きる気配はなさそうだ。

 急勾配なリューリクの峠道に差し掛かるまではまだ距離があるが、アルトネアとの自然国境に踏み入り侵攻していることには違いない。これは歴とした侵略行為だ。

 戦闘の香りが、敵国の気配が、濃厚さを増しているように感じられた。

「何を考えているのかな?」

 パラディオと並列して進んでいた枢機卿が尋ねた。普段から白を好むヴァルカモニカと純白の軍馬は、嫌味なほど絵になる。

 パラディオは口を開きかけて、一度やめ、おもむろに首を横に振った。

「これまでのことを思い返していました。私は皇国に多大な恩を受けているのに、少しでも仲間たちに報いたいと思っているのに……いつも大事な場面で力を振るうことができていない。そんな気がして」

 ヴァルカモニカは、あからさまに喫驚してみせた。

「どうしたんだい? 君らしくもないな」

 パラディオは落ち込んだ様子で続ける。

「猊下、私は自分が不甲斐ないのです。私は自分を慕ってくれる少女を守ることもできず、あの男……ガルアの失踪も防げなかった。無力な己に憤りさえ感じています」

「そうなのかい? 君は存外自分に手厳しいのだな」

 枢機卿は、深刻なパラディオをよそにふわりと一笑した。ここ最近は開戦間近の重責からあまり楽しげな顔を見せていなかっただけに、笑われるとは思っていなかったパラディオは少しばかり傷ついた。

「だって。今回の遠征でも、虫たちは寒さに弱りきってあまり働いてくれない。軍の指揮は、ファルツォーネ将軍が一手に引き受けてくれている。私がお役に立てる場面は、あまりないのではないでしょうか」

 寒さに強い種もいるが、アルトネアの寒地では虫たちの大半が凍えてしまう。虫飼いとしての本領を発揮できないパラディオは、己の無力に焦りと不安を抱いていた。

 彼は、メリダが側にいないことを痛切に心細く感じた。それと同時に、これから遠くない未来で起こるであろう衝突にえもいわれぬ恐れもあって、少し神経質になっている。

「あまり自分を卑下するものではない。君は私の信頼できる部下の一人で、いつも親身に私の相談に乗ってくれる。連合軍全体を把握し、的確な状況判断の元、軍団の総合的な管理をしてくれている。それだけでも、私は、連合軍は、君に大いに助けられているよ」

「お言葉は大変ありがたいのですが」パラディオは暗い面持ちで枢機卿に返した。

「私はいつも後手に回るばかりで、他国の策士たちに踊らされています。貴方の参謀、補佐官として充分な働きができているとは思えません。かつてのファンブリーナ戦においても、結局私は貴方を勝利に導くことができなかった。皇国の柱たる貴方にお仕えする栄誉を受けておきながら、貢献できていないこの無能ぶりが心底情けないのです」

 パラディオの告白に、枢機卿はしばし黙り込んだ。

 いつ敵国と相見え交戦するかもわからない状況だというのに、自分の心境を大人げなく吐露している場合ではないと気づき、パラディオが謝罪を述べようとすると、「君は今何歳だ?」と妙な質問を投げかけられる。

「二十五ですが」自分で回答しておきながら、自分が官僚の中では若い部類に入ることを意外に思ったあたり、僕は少し慌てすぎかもしれない、とパラディオは感じた。

「私はもうすぐ五十になる。君の二倍ほど生きているし、君の父親と言っても問題ない年齢だ」

 ヴァルカモニカの言わんとすることを今一つ理解できないパラディオが困惑顔をしていると、枢機卿はゆっくりと続けた。

「私も若い頃は失敗や間違いを重ね、自分に自信をなくしていた時期がある。今だって、きっと(みな)の支えがなければ上手くやっていけないだろう。初めから全てを器用にこなせたわけではないよ、何度も失敗や過ちを経験したんだ。今も、多くのことで迷い、悩み、そして……間違った決断を下しているのかもしれない」

「そんなことは……」

 パラディオは本心から驚いていた。パラディオの知るヴァルカモニカは、先見の明に優れ、いつだって沈着に合理的な判断を下すことができる男だ。いわゆる“出来た”男なのだ。

 確かにファンブリーナ制圧のあと、ガルアにまんまとしてやられたのは事実だ。しかし、それが枢機卿の落ち度かと問われたら、そうは言えないと感じた。あれはアクロポリス皇帝アクルやアルトネアの意向、ガルアという予想外の存在が絡んできたため、ヴァルカモニカが自由に采配を振るえなかったのであって、実際、ガルアに嵌められたあとのヴァルカモニカの対応は賢明だったと思っている。

 パラディオが不思議そうな顔をしているのを見て、ヴァルカモニカは苦笑した。

「私は完全無欠な人格者などではなく、どちらかと言えば凡庸な男だ。だからこそ、君たちのような優れた人材の助けが必要なのだよ」

「それは、」

「謙遜ではないさ。私は私の凡下を常に感じている。だからこそ、非凡なる才を見抜く能力には長けるのかもしれない。私自身が人並みであるゆえに、才能を持つ者を目の当たりにすると、生まれもった能力の違いをひしひしと実感するからな」

 ヴァルカモニカは、パラディオの顔をまじまじと見つめ、どこか面白がるような声音で言う。

「本当に優れた才を持つ人間は、自身の力の真価になかなか気づかないものだ。むしろ、己の特異性を恥じたり、異端だと恐れたりする。もっと自信と誇りを持ちなさい。君の才は素晴らしい。虫を操る力も、聡明な頭脳も」

 真正面から称賛の言葉を浴びせられ、パラディオは不覚にも逃げ出したい衝動に駆られた。

 嬉しさよりも動揺が勝り、柄にもなく上手い返答が思い付かない。そんな部下を見た枢機卿がまたくすりと笑い、前方に視線を戻しながら続けた。

「なんにせよ、君は無能ではないし、今も多くの面でこの国に貢献してくれている。己を恥じる必要はないよ。それに、まだまだ若いからな。失敗したら、そこから学んでさらに成長するといい」

「恐れ多いお言葉の数々、まことに恐縮です。正直、そんなに手放しで誉められると畏縮してしまいますよ」

「謙虚でよろしい。これからもその才腕を存分にふるい、私を支えてくれたまえ」

 もはや呆れさえ感じながら、涼しい顔をしているヴァルカモニカの横顔を見た。未だに枢機卿が告げた真相は信じがたかったが、彼が人をおだてる天才なのは確実だと思う。

 ヴァルカモニカは、本当に多くの人々に慕われてやまない、天賦の人徳を備えた男なのだ。

 さっきまで自信をなくしていたパラディオだが、枢機卿と言葉を交わすと驚くほど勇気づけられた。ヴァルカモニカの激励の言葉というのは、実に不思議なほど効力があり、それもまた枢機卿が多くの兵士や民に慕われる由縁なのだろう。

 二人の会話が、そんな風に良い形で終わったあと。

「枢機卿猊下!」

 前方から、豪奢な軍馬に股がった男が駆けてくる。軍団の進行を逆流しつつヴァルカモニカの元に馳せ参じたのは、アベラルド・ファルツォーネ将軍その人だ。

 軍団の先鋒部隊を指揮しているはずの将軍が、なぜ後方のヴァルカモニカの元まで駆け参じたのだろう。ヴァルカモニカとパラディオは、ファルツォーネが重大な知らせを携えているかもしれないと思い、少しばかり身構える。

 亜麻色の髪の将軍は、例の朗々と響く声でヴァルカモニカに告げた。

「このアベラルド、皇都パルテノンを出立する際、尊きメトラの教えを説く偉大なる師――かの大神殿長様から拝借承ったものがあります」

「それは、急な話だな。驚いたよ」

 そう言いつつも、ヴァルカモニカにはあまり驚いた様子はなかった。どうやら心当たりがあるらしい。

 ファルツォーネが口にした大神殿長なる人物は、メトラ教会の最高役職に就く聖職者だ。メトラ教を国教とするアクロポリス皇国は、教会が強い権威を持ち、国民の生活や行事、政に大きく関与する。教会の実質的な本部である大神殿の長は大神殿長と呼ばれ、枢機卿団は大神殿長の輔弼機関として日々業務をこなしているのだが、ヴァルカモニカはその政治的手腕とカリスマ性を政府に買われ、教会から派遣される形で皇帝アクルの右腕として活動している。

 ヴァルカモニカと大神殿長は、共に皇国で大きな権威を持つ人物ではあるが、現大神殿長は年若い上にやや意思薄弱で頼りなく、現状はヴァルカモニカが教会と政府の関係を調整しつつ指揮を執っている、といったところだ。

 ヴァルカモニカは、どうにも渋い顔をしている。パラディオは、将軍が大神殿長から拝借してきたものが何なのか薄々感づいた。

「儀式や神事の場ならともかく、戦場に“神弓”を携えて赴くのはどうだろうな。私としては、畏れ多い気持ちがあるのだが」

 ファルツォーネは共感するように何度も相槌を打ったが、断固とした調子で返した。

「大神殿長様の強い御意向もあり、このアベラルドが、畏れ多くも神弓を枢機卿猊下の元へお届けに上がる誠に名誉な大役に命ぜられたのであります。かの神弓は戦乱の世に泰平をもたらし、神弓を持つ者を栄誉ある勝利に導くとされる。だからこそ大神殿長様は、世紀の決戦に向かう枢機卿猊下の御武運を切に願い、聖なる御弓を託されたのでしょう」

 ファルツォーネが長ったらしく説明した通り、神弓の持つ神秘性は兵の士気を上げる手助けとなりそうだ。実際に、歴史的大戦で指揮官が神弓を携え軍団を鼓舞した実例は残っている。戦場において、神物の威光というのは存外心強いもので、宗教国家である皇国ではなおのことだった。

 しかし、ヴァルカモニカはどうにも受け入れがたいらしく。

「私は、このような形で神弓を利用したくないのだよ。尊きメトラ様からの賜り物だ。戦いの場に持ち出すのは忍びない」

 パラディオは頑ななヴァルカモニカを意外に思いつつも、幾千年前にメトラから授けられたとされる神物の存在は、軍団の士気を高めてくれるであろうと説いた。それはヴァルカモニカもよくわかっているらしく、最終的には渋々同意し、戦闘が近づいたら自分が神弓を掲げようと請け負った。

 どうやらファルツォーネは、最初からこの展開が目に見えていたらしい。彼はヴァルカモニカが神弓を持ち出すのを厭い、皇国の陣に残していく判断を下すのを見越し、山脈超えに差し掛かるまで神弓を託されていることを明かさなかったのだとか。

 ヴァルカモニカは、わざとらしく批難がましく言った。

「ファルツォーネ将軍は存外抜け目ない男だろう? 私の性格をよくわかっているし、私の扱いも心得ているようだ。まんまと神弓を振りかざすことになった」

「さすが名門、さすが将軍、といったところですね。軍団の特性も、鼓舞の術も、熟知していらっしゃる」

 ファルツォーネは、天性の陽気なのか計算された愛敬なのかわからないお茶目な表情でウインクした。

「私は、枢機卿猊下を常にお支えしたいと願い、日々善処を心がけているのです。我が剣と軍団の手入れは、いついかなるときも怠りませぬ」

 彼は腰に下げた豪奢な剣に右手をやり、左手で軍団を指し示した。

 兵士たちは黙々と、だが決意を秘めた目で正面を見据え、戦地へと雄壮に行進していく。その様を見たパラディオは、アベラルド・ファルツォーネという将軍の先導力を改めて認識した。

「アベラルド。君は偉大な将軍だ」ヴァルカモニカは、少し茶化すように称賛した。

「お褒め頂き光栄です。実に身が引き締まりますな!」

 ファルツォーネは豪快に笑い、後ほど息子に神弓を届けさせると伝えて、来たときと同じく悠然と去っていった。

 彼が遠ざかると、場の空気が変質したように辺りに静けさが満ちる。

「さて。私個人としては遺憾なのだが、神弓という心強い加護もあるとわかったので」

 枢機卿はパラディオに目を向けた。

「君も少しは前向きになってくれただろうか」

 パラディオは、強かに頷いてみせる。

「そうですね。私はもう少し、将軍の自信と姿勢を見習うべきかと思いました」

 将軍のようにひた向きに進む強さはなかなか真似できるものではないのだろうが、彼の揺るがぬ志はパラディオにもある種の感銘を与えた。

「貴方のお言葉も、将軍のお姿も、とても良い刺激になりましたよ。正直、以前はあのお方のことを悪い意味で勘違いしていたのですが、まことに偉大な方であらせられる」

「彼は典型的な英雄気質だ。少し自信家すぎる嫌いがあるので、そこは困りものだが」

 パラディオは笑った。

「仰る通りで。貴方でさえ手を焼くのもわかりますよ。将軍は素晴らしいお方ですが、彼の存在感には圧倒されてしまう。何を隠そう私も、彼がここにいた間はずっと気圧されていましたから」

「英雄との対話は疲れるものだろう? 私のような凡人には、将軍の常人を超越した精神は理解しがたいよ」

 自らを凡人と称すヴァルカモニカだが、彼は並みならぬ人徳と信望をもって国を治め、多くの逸材を従えている。

 皇国が誇る偉人たちの感覚は、やはり世間とは少しずれているようだった。



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