6 集いし龍虎
「自分、青川空といいます!よろしくお願いしますっ!」
空は井村に勢いよくお辞儀をした。
「すごいね、龍太郎くん。あと一人じゃん」
「なんかね。ここまでとんとん拍子だと、後が怖い」
井村と明るく話をする空の背中を龍太郎と佳奈巳は見つめていた。
「うち、白金志麻子!よろしくね、空ちゃん!」
「私は赤井美羽といいます。よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いしますっす!」
ちなみに、現状では空が最年少、志麻子が最年長となる。その志麻子も龍太郎や佳奈巳の一個下だが。
「若いって眩しいなぁ……」
「ちょっと龍太郎くん、おじさん臭いこと言わないの。まだ二六でしょ?」
それぞれに会話が弾む中、井村が声を上げた。
「はい、じゃあ早速だけど、スーツの採寸とかしてもらわなきゃいけないね?地下のシミュレーションルーム使ってもらって」
「え、そんな部屋あるっすか!?」
「うん。うちはトレーニングルームやシミュレーションルームも併設していてね。うちに所属するヒーローはいつでも利用できるんだ」
龍太郎と佳奈巳の案内のもと、浮足立ってシミュレーションルームに向かう空と志麻子。美羽はもう経験があるからか、落ち着いていた。
「クワトロフォースは、五行と四神をモチーフにしたヒーローなんだ。近年は海外ウケも大事だからね」
「五行?四神?」
空の頭の上に?が浮かんでいる。
「中国の思想や霊獣ですよ。私は朱雀だから、赤……火ですね。そういえば周防さん、この二人は何に?」
「白金さんは白虎、青川さんは青龍になってもらおうと思ってるよ」
「うおおおおおおおっ!青龍!ドラゴン!かっこいい!」
大はしゃぎの空。一方、志麻子は首を傾げていた。
「りゅーたろさん。白虎って、そのままなの?ヒーローだと、なんちゃらホワイト、みたいな感じだと思ってたんだけど。短くない?」
「一応、正式名称は漢字で『白銀之白虎』になる。朱雀は『紅蓮之朱雀』、青龍は『翠玉之青龍』。まぁ通称は白虎とか朱雀でいいよ。いちいちフルで言うのめんどいしね」
「あはっ、いいじゃん!漢字なのも独特でいい!」
「え?なんすか?」
どうやら空は今の話を聞いていなかったらしい。志麻子が親切に教えてやる。
「さっきから思ってたんすけど、青なんていなかったっすよね?青龍って青じゃないんすか?」
実際、クワトロフォースのポスターなんかでは、青龍は緑のスーツであった。空の言う通り、青ではない。
「青龍は元ネタ通りの緑だよ」
「え、えぇ……?青龍なのに、青くないんすか?」
「……青信号みたいなものだと思って?」
「あ、なるほど……」
龍太郎が壁のセキュリティ機器にカードを通すと、シミュレーションルームの扉が開く。中は広く、壁にはいくつかの着ぐるみがかけられていた。
「お、おぉぉおー!すごい!秘密基地みたいっす!」
一目散に駆け出し、あれやこれやと見て回る空。
「りゅーたろさん、あれは何?」
志麻子が指さしたのは、壁にかけられた着ぐるみだ。
「あぁ、あれは敵役用のきぐるみ」
「え、ちょっとりゅーたろさん着てみてよ」
「えぇ……」
しぶしぶ着ぐるみを着る龍太郎。これでシミュレーション用怪人、タヌキ怪人タヌキングの完成だ。
「え、やだ、ちょっとかわいい!」
「暑い。早く脱ぎたい」
着ぐるみを見た空が目を輝かせて駆け寄ってくる。
「え、怪人!怪人じゃないっすか!え、背中にジッパーあるんすよね!?」
「はい。知ってるかと思いますが、怪人の背中にはジッパーがあります。だからヒーローは、怪人を戦意喪失に追い込んでからジッパーを開け、中の人間を拘束するのが基本です」
「ウケる!じゃあ極端な話、戦わなくてもジッパー開けて、中の人を引っ張り出せば勝ちってこと?」
「そうですね……ただ、現状ヒーローでそれができている人はほとんどいません。非常に難しいと思います」
まともにコミュニケーションがとれる相手だからか、美羽も心なしか嬉しそうだ。
「ちょ、黒亀さん、開けて、開けて……」
「あぁ、はいはい」
佳奈巳がタヌキングのジッパーを下ろし、中から龍太郎が出てくる。
「あーあっつ、あっつ……」
「龍太郎くん、私採寸するから、ちょっと出てって?」
これから女性だけの空間になるということで、龍太郎はシミュレーションルームを出た。




