5 詐欺師にご用心
志麻子の加入から数日後。龍太郎たちは、街中でビラ配りに勤しんでいた。ヒーローやりませんか、そんなビラがまともに受け取ってもらえるのか不安だった龍太郎だが、ビラ配りは案外注目を集めた。
「これ、意外と受け取ってもらえますね……あ、ヒーローになりませんか?現在募集中ですっ!」
美羽が通行人に手渡したビラには、「ヒーロー大募集!~あなたもみんなの希望の星へ~」と書かれている。
「うんうん、りゅーたろさん、ビラ配り作戦いい感じじゃない?数当たってたら、誰か反応してくれるよっ!」
「そうだろうか……」
この作戦、立案したのは龍太郎だが、当の本人が一番不信感を募らせていた。
(なんぼ注目されるったって、傷つく仕事なんて誰もやりたくねーだろ普通……)
龍太郎の内心はこれなのである。
「ヒーロー募集中です。アストラルプロダクションです……」
「え、ヒーロー?」
龍太郎がビラを渡した通行人の女が声を漏らした。
「ヒーローって、あのヒーローっすか?」
「あ、はい……あのヒーローです」
女はぽりぽりと頭を掻いた。髪はベリーショートで、肌はよく日焼けしている。全体的にボーイッシュな印象を受けた。
「実は自分、ちょうどヒーローになるためのセミナーに向かうところなんすよ」
女は申し訳なさそうな表情でそう言った。セミナー、という言葉に龍太郎は嫌な予感がした。
「そうなんですね。それって、どんなセミナーなんですか?」
「なんか、受けるだけで誰でもヒーローになれるみたいっす!すごいっすよね、自分、ずっとヒーローになりたくて……」
やっぱりか、と龍太郎は思った。誰でも、なんて謳っている時点で、ほぼ詐欺だろう。
「あー……それ詐欺ですね、きっと。なんてとこですか?僕知ってるかもしれません」
「えぇ、そうなんすか?でも紹介してくれた人、めっちゃいい人で……。……えっと、会社名……」
女はスマートフォンを取り出し、何か調べている。
「……あ、あった。会社がっすね、株式会社カガヤキ……」
「あ、それ詐欺です。業界内で有名なとこですね。泣き寝入りしてる人何人もいますよ」
「えぇ……マジっすかぁ……」
こいつさては馬鹿だな、と龍太郎は思った。いくら詐欺に引っかかりそうだったとはいえ、たった今出会ったばかりの人間の話をこうも簡単に信じるものだろうか。とはいえ、ヒーローになりたい、という気持ちがあるのは龍太郎にとって、実に好都合であった。
「うちなら、来月にはヒーローとしてデビューできますよ。実はここだけの話、あと二人で締め切りなんです。しかもうちはあのプロミネンスエンタープライズの子会社です。後ろ盾もばっちりですよ……」
親会社が大手だと、こういうときに都合よく名前を使える。実際は後ろ盾になんてなってくれそうもないのだが、龍太郎にとって、今は目の前の相手を騙せればそれでよかった。
「え、え、そうなんすか!?じゃ、じゃあ詐欺じゃなくて、こっちの方がいいっす!」
「決まりですね、早速うちの事務所でお話をしたいのですが、この後お時間よろしいでしょうか?」
「はい!もちろんっす!よろしくお願いします!」
龍太郎は他の二人にも声をけ、一度事務所へ引き上げることにした。




