14 名乗らなくて何が悪い
「え、周防くん、名乗りとかないの?」
「ないです」
アストラルプロダクション事務所では、社員一同でクワトロフォースの勇姿を見守っていた。名乗りも必殺技もないその戦いぶりに、社員からは戸惑いの声が挙がる。
「おいおい、なんもかっこよくないじゃないか!」
「これじゃプロミネンスに全部持ってかれるぞ!」
龍太郎自身、そう言われることは想定済みである。試しに、龍太郎はライブ配信がされているサイトの書き込みを見てみた。
「名乗りは?」
「早くて草」
「必殺技とかないん?」
「なんかつまんない」
「警察的にはこういう人たちの方がいいんじゃね?」
龍太郎は一人ほくそ笑む。クワトロフォースの戦闘スタイルは、「かっこいいヒーロー」を求めるライト層や低年齢層には確かにつまらないものだろう。だが、街や人命を守り、周囲への被害も極力抑える、これを望んでいる層も確実にいるはずである。
「周防くん、俺も正直さ、もうちょっと何か見せ場があってもいいと思うんだけど……」
「いらないですよ。だってここの目的はヒーローに地方を守らせることでしょう?これの何が間違ってるんですか?間違ってるのは、世の中の風潮の方だと思いますけど」
「でも、ある程度は目立ってかないと、依頼も入ってこないんじゃ……」
「依頼ならきっと入ってきますよ。ほとんどのヒーローが都市部でしか動かないなら、うちらは地方で動くヒーローになればいい。都市部の連中に守ってもらえない人や町が、必ずいる」
井村はそれ以上何も言わなかった。龍太郎の元へ、美羽から通信が入る。
「指揮官、やりましたよ!見てましたか?」
「あぁ、見てた。よかったよ」
通信の向こう側できゃっきゃとはしゃぐ声が聞こえる。
「りゅ……指揮官、そっちの人たちの様子はどう?やっぱり文句言ってる?」
「まぁそれなりには、ね。く……佳奈巳もお疲れさま。……あ、みんなこの後のストロングフォーの戦い、よく見といてね。きっといい見取り稽古になる」
「了解っす!」
「ねー指揮官、帰ったらみんなでみなとや食堂行こうよ!」
その言葉に、龍太郎は笑った。
「よしわかった。今日は俺が奢るわ。何食うか考えとけよ」
通信の向こうで、どっと笑う声が聞こえた。




