10 そういうの、よくない。
デビューを翌週に控え、龍太郎たちが準備に追われていたある日。
「次のニュースです。『誰でもヒーローになれる』と謳い、セミナーの受講者から金銭を騙し取ったとして、株式会社カガヤキの——」
みなとや食堂のテレビではニュースが流れていた。ラーメンを啜り終えた龍太郎が顔を上げ、テレビ画面を見つめる。
「あー、空、これこの前の」
「え?……あ、ほんとっすね。警察にバレたんだ、よかったよかった」
そう言って、空はカツ丼をかきこんだ。その隣では、志麻子がオムライスを口に運んでいる。
「……でも空ちゃん、気を付けてね?素直なのはいいけど、悪い人って案外すぐそこにいたりするから……」
「そうだそうだ。ペテン師ってのは、当たり前のことを否定するとこから始めるからな?誰でも簡単に望みを叶えられたら、才能も努力も、何の価値もなくなっちまう」
そう言う龍太郎の横で、美羽が佳奈巳に聞いた。ちなみに、美羽の今日のメニューはハンバーグ定食である。
「……指揮官って、なんだかちょっと悟ってますよね」
それを聞いた佳奈巳は目を細める。彼女のメニューは空と同じカツ丼だが、こちらは唐辛子がどっさりとかけられている。
「あー……まぁ龍太郎くん、頭いいからね。うちの会社じゃ貴重な国立大卒だし。それに、大学入るのにも結構苦労したみたいだよ」
和やかな食事の時間は、アナウンサーの声によって断ち切られた。
「ここで速報です。大手ヒーロー事務所プロミネンスエンタープライズは、つい先ほど、来月に予定していた新ヒーローグループのデビューを約一か月早める決定をしたと発表しました」
龍太郎とクワトロフォースの面々の視線がいっせいにテレビ画面に向く。
「これにより、新グループ『ストロングフォー』のデビュー日は、子会社であるアストラルプロダクションの『クワトロフォース』のデビューと同日になります」
「……ふざけてんのか?」
一気に五人の空気が重くなる。
「龍太郎くん、これって……」
「あぁ。露骨な子会社いじめってとこだな」
店内の他の客たちは、この発表に沸き立っている。
「でも、どうしてプロミネンスはうちに嫌がらせなんてするんすか?ヒーロー事務所同士、仲良くすればいいのに……」
「そう思うだろ?そうもいかねぇんだよ、めんどくせーことにな。……せっかくだし、帰ったらまたお勉強会でもするか?」




