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星崩しのアステリア  作者: 狐坂蒼
第二章

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第22話 連鎖魔法

 木の上からフォレストウルフに向かって飛びかかったルリは、ナイフを一頭の脳天に深く突き刺した。


「まずは一頭。後九頭」


 ルリは絶命したフォレストウルフから素早くナイフを抜き、周囲を警戒しながら構え直す。


 仲間を殺されたフォレストウルフたちは怒りを露わにし、今にも飛びかからんばかりの勢いでルリを取り囲んだ。


「まずは二本!」


 緊迫した状況でもルリは怯まず、フォレストウルフたちの後方にある木に向かって、両手に持った二本のナイフを投げつけた。ナイフはそれぞれ間隔を空けて別の木に深く刺さる。


 すかさず精霊界から追加のナイフを二本取り出した。


 ルリが最初の二本を投げた瞬間、フォレストウルフたちが一斉に飛びかかってきた。ルリは獣人としての身体能力を活かし、ひらりと躱して地面に二本のナイフを投げる。今度は先ほどより間隔を広げて地面に刺さった。


「そして四本!」


 これで四本のナイフが、フォレストウルフたちを取り囲むように配置された。


 さらに一本のナイフを取り出し、


「これでラスト」


 ルリは最後の一本をフォレストウルフの腰辺りに投げて突き刺した。


 木に刺さっているナイフには「フィレ(火)」と「ヴィエンツ(風)」の魔術文字が、地面に刺さっている二本には「ワテラ(水)」と「ホルアス(光)」が、最後にフォレストウルフに刺さった五本目には「カドゥロム(闇)」の魔術文字が刻まれていた。


 ナイフが刺さったフォレストウルフは突然の痛みに驚き、走り回り始めた。


 そして、木に刺さったフィレとヴィエンツ、フォレストウルフに刺さったカドゥロムがちょうど正三角形の位置に来た瞬間、その中心に炎の竜巻が巻き上がった。


 炎の竜巻に巻き込まれたのは三頭のフォレストウルフだった。


「残り六頭」


 突然の炎の竜巻に驚いた残りのフォレストウルフたちは、一斉にその場から逃げ出そうとする。


 しかし、地面に刺さるワテラとホルアスのナイフを結ぶライン上に一頭が触れた瞬間、二本の地面のナイフと二本の木のナイフを頂点とした結界が発動した。


 ライン上にいたフォレストウルフの首が、結界の発動によって切断される。


 残り五頭は結界内に閉じ込められ、目まぐるしく変わる状況に完全に混乱していた。


 ちなみに炎の竜巻は結界発動と同時に消失していた。


 そして、最後の仕掛けが動き出す。


「これで三連鎖!フィレ、ヴィエンツ、ワテラ、ホルアスの結界内にカドゥロムがある場合、結界内の生物に無差別攻撃魔法が発動する」


 結界内に炎、風、水、光の槍がランダムに降り注ぎ、あっという間にフォレストウルフ十頭の討伐が完了した。


「やったー!倒せたー!思ったより簡単で良かったぁ。連鎖魔法もうまくいったし、自分が思ってるよりも強いのかも!」


 ルリには固有能力があった。それは十秒先までの未来を見ることができる能力であり、それを活かして今回の連鎖魔法を組み立てていた。


 無事に討伐を終え、安堵したのも束の間——


 急に木の蔓がルリの両足に絡みついてきた。


「え!?何!?」


 突然の事に状況が理解できず、ルリが足元に視線を落とした瞬間、三頭のフォレストウルフが飛びかかってきた。


 反応が一瞬遅れ、足も蔓で固定された状態だったルリは、右腕で咄嗟に牙をガードした。


「ぐっ……くらえ!」


 右腕に深く食い込むフォレストウルフ。さらに飛びかかってきたもう一頭には、左拳で殴り飛ばす。アステリア直伝の魔力圧縮を加えた破拳が炸裂し、相手は即死こそしなかったが気を失った。


 ルリは精霊界からもう一本ナイフを取り出し、右腕に噛みついているフォレストウルフの喉元へ突き刺した。


 これで二頭を倒したが、飛びかかってきたのは三頭だった。


 辺りを確認すると、三頭目のフォレストウルフは既に頭から血を流して倒れていた。頭部には小さい丸い穴が開いている。


 魔力探知で周囲を確認したルリは、既に五頭のフォレストウルフに囲まれていることに気づいた。


「これって……他の群れが襲ってきてるってことだよね……」


 足は蔓で固定され、右腕からは血がぽたぽたと滴り落ちる。想定外の状況に心臓の鼓動が激しく速くなった。 後ろの一頭が飛びかかろうとした瞬間、遠くから「パン」という小さな乾いた音が響き、フォレストウルフが倒れ込んだ。頭部には先ほどと同じような小さな穴が開いていた。


 その後も「パン、パン、パン、パン」と四度連続で音が響き、ルリを取り囲んでいたフォレストウルフは全て絶命した。


「助かったぁ……。きっとアステリアだよね」


 ルリは全身の力が抜け、その場に座り込んだ。


 少しすると、アステリアが悠然と現れた。


「やっぱり銃は実弾に限るわね。あの反動がたまらないのよね」


 スナイパーライフルを担いだアステリアは、どこか上機嫌だった。


 フォレストウルフを仕留めたのは、ルリの予想通りアステリアだった。


「ふえーん。アステリアありがとぉ……助かったよぉぉ……」


 安堵した途端、ルリは急に泣き出した。アステリアと違い、精神年齢が十歳である彼女にとっては、自然な反応だった。


「最初の十頭はスムーズで良かったわ。でも、後から来た別の群れへの対応は全然ダメだったわね」


「はい……」


 今にも消え入りそうな小さな声でルリが返事をする。


「ルリは同時に複数のことをするのがまだ苦手ね。最初の十頭と戦っている時から、魔力探知を切っていたでしょう?戦いながらも魔力探知を張っておけば、こんなことにはならなかったわ」


「すみません……」


 アステリアの指摘が胸に突き刺さり、ルリは自分の至らなさを猛省した。


「それじゃあ帰りましょうか」


 アステリアはフォレストウルフの死体を精霊界に転送すると、ルリと共にマイヤーへと帰還した。

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