第18話 後始末
「……」
エイザックは、目の前の出来事を理解することができず、放心状態といったところだ。
「後はあなたとあなたの部下が数名だけのようね」
エイザックに歩いて近寄るアステリア。
「ひぃ……な、何が欲しい?欲しい物は何でもやる。だから――」
エイザックの言葉を最後まで聞くつもりのないアステリアは、容赦なく魔力の刃で纏わせたトンファーで斬首する。
「欲しいのはあなたの命よ」
首が地面の落ちるのと同時に、残ったエイザックの体もその場に倒れ込んだ。
その後は拠点内にいる残党をサクッと狩り、奴隷として売られるであろう被害者たちが閉じ込めている地下へ向かう。
ちなみに服は穴が開き、自身の血で汚れてしまったので、着替えてから向かった。
地下牢といった雰囲気で、鉄格子の向こうに数十名の子供たちが囚われていた。
種族は人間がほとんどだったが、一人だけ獣人の女の子が確認できる。
頭部にある耳と尻尾から狐の獣人のようだ。アステリアと同じくらいの年齢に見える。
「王都の方だとそれなりに見かけるけど、この辺りで獣人は珍しいわね」
アステリアが地下に入ってきた瞬間、子供たちは一瞬怯えたような表情をしたが、入ってきたのが自分たちと同じような子供だったので警戒心はすぐに解かれた。
「あなたたち少し後ろに下がりなさい」
アステリアの言葉を素直に聞き入れ、奥の方に体をずらす子供だち。
するとアステリアは、トンファーで子供たちを閉じ込めている鉄格子切断し、脱出できるようにする。
「ここから出るわよ」
「あ、あの大人の人達は?」
恐る恐る訪ねてくる子供たち。永夜の黒蛇の大人達に相当怯えているようだ。
おそらくここにいる間も怖い目に遭っていたのだろう。
「もうみんないないわ。だから今の内よ」
そのまま子供たちを引き連れて、アステリアは冒険者ギルド向かった。
拠点に突撃した時までは、まだ暗かったが、いつの間にか辺りは少しずつ明るくなっており、冒険者ギルドに着く頃には完全に朝を迎えていた。
冒険者ギルド内は朝の準備中で、ギルドマスターのローナンと受付嬢たちが作業しているのが見える。
「おはようローナン。ちょっといいかしら」
「おう、アステリアか。朝からどうした?って後ろの子供たちは何だ?」
ぞろぞろとギルド内に入ってくる子供たちに何事かと驚愕するローナン。
「永夜の黒蛇に捕まっていた子供たちよ。マイヤーにある拠点と、構成員たちは潰してきたから事後処理お願いできるかしら。この子たちのことも含めてね」
「おいおい嘘だろ?永夜の黒蛇って言えば、ファルスティアの中でもでかい犯罪組織の一つじゃねえか。本当にやったのか?」
アステリアのトンデモ発言に、朝から頭が痛いローナンは椅子に座り頭を抱える。
「幹部二人と、護衛の元Sランク冒険者のリッドって人も殺しておいたから」
「元Sランク冒険者のリッド?まさか双極の槍魔リッドか!?」
「たぶんそれね。炎と雷の槍を使ってきたわ」
「頭が痛い……」
後処理のことを考えると、憂鬱になるローナン。
「子供たちは、帰る場所があるなら帰してやらねえとな」
「そうね。ねえ、あなたたちは帰る場所はあるかしら?あるならこのおじちゃんが送ってくれるみたいよ」
アステリアの言葉にほぼ全員頷いたが、一人だけそうでない子がいた。
狐獣人の子だ。
アステリアはそっと近づき尋ねる。
「あなた名前は?」
「ルリ……」
「ルリは帰る場所はないの?」
「うん。一緒に旅をしてたお父さんも、私が連れ去られる時に殺されちゃった……。もう家族は誰もいないの……」
狐獣人の女の子のルリは俯き、疲れ切ったような声でそう答える。
アステリアは少しだけ考え込み、ローナンの方を見る。
「ねえ、行き場のないこの子は、私が引き取ってもいいかしら?」
「子供が子供を引き取るのか?いや、確か侍女と一緒に暮らしていたな。まあいいだろう。このままだと引き取り手は、孤児院しかないからな」
ルリが一緒に暮らすことが決まり、精霊界の家も合わせれば、一緒に暮らす人数は四人になった。
夜通しの活動だったため、急に睡魔が襲ってくる。
後のことは冒険者ギルドに丸投げして、アステリアはルリと一緒にマイヤーを後にした。




