合戦前の夜
さて、三軍一部不参加会議は結局ナンブ軍先鋒イズモ軍次鋒ということで決定。
しかし他の軍が惰弱な態度を示せばそれは第四王子の恥となるので、決してなさらぬようということで決着した。
王室を出せば渋々ではあるが、辺境伯に他男爵子爵なども従わざるを得ない。
つまりこれは、諸侯の兵が頼りにならないということを示していた。
私としてはあとに続く二軍一軍の様子を占うに足るだけの出来事である。
もうこの国は、ナンブとイズモで守るしかない。
他の軍などあてにしてはならないことを教えてくれた。
敵軍いかなるや?
敵としては辺境伯一家のみを潰す予算で出陣してくるはずだ。
となると、一伯爵一辺境伯という人数くらいで攻めるつもりと私は踏む。
何故なら敵は攻撃一辺倒。
しかも不意打ちを建前としている。
ならば最小限の人数で損耗少なく。
そういった姿勢でワイマールに挑んでくるだろう。
というか、大袈裟な兵の配備は邪魔になり金を食うだけでまったく役に立たない。
どこぞの国の大災害でGA隊を集めるだけ集めて、まったく動かない人員を作成した無能指揮官の例もある。
官僚の仕事を重視していればそのような愚行も無かったろうに。
歯止めの無い愚者はただ必死を訴えて国家予算を浪費するだけである。
まあ、どこの国の話であるかは私はまったく分からない。
ここで重要なのは、軍師たる者は必要な人数を必要な場所に集め、効率よく運用するものだということである。
そしてドルボンド宰相アドルフは、出来る男と私は見ている。
そしてこの時点でワイマールに攻め込み、大国を目指す辺りは大変な夢想家であると確信していた。
ならばどのように対処すべきか?
初戦を叩く。
世の中甘くないということを、苦杯を舐めさせながら教え込んでやる。
もしかしたらアドルフは、より攻略しやすい隣国に兵を割き、二面戦争に入るかもしれない。
しかしワイマールに攻め込んでいる時点で、周辺諸国はドルボンドに対して最大限の警戒をしているはずだ。
そうでなければ男爵→伯爵経由で王子に進言し、周辺諸国に警戒するよう通達していただくだけだ。
なんとはなれば、ドルボンドが手痛い反撃を食らうことを予想できていないように、周辺諸国もまたワイマールの反撃を予想していないだろうからである。
とにかく私とナンブ・リュウゾウは野営地に帰って来た。
男爵さまは貴族であるから、宿に入っている。
つまりナンブ軍はいざ合戦というときに、男爵さまの指揮ではなくナンブ・リュウゾウの指揮で動くということである。
ひいてはそれは、私ヤハラの指揮で動くということでもあった。
野営地はワイマール=ドルボンド間をつなぐ関所の門から少しく遠い。
しかしドルボンドの使者が国交断絶と宣戦布告を完了するには、まだ数日あった。
それに主役である第四王子が、まだ現場に到着していない。
王室の様子を探るために、忍びの一団を放つ。
アヤコを筆頭にイズモ・ナンブ忍者連合が使者の背中を追った。
そしてすっかり三軍のキ〇タマを握った形になった私は、使者を自軍に送る。
ドルボンド攻略の攻城兵器の支度はどれほどか?
そこが気になっていたのだ。
ほどなく戻ってきた使者は、士気も高く鋭意準備中ですと教えてくれた。
攻城兵器の支度は、すでに八割方済んでいるという。
それを聞いて私は、ショットグラスに注がれたバーボンを、ようやく一口舐めることができた。
間もなく戦さが始まる。
そんな緊張感にあふれた夜であった。




