大演習 後編
押し包むような激しい弓矢に、男爵軍の槍兵は一気に瓦解した。
これを気に私は銅鑼を乱打させる。
槍兵の隙間を縫うようにして、北区画の秘密兵器「力士隊」の突撃であった。
崩れた槍兵は四散して、体格に勝る力士隊の蹂躙を受けた。
が、男爵も踏ん張る。
同じ数だけいた力士隊を投入してきたのだ。
しかし我が軍には抜刀隊がすぐに控えていた。
力士隊の背中を駆け上がり、猿のごとく敵陣に躍り込むは、我らが大将ナンブ・リュウゾウ!
……って、大将自ら斬り込んでいくって、なにやってんのよ、この阿呆が!
しかし私の血液が頭にのぼる暇も無く、敵陣は崩れに崩れ落ちた。
剣士がどんどん。
行け行けどんどん。
力士隊もあとに続き槍兵も突撃を敢行する。
演習場はすでに、しっちゃかめっちゃかの大乱闘であった。
……結果、演習第一戦はリュウゾウ軍の勝利。
続く二戦目は兵を総取り替え。
ここでもリュウゾウ軍は勝利をおさめ、将の優れるところを見せつけた。
三戦目はハンディキャップ・マッチ。
北区画軍と男爵領全体というとんでもない演習試合であった。
数では圧倒的不利。
しかしここは一点突破戦法。
一直線に本丸である敵陣に突っ込んだ。
これでリュウゾウ軍は三戦三勝。
さすがの参謀、あるいは男爵も兜を脱いだ。
「大変に良い働きであった」
これはコテンパンにやっつけられた男爵さまからのお言葉。
「来る決戦において、汝らは存分な働きを見せてくれるものと信じている」
とのことであった。
しかし私には、「激戦区をまかせるから、みんな頑張ってね」としか聞こえない。
しまった、少々はりきりすぎたか。
男爵陣営がもう少しマシな働きをするものと期待していたのに。
しかし演習の後片付けが終わると、アヤコが帰ってきた。
仮想敵、ドルボンドの情勢を探っていたのだ。
アヤコによれば、まずドルボンドは国債を大量発行。
それが敵陣大将アドルフの人気も手伝い、飛ぶように売れているということだ。
金を集めるアドルフは、まず軍備を強化。
兵員の増強を狙っているということだ。
先手を取れたと、私は胸のうちだけでほくそえんだ。
そしてアドルフの基本的戦術も手に入ったという。
電撃戦をねらっているらしい。
まずはワイマールとの往来を遮断。
辺境伯の門を閉ざす。
しかる後に使者を派遣。
宣戦布告をすると同時に攻撃してくるという。
そうなると……。ワイマールの辺境伯領地から中央まで四日かかるとしよう。
ドルボンドの閉門から四日で開戦となる。
それまでの四日間。
できる準備はするに越したことはない。
「アヤコ、ドルボンドは電撃戦を策していると言ったな?」
「はい、まずは市街地に攻城兵器を三基据え付け、こちらの城壁を破壊するということです」
なるほど、敵は投石機設置に四日間を費やすつもりか。
とはいえ、ワイマールとドルボンドは互いに高い城壁を築き、出入りは門ひとつだけ。
両国の間には河が流れ、一本の橋で繋がっているだけ。
それで城壁を破るということは、橋を渡って散開。
辺境伯領地の要所を片っ端から押さえてゆくという戦法だ。
ならば兵はワイマールから見て真正面。
ここに集めておくだろう。
そして城壁が崩れると同時、兵を雪崩込ませる戦術だ。
私は男爵さまに情報を伝える文を書く。
そして大将ナンブ・リュウゾウにも。
北区画会議開催である。
メンバーにはみちのく屋総裁鬼将軍も加わった。
なんだかんだでこの男、中央に学園を設置するだけあって王室にも顔が効く。
あら? たっぷり書いたつもりなのに、案外文字数が行ってませんでしたわ(苦笑)




