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大演習 前編

大将第四王子アーサーさま。

筆頭イズモ伯爵の第三軍が水面下で動き出し、その流れの中に私もいた。

しかし今はナンブ軍総合演習である。


ない金を必死にかき集めて、総勢千名にも膨れ上がった兵士たちの日当をまかなう。

さらには食費。

領内とはいえ、朝早くの出立で男爵さまの元へ集まるのだ。


朝飯昼飯くらいは賄ってやらなければならない。

少しくらい気前の良い所を見せてやらなくては、士気も上がらぬというところ。

さらには、日帰りという訳にもいかないので宿泊の手筈を整え、夜であるが故に酒肴の準備も必要だろう。


質実剛健を気取るのもいいが、兵のほとんどは農民町民なのである。

これくらいしてやらないと、喜んで戦場には立ってくれない。

まったく、戦さ支度というのは本当に金がかかる。


そして演習当日、平野部に男爵軍とリュウゾウ軍が別れた。

得物はそれぞれ本身ではない。

クッションをつけた槍に弓矢。


そして木刀である。

しかし防具の拵えは本物。

鉢巻の上に鉄帽子をかぶり、鎖の着込みに黒縮緬の上下と羽織。


そして剣術稽古の胴と垂れ。

小手も分厚い革のもので、掌が露出したものである。

そうでなくては手の内が変わると言って、ナンブ・リュウゾウが注文をつけたものだった。


人数はどちらも半々にわけただけ。

ナンブ・リュウゾウが北区画の兵を独占しているでなく、男爵の兵も混ざっている。

ただ、陣営の面々は揃っていた。


大将ナンブ・リュウゾウ。

参謀ヒロ・ヤハラ……すなわち私。

一軍指揮シロガネ・カグヤ。

二軍指揮クサナギ・シロウ。


これでもって、男爵率いる五〇〇の兵を迎え撃つのだ。

まず私は銅鑼をひとつ打った。

開幕の合図である。


陣地から楯を携えた弓兵が前に出る。

横長の陣形で前後二列。

これで敵を包み込むのだ。


その背後には三間槍を抱えた槍兵。

これは矢の雨をかいくぐった敵兵を止める役割である。

今現在は左右に広がっているが、状況によっては密集隊形をとり本陣を守る。


これだけで兵の八割。

四〇〇名を割いていた。

長距離攻撃に力を入れるとは言ったが、決戦要員たる腕前を有する者が少なかったのだ。


そして陣営を守るのは力士隊に抜刀隊。

これは最後に殿を守るか、突撃して決勝とするかという面々である。

鉄砲隊は合図係。


演習で実弾をブッ放すわけにはいかないからだ。

男爵陣営も同じ隊形をとってきた。

まずは弓の勝負である。


我が軍は程よい場所に弓兵を留めた。

程よいとは、相手に可能な限り近づき、本陣を守るポジションである。

男爵軍も弓兵が楯を据えて陣取った。


しかし、あまりに両陣営距離がありすぎる。

これには私も苦笑した。


「殿、これでは戦さになりませぬ。陣地を押し出し肉迫しましょう」


「うむ、そうだな」


ナンブ・リュウゾウも困り顔だった。

ここしばらく戦さがなかったため、将兵ともに間合いと勝手がわからないのだ。

伝令を出し、銅鑼ひとつで前進。


銅鑼ふたつで停止。

みっつで攻撃開始と取り決めした。

リュウゾウ軍、前進。


はやくも敵はラッパを鳴らし、矢を射掛けてきた。

しかし届かない。

足元に矢が届く距離になっても、私は銅鑼を命じなかった。


この距離では、まだ矢に威力が無い。こんなところで矢を消耗したり、臆病風に吹かれる兵士でも困る。

楯で矢を避ける距離になって、初めて私は停止を命じた。

弓兵は楯で、槍兵は槍で矢を避ける。


この段になってようやく、私は射撃を命じた。

角度三〇。

両翼は敵陣を包むように前進した鶴翼の姿である。


敵の弓兵槍兵は、集中線状に矢を浴びることとなった。

敵陣からラッパ。

弓兵が楯を持ち、その背後から槍が伸びた二人一組の態勢。


これで突撃してきたのだ。

私は弓兵を下げて槍を前に出した。

槍の背後には力士隊を置く。

さらには抜刀隊だ。


槍兵同士の突き合い……ではない。

面や小手の打ち合いだ。

どちらも上等の兵ではないが、必死に槍を操る。


しかし敵には楯がある。

これが邪魔であった。

私はさげた弓兵に射撃を命じる。


外すはずもない至近距離、敵の槍兵は次々退場した。


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