九十四告目 後藤柚姫 7
西木千輝の勢いに三人が思わず後藤柚姫から距離をとる。その空いたスペースに西木千輝が体を割り込ませ後藤柚姫をかばって立つ。
「大丈夫、柚姫? 何かされなかった?」
この夏休み中、西木千輝はすっかり学校に来なくなっていた。近所の大衆食堂の厨房やビルの掃除などバイトにあけくれていた。滝村涼香や佐島鷹翔がいなくなり部活の仲間からも絶交されたことで、もう学校に自分の居場所がないと感じていた。バイトで体を動かすくらいしか寂しさを紛らす方法がなかったせいもある。
それでも後藤柚姫は西木千輝に声をかけるのをやめなかった。「一緒に卒業しようよ。秋には修学旅行だってあるんだし」そう言って彼女を励まし続けた。そして今日は一緒にお昼を食べようと誘って久しぶりに学校で待ち合わせたのだった。
「そんな怖い顔しないでよ、千輝。あたしまで呪い殺す気?」
「そ~そ~。アタシらに近づかないでよ千輝ち~。呪いがうつるから~」
折原美等と萩野海渚が言いながら大げさに距離を置く。それにショックを受けて西木千輝が固まる。
「まあまあ、それぐらいにしておいてあげたら? 後藤さん、泣いても謝っても次はないわよ」
そう言い残して暮林夏凛は二人を連れて去っていく。静かになった廊下に後藤柚姫と西木千輝だけが立っている。
「……ありがとう千輝、助かったわ。ごめんね、無理をさせたわね」
「何でよ……何でそこまで! あいつら……あいつ……バカヤロー!」




