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七十三告目 天人講 27
山を下りたところに木田村紹子の車が置いてあった。鍵もつけたままだ。後藤柚姫は運転席に乗り込み車を発進させた。オートマならそれほど難しくない。庭で何度か乗ったことがある。それでも後ろを振り返る余裕はない。人が殺されているという事実。こうなった以上警察の手を借りる他はない。
かつて後藤柚姫は天人講を自分たちの理想郷にしたいという夢を木田村恵に話したことがある。励まし合い手を取り合い笑った記憶もある。しかし後藤柚姫は今やその夢が崩れ去ったことを悟った。木田村恵にとって天人講は復讐のための舞台装置でしかなかったのだ。裏切られた悔しさが彼女の中にじわじわと広がっていく。
警察に駆け込む前に後藤柚姫は交通違反と無免許で捕まった。事情を話し彼女はそのまま警察に保護されることになる。天人講には警察の捜査が入り、事件はマスコミが連日報道する騒ぎとなった。
あのあと木田村恵の行方は杳として知れなかった。彼女の失踪と同時に天人講の本部で管理していた個人情報と現金300万円余りが消えていた。




