六十四告目 天人講 18
後藤柚姫は交通遺児だった。両親の死後親戚をたらい回しにされ慰謝料や保険金を使い込まれ、金がなくなると施設に放り出された。親戚の家にいるとき後藤柚姫は何とか気に入られようと勉強や手伝いを頑張ったがそれが逆に実子に疎まれいじめられることになる。その結果彼女は次第に実力を隠して暮らすようになる。それは施設に入ってからも変わらなかった。しかし知識だけが自分を救う命綱だと信じて机に向かい図書館に通い続けていた。
天人講に来てからも後藤柚姫の処世術は変わらなかった。しかし天人講の集団生活では大人の手が足りず大家族のような互助が求められた。5人1組の班が割り当てられ行動に連帯責任を負わされた。後藤柚姫も班長として4人の子供たちの面倒を見ていた。彼女の班は虐待を受けていた子ばかりで自殺を図った女の子もその一人だった。
女の子がいなくなったあと、天人講では幽霊騒ぎが起こった。夜中になるとすすり泣いて徘徊する誰かがいるという子が何人も現れる。小さい子の中にはトイレに行けず漏らしてしまう子も出始める。
後藤柚姫は手製のお札を作りそれを廊下に貼ってお経を唱え「道順を守って外れずに歩けば変なものには会わない」と言って安心させた。それでも不安がる子を彼女の部屋に集めて寝かせ厭わずトイレに付き添った。
日之原金剛もその手際に多賀野ゆづの影を見て、後藤柚姫なら天人講を立て直せると期待するようになった。




