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五十六告目 天人講 10
多賀野ゆづの話を聞いて雨尻英郷は彼女を利用できないかと考えていた。
悪意に翻弄されたこれまでの人生を淡々と話す姿に薄気味の悪さを感じてはいたが、ここで彼女と別れてまた泥水をすするような生活に戻ることは考えたくなかった。
雨尻英郷もまた自分のこれまでの人生を話し、金を稼ぎたい、人に傅かれて暮らしてみたいとあけすけに自分の願望を語った。
意外にも多賀野ゆづは否定することなくその話を聞いた。そればかりかそんな荒削りな未来展望に枝葉を付け血を通わせるためのアドバイスをし始めた。
「ちょっと待ってくれ。それを俺ひとりでやれって言うのかよ」
「無理なことは言ってないはずだけど」
「そう言ってくれるなよ。俺と一緒に来てくれ。頼む」
雨尻英郷が頭を下げる。数瞬おいて多賀野ゆづはその話を受けた。
この日天人講は産声をあげた。




