54/260
五十四告目 天人講 8
しかし多賀野ゆづのそんな努力を一瞬で台無しにする事件が起こる。
有名私立高校を受験するための彼女の願書をボスママが娘のものとすり替えて送っていたのだ。ボスママに「自分の娘も受験するから、参考にしたいので貸して欲しい。出すのは娘のと一緒に私がやっておいてあげるから」と言われた母親が渡してしまったのだ。
ボスママの娘も多賀野ゆづと同じ特進クラスの塾に親の見栄で通わされていたが、成績は今ひとつで合格は難しいと見られていた。引っ込みが付かなくなったボスママの猿知恵だったのだろうが、当然ながらそのトリックは露見して願書は取り消され、図らずも替え玉受験の当事者となった多賀野ゆづは白い目で見られることになり公立高校の受験すらも絶望的となる。
多賀野ゆづの両親がボスママを訴えようとすると、ボスママは「そんなものは知らない。ウチの格をダシにして箔をつけようとしてそちらが勝手にやったのだろう。こっちこそいい迷惑だ」などと被害者面で言う始末だった。
父親の学習塾も評判が地に落ちて閉めざるを得なくなり、母親は離婚することになった。




