四十六告目 清水郁己 11
「なるほどね。でも悲観して自殺する人も出てくるわ。どうするつもり?」
「それも考えたさ。だけど僕がしたいのは人助けじゃない。傾いた世界を元に戻すことだからね」
「譲る気はないのね。そのための多少の犠牲はやむを得ないって言いたいの?」
「そもそもの原因を作ったのは自分たちだろう? そこを忘れて今苦しいから何とかしろなんて虫が良すぎじゃないのかい?」
「黙って見てろってことね。……はあ、芦屋道満を名乗るだけあって性格が悪いわ」
「だったら君が安倍晴明の役をやればいい。ただ性急に動くのは危険すぎる。もう少し時期を見たほうがいい」
「それはどれくらいなのよ? 嘘告をした人間は後ろ指をさされて一生日陰で暮らすことになるわ」
「そうはならないと思うよ。この国は良くも悪くも寛容だからね。デキ婚が授かり婚と言い換えられて元不良がチョイ悪オヤジとかもてはやされるくらいだ」
「だからってハンデには重すぎるでしょう?」
「……君は優しすぎる。大体僕は彼らに真っ当に努力してる人間と同じスタートラインに立てると思ってほしくないんだ。何度も言うけど、嘘は人を傷つける凶器で世界を腐らせる毒なんだよ!
嘘も方便? 詭弁だね。謝るより先に言い訳が口に出る。反省するより人を貶めるほうが簡単だ。情が義を退け信が疑に汚される。そんな世界は一度壊したほうがいっそ楽でいい!
……君なら分かるだろう、教祖様。そのための天人講だったんだろうから」
「やめて! もうやめてよ! 言われなくても、そんなこと言われなくても……分かるわよ」
清水郁己の挑発に後藤柚姫が思わず叫ぶ。




