四十五告目 清水郁己 10
清水郁己は大げさに肩をすくめ話を続ける。
「聞いていると死にたくなる音楽や見ることで死を呼び寄せる絵は存在するよ。サブリミナル効果や啓発ポスターなんかはその一例だ」
「そこに込められた強烈な感情に同調した人間が引きずられ行動する。つまりは催眠や洗脳ね」
「そういう事。それが独裁政治や戦争にもつながっていく。君の嫌いなカルトとかね」
「わざと言ってるの? だったらそんな挑発には乗らないから時間の無駄よ」
そう言って後藤柚姫は目を細めた。その手の悪意は何度も経験済みだ。決して馴れることはないが。
「そんなつもりじゃなかったんだけどね……ごめん、謝るよ」
「鎌田久留美や柊修二の自殺、それにつらなる人間の不審死、その原因を知ろうとした人間もまた無意識に死に向かう。そういう悪循環ができるのだけは回避したかった」
そこで清水郁己は間を取るように一口お茶を飲んだ。後藤柚姫は飲まなかった。
「柊の呪いは未完成だったけど、だからこそ余計に危険なものだった。二人の怨念が混ざり合ってしまっていて解くことは不可能。そして呪いの対象は無差別。通り魔殺人と一緒だよ。しかも姿は見えないから余計にたちが悪い。
だから呪いにシニコクという名前をつけて世の中に認知させ、対象を嘘告に絞りこんで別の罰を与えて死ぬことから逸らした。これが僕にできる精一杯だったよ」




