四十三告目 清水郁己 8
「五行思想でいうところの土剋水だよ。土が水を抑さえている。これが通常だとすれば反対の水剋土はバランスが崩れて大雨や水害が起こっている状態だ」
「それが嘘告と何の関係があるのよ」
「嘘告は因果を逆行させるんだ。好きな人がいるから告白する。それが失敗したとき嘘だと言って相手を貶めて自分が勝ったようにふるまう。転じて相手を貶めて自分が優越感に浸るために嘘告をする。目的と手段が逆になってる。学校も同じだよ。将来の目標のために勉強するんじゃなくて、どんな将来が来てもいいように勉強する。本末転倒だ」
「また脱線しているわよ。前の人生は先生だったの?」
後藤柚姫の指摘にまた清水郁巳が頭をかく。
「ああ、そうなのかもね。いずれ小さな悪意でも積み重なれば人は人を信じられなくなり、それがやがて世界を腐らせ狂わせていく。そういう事だよ」
「そんなの妄想でしょう? 世界が狂うなんて話が大きすぎるわ」
清水郁巳の話をくだらないと笑うことはできる。しかし呪われるという現実がある以上、簡単に切り捨てることはできない。
「そうかな。友人と賭けた一杯のビールの方が国の命運を賭けた国民投票より重い国があったり、祝宴で酒を持ち寄って大樽に入れたはずが自分だけ得をしようとした結果、全員が水っぽい酒を飲む羽目になる昔話もある。僕たちも日本という同じ船に乗っているなら、沈まないために危機感を共有する必要があると僕は思うんだけどね」
「そのためのシニコクだっていうの? だとしても悪いことをした人間を締め出してしまえばそれでおしまいって訳にはいかないでしょう?」
「だったら君はどうしたい? ただし呪いは止められないよ」
「私は……救える人がいるなら救いたい。3人が友達だからというだけじゃなくて」
「聖人だね。それが過去の罪滅ぼしになるとでも?」
「それは! ……ええ、そうね。そう思ってもらっても構わないわ」




