三十五告目 佐島鷹翔 3
学校を辞める。そう口にした佐島鷹翔の顔には何の感慨も見えなかった。
「えっ、何で? 大学行くんでしょ? 野球はどうするの?」
「推薦駄目になったらしい。一般入試で頑張ってくれだとさ。そんな頭あるわけねぇだろ。野球漬けだったんだから」
そう言って佐島鷹翔は力なく笑った。
「そんな……むこうから誘ってきたのに?」
元々は野球の実績を見込まれて大学のOBから持ち込まれた話だった。校長も乗り気で推薦状を書いたし、彼の家でも接待や寄付などで少なくない金を使っていた。
「親父は半分ヤクザみたいなところがあるからさ。事務所に正座させられて説教だよ。さんざん好きなことをやらせてやったのに恩知らずだ穀潰しだとか言われてさ」
彼の父親は土建屋の社長だった。いわゆる成り上がりでメンツや外聞にこだわる人間だ。
「俺も最初は我慢してたんだけどよ。こんなもの宝の持ち腐れだって事務所に飾ってた模造刀で肩を切りつけられたとき、さすがに俺もキレて親父を突き飛ばしちまったんだ。そしたら丁度窓があって2階から落ちて重傷だってさ。今も入院してるよ」
そのせいで家にも居られなくなったのだと言う。
「まあ……そんなことはどうでもいいんだよ。俺が千輝に聞きたいのは久留美のことだ」
「えっ?」
「久留美が自殺したんだってよ。知らねぇか? あのあと久留美に何かしたのかよ」




