8歳児と温かな家族。
「・・・・・ん?
私、何で寝てるんでしょう?」
朝のカーテンの隙間から入って来る太陽の光は、いつも私が起き出している時間帯よりも明るく部屋の中を照らし始めています。どうして、自分がこの時間まで眠ってしまっていたのか分からず慌ててしまいます。遅いと言っても、いつも私は早起きすぎると二人に言われているため十分に早い時間帯です。
「うぐっっ?!」
急いで寝台より起き出そうとした私に体当たりを仕掛けてきた塊がありました。
寝起きにはきつい攻撃を受けた私は、攻撃をしてきた相手を確かめます。正体は、・・・あーやんでした。おそらく、攻撃というよりは私に跳びかかったのでしょう。調度みぞおちの辺りにあーやんの頭が入りました。
「あーやん?」
話しかけたあーやんは、私のお腹からどこうとせずにさらに頭をこすりつけてきます。そんなあーやんの姿を不思議に思っていると、私の頬に柔らかな尻尾が触れました。それは、寝台の端に腰掛ける私の背中側からふよふよと自分も背中を向けたまま尻尾を伸ばしているジェダでした。
あーやんはともかく、ジェダまで甘えてくることは珍しいと思いながらも、2匹を安心させるように撫でます。側を離れようとしない2匹に困惑しながら、そろそろ動き出したいことを伝えようとすると調度良く扉が開きました。そこには、リオを抱いたお師匠様と氷りの入った桶を持つキースさんの姿がありました。
「あ、お師匠様、キースさん、おはようございま・・・・・」
「りぐぅぅっっ!!」
「・・す・・・?」
挨拶の途中で叫び声を上げたお師匠様に再び困惑してしまいます。リオを抱いているため側に来ても、私を抱きしめることは叶わず、滂沱の涙だけを流し続けています。
「えっと、キースさん?」
困った時はとりあえずキースさんに聞いてみることに私はしています。
「・・・はぁ。リク、身体はもう大丈夫なのか?」
「身体・・・?」
「そうだ、覚えていないのか?
お前は昨日熱を出して倒れていたんだぞ?」
「私が、熱・・・?」
そういえば、昨日の朝はやけに身体が重くて、起きるのも大変だったことを覚えています。私は、ただ疲れているだけかと思っていましたが熱が出ていたんですね。
「すみません、お師匠様、キースさん。
ご迷惑をお掛けしました。」
よりにもよって、体調を崩したばかりか、倒れて寝込んでしまうなんて二人に負担をかけてしまいました。反省しなければいけません。
「・・・・・。」
そんな私の両頬をキースさんは両手でつねって、伸ばし始めました。
「いひゃいでしゅ、きーしゅしゃん!にゃにしゅるんでしゅか?!」
「・・・・・・。」
「いひゃいでしゅっ!いひゃいじぇしゅ!!」
両頬を限界まで引っ張り、バチンッと手を離します。
「あうぅぅ。」
両頬がひりひりします。どうして私は頬をつねられたのでしょう?
「なんで、俺たちが怒っているか分かるか?」
「・・・迷惑をかけてしまったからですよね?」
「ちがう。そんな事はどうでもいい。」
キースさんが何に怒っているのか分からない私は、お師匠様へ視線をずらします。お師匠様も困ったような、怒っているような顔をしています。理由が分からない私は、黙って考えるしかできません。
「・・・わかんねえみたいだな。
たくっ、いつも大人顔負けのお前が、なんでこんな簡単なこともわかんねぇんだろうな。」
キースさんは、ため息を付きながら言葉を続けます。
「いいか、リク。
俺たちは、お前が倒れて世話をすることくらい迷惑なんて思ってねえ。
その逆だ。お前が倒れるまで俺たちに甘えなかったことが許せねえんだ。
・・・そして、お前が倒れるまでお前の負担に気がついてやれなかった俺たち自身が情けねえ。」
「そんな事ありませんっ!
私が、自分の体調を管理できなかったんです。
二人の責任ではないですっっ!!」
キースさんの言葉に私はやっと理解した。二人は私が倒れてしまったことに責任を感じてしまっていることに。
「リク、俺たちはお前のことを大切な俺たちの娘だと、家族だと思ってる。
だから、悲しいんだよ。お前に迷惑だなんて言われたことが・・・。」
「・・・・・・。
キースさん、お師匠様、ごめんなさい。
心配かけて、迷惑だなんて言ってごめんなさい・・・。」
キースさんの言葉がとても嬉しかった。私を家族と認めてくれている彼らが温かかった。
「違うわよ?
リク、こういうときは"ごめんなさい"じゃないわ。」
お師匠様が、私に微笑みながら話しかけてきます。
「・・・・・はい。
お師匠様、キースさん、ジェダ、あーやん、リオ。
心配してくれて、看病してくれて、ありがとうございました。」
私を優しげに見つめてくる彼らの眼差しにくすぐったさを感じながら、私は感謝の言葉を伝えます。
彼らは、当然のことだとばかりに私へ笑顔を返してくれるのでした。




