狼さんと変わった少女 その2。
《???》
思い起こせば、僕はいつだって僕の事ばかり考えて生きてきた。
最初は確かに、両親の事を悪く言われたくなくて努力したのは嘘じゃない。でも、途中から目的は変わっていったように思う。一族に認められたいくせに、強くなっていく自分の心の中で自分より弱い奴を見下していた。一族を守ろうだとか、誰かと仲良くなりたいだとか、そんな感情は無かったと思う。
そうして、飛び出した世界でも自分より劣った身体能力しか持たない連中を心の中で軽んじていた。強い自分には他者の存在なんて必要ないとばかりに振る舞った。
矛盾していたんだ僕は。認められたいくせに自分は他者を認めず、そればかりか見下してさえいた。そんな僕を誰が認めたいと思うだろうか・・・?そんなお人好しは、目の前にいる彼女くらいのものだろう。
だから、僕は彼女の自分自身を軽んじるような言葉を否定する。
「・・・違うだろう。
お前は確かに才能があるとは言えない。
でも、諦めることなく努力し続けた事で些細な事かもしれないが現れた成果は本当にないのか?
たとえ人並み以上に出来なくても、努力し続ける事で得る物は他にもあるだろう?
それは努力しなかった奴は決して得る事のできない物だ。お前が誇って良い物だと思う。」
今まで、他者と関わってくる事が少なかったためか、彼女を励ますような言葉をうまく表現することが出来ない僕自分がどうしようも無くもどかしかった。
「確かに実力が無ければ届かない事もある。
努力だけでは叶わない、無駄になる事も有るかもしれない。
だが、傲慢になることなく努力し続け、歩み続けるお前を助けたいと思う者達は必ずいると思う。
少なくとも、お前が資格がないと言った"家族"とやらは実力の無いお前を見捨てるような奴らか?」
少なくとも僕にはそうは思えなかった。彼らは、今後彼女がどんな未来を歩む事があっても決して側を離れることなく、彼女の心と身体が傷つき、壊れる事がないように守り続けるだろう。
そんな未来の彼女の側にはきっと僕の姿は無いだろう・・・。自分のことばかり考え、一時は彼女を利用しようとすら思った僕が側にいられる等という都合の良い話しは無い。
そんな自分の心中を自嘲しながら、彼女にはそんな思いが伝わらないように隠し通す。
「・・・・・狼さん、ありがとうございます。
あなたのおかげで大切な事を思い出す事が出来ました。」
そんな僕に優しげな光りを紫の瞳に灯しながら、涙を流すことなく、今まで出会った誰よりも綺麗な笑顔を僕に惜しみなく向ける彼女の感謝の言葉は、自嘲している僕の心に温かく広がっていった。
叶う事ならば、僕はもっと早く彼女のような存在と出会いたかったと心の底から思った。そして、出来る事ならば彼女のこの優しく、温かな心が傷つく事がないように側で見守り、守り続けたいと願う。けれど、それは許されない。だから、少しでも長く彼女の側にいる事にしたいと思う。せめて、この背中の傷が塞がるその時までは・・・、僕も貴女を傷つける全ての物から守る事を誓おう。




