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異世界ナイチンゲールの奮闘記!!  作者: ぶるどっく
第3章 8歳児と銀狼の戦士。
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8歳児とある朝の出来事。

 今日は、いつもより少し早く目が覚めました。夏用の薄い布団の上にはジェダとあーやんが寝ています。ジェダは私が起きたのに気がついて、すぐに丸くなっていた身体を欠伸をしながら伸ばしています。逆に、あーやんは私が起きたことに気がつかずに、お腹を上にして"ふごっ、ふごっ"といびきをかきながら眠っています。そんなあーやんをジェダが猫パンチで起こします。可愛らしい2匹の様子に癒されながら、静かに日課のジョギングをするために家を出ます。


 2匹が私の後を一緒に付いてきているのを確認しながら、お師匠様が私の安全を考えて決めた道を走ります。夏の朝の森は昼間の暑さが嘘のように、少し肌寒く感じます。すでに空が朝焼けに染まり始めているのを横目に見ながら、休むことなく走り続けます。

 いつも通りに走っていた私たちですが、突然あーやんが立ち止まります。結界の境界線がある方向をしばらくじっと見つめて、何事もなかったように足を止めた私の元に駆けてきます。

 不思議に思いながらも再び走り出そうとした私の鼻先に微かに錆びたような鉄臭い匂いがしました。それは、"血"の匂いのように感じました。足を止めた私を急かすように2匹は、いつも通りの道を行こうと促してきます。その様子に私は結界の境界線がある方に何かがあるのだと思い至り、心の中でお師匠様とキースさんに謝りながらそちらの方へ走っていくのでした。そんな私に、ジェダはため息を付くようにあーやんの鼻先をその優雅な尻尾でぴしゃりと叩き、走り出します。鼻先を叩かれたあーやんは、小さく"きゃんっ"と鳴き、ジェダに続き走り出しました。



 お師匠様の張った結界の境界線ぎりぎりまで近づくと、微かに感じていた血の匂いが徐々に強くなりました。しかし、その発生源である怪我人を見つけることは出来ません。一緒に来た2匹はあまり探す気がないみたいです。

 ・・・・・お師匠様が紋章術を込めて、私が想像して生まれたこの2匹の守護者達。彼らは、お師匠様の魔力の影響を受けているのかは分かりませんが、基本的に家族以外の人間や生き物に興味がありません。だから、今回のように血の匂いを感じたとしても、私を危険に近づかせないためにあえて無視します。私を守るためだと分かっているから、この子達を責めることは出来ないんですよね・・・。要するに、私が自分の身を守れるくらいに強くなれば良いんですから。


 そんな事を考えながら、結界より外に出ないように気をつけて怪我人を捜していると見つけました。結界のすぐ側の木の根元にある茂みから微かに足のような物が見えます。ですが、私はお師匠様達との約束で結界の外に出る事は叶いません。

「ジェダ、お願い。あの人を結界の中に風の力で運んであげて。」

 ジェダは、嫌そうに眼を細めます。お師匠様の結界は、お師匠様とキースさん、そしてこの2匹が許可をすれば入っても大丈夫なように設定され直されています。・・・・・・・なぜ、私には許されなかった結界に入る許可をお師匠様達がこの子達に与えることを許したのかは、・・・気にしません。絶対に、気にしていませんと言っておきます。

「ジェダ、お願い。」

 繰り返しお願いする私に、しょうがないなというようにため息を付きます。微かに見えていた足の持ち主がいる場所を中心に風が渦を巻きます。ゆっくりと浮かび上がり、結界の中へ運ばれてきたのは体中に怪我を負った"若者"でした。

「?!」

 "若者"の身体には大小無数の怪我があり、特に太ももと背中にある裂傷が痛々しいです。ですが、幸いなことに大きな血管を傷つけるまでには至っておらず、血も止まっています。多少、顔は青白いですが感染などを起こさなければ命に別状は無いでしょう。身体の状況を観察していた私ですが、一番驚いたのは"若者"の頭とお尻に生えている物でした。


 血の気を無くし、余計に作り物めいた美しさを感じさせる顔立ち、白銀を集めたように輝く髪、その髪の間からは同色の"犬"のような動物の耳が生えています。そして、細身ですがしっかりと筋肉の付いたしなやかな身体の腰より少し下の辺りに髪と同色のふさふさとした尻尾が生えています。

 驚きは有りましたが、広い世界の中にはそんな趣味の人もいるのだろうと考えを強制的にまとめ、"若者"に声をかけます。

「しっかりして下さい。大丈夫ですか?」

 痛みを与えないように慎重に、身体を揺すり、声をかけます。私の呼び声に辛うじて眼を開き、小さな声で何かを呟いた気がしましたが、"若者"はすぐに意識を失ってしまいました。そんな人を放置することは絶対に出来ず、私はジェダに頼んで家まで運んで貰うのでした。

 お願いした2匹がやれやれというような呆れた表情をしていた気がしましたが、きっと気のせいだと思います。



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