プロローグ
《プロローグ》
山深く周りを木々に、入り口とは反対側を湖に囲まれた場所に1つの集落があった。
隠れるようにある、その集落に住むもの達は同じ共通点があった。黒い獣の耳に、黒く豊かな尻尾。ここは、獣人達の集落であった。
そのなかでも、一際眼を引く"若者"がいた。その者は、戦士になるべく集落の中心の広場にある一対一の闘いの場に立っていた。集落に住む多くの住人達が闘いの場の周囲を囲み、闘いの行方を見守っている。"若者"は己よりも体格も、年齢も上の男の獣人を前に怯むことなく立っている。男の獣人がその体格にあった通常の剣よりも幅広で、重量もある剣を構えているなか、"若者"の剣は細身で軽量な二振りの細剣であった。皆が見守るなか、闘いの合図が響く。両者一斉に駆けだし、交差する。重い一撃を繰り出し、攻勢を緩めない男の獣人に対して防御しながら隙を伺う"若者"。そして、好機を捉えた瞬間にその二振りの細剣を持って峻烈な連続攻撃を仕掛ける。あまりの速さの連撃に防御が間に合わず攻撃を受けてしまう獣人の男。そのまま、獣人の男は挽回する機会を与えられることなく、数多の攻撃をその身に受け地に伏せた。
勝利を得たそ"若者"は、集落の長の前に進み出る。しかし、その"若者"に戦士になることは許されなかった。何故戦士になることを否と言われたのか、その答えを得ることも赦されず、ただ一言鍛錬有るのみとだけ告げられた。
その言葉を受けた"若者"は、ただ一言を言い残し集落を飛び出して行くのであった。
「お前達は、僕の色がそんなに気にくわないのかっ!もういいっ、外の世界で誰よりも強い戦士になってやる!!」
その日、黒狼族の集落より銀色をその身に宿す"若者"がいなくなった。
暑い夏の日差しが照りつける季節。しかし、このユーラスの森、通称"魔の森"は外界に比べ幾分涼しく感じる。
そんな森の中には、結界に囲まれた煙突のあ一軒家があった。暑さを和らげるつもりか風を少しでも取り込むために開けた窓からは、微かな風が入って来るだけであった。
微かな風がカーテンを揺らすだけの静かだった空間に大きな泣き声が木霊する。その泣き声の持ち主は、窓から少し離れた場所にある揺りかごの中にいた。揺りかごの中には、赤銅色の髪に金の瞳を持った産まれて間もない赤子が泣き声を上げ続けているのであった。
いつも、読んで下さりありがとうございます。
間章を挟んで第3章が始まりました。なかなか文章がまとまらず、ご都合主義な所もありますが、頑張ってまとめていきたいと思います。
これからもよろしくお願いします。