閑話 7歳の誕生日の夜の二人。
《キース・アズノルク》
今日は、リクの7歳の誕生日だった。リクと出会ってもうすぐ2年になる。
リクやメリッサと出会う前の生活はもう考えられねぇと言っても過言じゃねぇ。俺は、サリアとマリンを無くしてから自暴自棄になってた自覚がある。だが、メリッサを含めたあの仲間達と出会ってだいぶ変われたと思う。
だが、最後の一線は俺自身でもどうしようも無かった。こいつに、メリッサに惚れていると自覚したのはどれくらい前だろうな。最後の一線を越えることの出来ない俺は、前を向くことも出来ずに本気でメリッサを口説くことすら出来なかった。他のどうでもいいような女を相手にして、メリッサの心が俺に向かないことに苛立って、他の男が近づくのが嫌で影で排除しまくってた。
そんな俺の心の奥にある最後の一線をぶち壊してくれたのが、まだたった5歳だったリクだった。俺自身でもどうしようも無かったことを、数日一緒にいただけのこの子がやってのけ、俺の心と命を救ってくれた。おかげで、俺は前を向けるようになった。そして、本気で口説き始めたメリッサは最初から俺の言葉も態度も信じてくれねえ。まぁ、自業自得だけどよ・・・・・。
だが、俺は本気でメリッサが欲しかったから、逃がさねえし、容赦もしねえ。
ただ、まあ、最後の決め手になる機会を作ったのが、リクの言葉にメリッサがうっかり本音を漏らしちまったということだからなぁ・・・。メリッサを本気で口説き落とすことは出来たが、リクにはますます頭が上がねえ。
まあ、俺にとっても可愛い俺の娘だと思ってるから問題ねえ。嫁にやるつもりも今のところねえな。多分、俺とメリッサの間に子どもが出来てもこれは変わらねえだろう。俺にとってメリッサがいて、リクがいる。これ以上の幸せは無いと思ってた。
それが今、俺はそれ以上の幸せに身体を震わせている。思わず抱きしめたメリッサは苦しいのか、俺の腕の中で身体を捩っている。
「・・・・・キース?」
居合わせに震える俺は、俺を呼ぶメリッサの声に満足に応えることができねえ。
「・・・キース、あたしはあんたの子を産んでも良いの?」
その言葉に令嗣を浴びせられた気がした。思わず、ほんの少しだけ身体を離し、俺は叫んでしまう。
「なに当たり前の事言ってやがるっ?!」
俺の腕の中にいるメリッサの顔は平気そうな顔をしてはいるが、その瞳は不安そうに揺らいでいる。その顔を見て、俺は彼女に言うべき言葉をまだ贈っていないことに気がついた。
「・・・わりぃ。ちげーよな。
メリッサ、・・・ありがとう。俺の子を産んでくれるか・・・・・?」
「っっ!!
っの、ふぬけ野郎っっ!!何当たり前の事言ってんのよっ!!!」
俺の言葉を聴き、顔を真っ赤にしたメリッサは強く答えを返す。
「ふんっ!!
あんたがいらないって言っても勝手に産んで、リクと三人で仲良く、末永く、幸せに暮らすから何の問題もないわよっ!!」
「それは、ぜってーに嫌だ。親子4人で仲良く暮らそうぜ。
だからよ、メリッサ。愛してる、俺のために結婚してくれ。」
「・・・遅いのよ、ふぬけ野郎。
しょうがないわね。別にあんたがいなくても、あたしはいいけどっ!
リクと・・・この子はきっと悲しむから、結婚しても・・・その、良いわよっ!
だから・・・、あんたも、キースも含めてしっかりと幸せになるわよ。」
情けねえ話しだが本当に俺は、メリッサとリクには勝てねえ・・・。でも、確かに満足にプロポーズも出来ねえ俺はふぬけ野郎だな。まあ、死ぬまでには絶対に挽回してみせると心に誓い新たな命を授かったことに、神ではなく俺を救ってくれた二人に感謝した。
月明かりが照らす静かな森の夜、二人は嬉しそうな、幸せな笑顔でいつまでもこの幸せが続くように願うのだった。




