表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ナイチンゲールの奮闘記!!  作者: ぶるどっく
第二章 5歳児と魔銃(マガン)の冒険者編。
13/147

5歳児と世界と誓詞。

 さて、改めまして私はリク・エキザルトと言います。

 現代日本において看護師として働き過労で倒れたと思えば、お約束の神様とやらにお会いすること無く異世界に前世の記憶を持ったまま転生を果たしました。

 この世界を受け入れるには、多くの覚悟と諦めが必要でした。でも、5年前の"あの日"私は本当の意味でこの世界に生まれたんだと思います。一歩間違えれば受け入れることなく強制終了でしたが・・・。

 赤子の時の記憶が有ることは、私を拾って下さったお師匠様にも話してはいません。私が生まれてから半年という短い時間でしたが、確かにこの世界の両親や兄は新しい家族の一員として愛してくれました。でも、不幸なことが重なり離ればなれとなってしまったんです。赤子であった私が家族や名付けられていた"アレクシェル"という名前を知っているはずがありません・・・。

 そして何よりも私は、前世の"私"を捨てることはできませんでした。ですが、"アレクシェル"も私の大切な名前です。いつか成長して離れてしまった家族に会いに行こうと思っています。


 そろそろ本題に入りましょう。

 私はずっと疑問に思っていたことがあります。それは、なぜ"アレクシェル"は誘拐されてまで命を狙われたのかということです。"アレクシェル"は生まれて間もない"姫"でした。この世界よりは身分格差が少なく、一般人という環境で育った私にとって馴染みのない話です。王家や貴族などに対するイメージは物語などの空想的な者でしかなく、情報も少なく判断に困ってしまいました。

 考えても答えが出なかったので、まずはお師匠様にお願いしてこの世界についての情報を得るために文字を習得することにしました。幼い子どもの言うことではないとわかってましたけど、背に腹は代えられません。もっとも、お師匠様は自分のことを天才と言うだけに3歳になる頃には分厚い専門書が読めていたそうで、あまり疑問は感じていない様子でした・・・。

 そうして文字を覚え、お師匠様の蔵書や私のために購入してくれた本を読みあさり答えを朧気ながら知ることができました。


 このテイントベルと呼ばれる大陸には、大小様々な国があります。そのほとんどの国にフォルティナ教という宗教が信じられているのだそうです。その宗教の根本にあるのが、治癒魔法は女神に選ばれた者しか使えないという"女神神話"と魔に属するものが女神に対抗して作った"病魔説"。

 私が愕然としたのはこの"病魔説"です。病気を"治らない怪我"として一纏めにして、すべての原因は"病魔"であるなんて強引過ぎる考えにあきれました。ですが、それ以上に怒りを覚えたのは病人に対するこの世界の対応についてです。

 この世界では医療行為はあまり発達しておらず、熟練の冒険者が経験に基づいて応急処置ができる程度、薬も魔法薬に頼り切っています。病人を看病するという意識も低く、"看護"という概念はほとんどありません。それこそ、19世紀の"看護師"という仕事が蔑まれていた時代並みです。軽い病気ならばいいですが、重い病気であれば貧富問わずに捨てられることが多いようです。感染症の特徴も研究している訳でなく、女神のお告げだとかそんなものに頼っている現状です。

 その上、教会は敬虔なる信者には病魔は取り憑かないし、もし病気になったとしても女神が試練を与えているんのだと信者に説いています。反対に敬虔な信者でなければ天罰が下ったのだとか、好き勝手に吹聴しているようです。病気で死ぬのは女神がこれ以上苦しまないように救いの手を差し伸べてくれたのだと教会にとって都合がよいように説いている部分もあるようです。

 そんな教会ですが、このエリューシオン王国では数十年前に流行病で多くの方が亡くなり、王家や貴族だけでなく交流のあった国々の中でも疑問を持つものが増えて教会の求心力は年々低下の一途をたどっているようです。


 "アレクシェル"を誘拐した者の1人である"ミリー"の言葉からも、教会が影で糸を引いていたことが伺えます。私は自身が害されそうになった事にも怒りを覚えましたが、それ以上に教会の教えに強い怒りを感じました。

 前世の"私"は看護師でした。たった十年ほどしか働いていませんが、それでもその仕事を勤め上げてきた矜恃があります。"私"は、"医者"ではありません。まして"女神"でもありません。できることも、知っていることも少ないでしょう。実際に目の前で失った命に無力感に苛まれ、家族の悲痛な叫びに何度涙を流したでしょう。この世界で、捨てられた人の中には助かる命が有ったかもしれません。それを思うと教会の考え方は、私の神経を逆なでするものでしか有りませんでした。


 この世界の事を知って行くにつれて、私の心は1つの思いが生まれ育ちました。そして、その思いを胸に秘め5年前の"あの日"に決意したように、私は再び覚悟を決めました。

 前世において看護師を志し、ナースキャップを頭上に戴いた戴帽式(たいぼうしき)の日、友人達と共に偉大な看護の先駆者達に祈りを捧げ、己の心に誓ったあの"誓詞"をこの世界で再び誓うことを・・・。


 呼んで頂きありがとうございます。

 本日3回目の更新です。早く新しい登場人物を出したいんですけど、なかなか前に進まないです・・・。

 早くは出せるようにがんばりたいと思います。

これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ