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『みるくラテ』〜人見知り独身の私、ドラマの恋に憧れてたら……チワワと〇〇で異世界を無双していました。  作者: 日和
第一章

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第六話 小さな守護者の決意

 ぼくは、少しだけ反省していた。


 みるくの足元で、ちょこんと座る。


 いつも通りの、小さなチワワ。


 でも、その内側では、さっきの出来事を何度も思い返していた。


(……あれ?)


(もしかして……ぼく、ちょっと……)


 視線を、そっと家の外へ向ける。


 運ばれていく、あの夫婦。


 気絶したまま、ぐったりしている。


 命に別状はない。

 ちゃんと、甘噛み程度に抑えた……はず。


(……うん、たぶん、大丈夫)


 みるくは、まだ状況を整理しきれていない様子で、静かに座っている。


 村長と向かい合いながら、何度も言葉を飲み込んでいる。


 その横顔を見て、ぼくは思う。


(みるくは、やっぱり優しい)


 あんな話を聞かされて。


 自分が“差し出される側”だったと知って。


 それでも、怒鳴らない。


 責めない。


 ただ、理解しようとしている。



「……あの人たち」


 みるくが、ぽつりと口を開く。


「どうなるんですか……?」


 村長は、一瞬だけ目を伏せた。


「……大丈夫よ。少し眠っているだけだから」


 嘘は言っていない。


 でも、すべてでもない。


「本当は……逃がすつもりだったの」


 静かに続ける。


「あなたを、ここから遠くへ」


 みるくの瞳が揺れる。


「……え?」


「この村にいれば、いずれ“選ばれる”」


 村長の声は、低く、重かった。


「だから……あの二人に頼んだの。あなたを連れて、この村を出てほしいって」


 あの夫婦は、悪い人ではなかった。


 穏健派の村長を支持する、出会った時と同じく優しい人たちだった。


 みるくは、言葉を失う。


 信じていいのか、分からない。


 でも、さっき見た、村長の震える手。


 あの覚悟。


 それが、嘘には見えなかった。


(……あれ?)


(じゃあ……ぼく……)


 ラテは、ほんの少しだけ目を逸らした。


 しっぽが、ぴくりと揺れる。


(……やっちゃった?)


 ほんの数秒の沈黙。


(……えへ)


(ちょっとだけ、まちがえちゃったかも)


 小さく、内心で舌を出す。


 もちろん顔は、いつも通りの無垢なチワワ。


(でも、大丈夫)


(ちゃんと、なおせばいい)


 その目が、すっと細くなる。


 柔らかさの奥に、鋭い光が宿る。


 そのとき。


 外から、ざわめきが広がった。


 慌ただしい足音。


 誰かの叫び声。


「来たぞ!!」


 村人たちの顔から、血の気が引いた。


「……そんな……今日はまだのはず……」


 村長の声が、震える。


 みるくも、反射的に立ち上がった。


「なにが……来るんですか……?」


 その問いに答える前に。


 “それ”は、現れた。



 遠くから、地面を揺らす音。


 重く、鈍い振動。


 空気を裂くような、低い唸り声。


 村の入り口。


 木々の隙間から、異形の影が姿を現す。


 人の倍はある巨体。

 歪んだ四肢。

 濁った目。


 魔物。


 みるくの呼吸が、止まる。


「……あれ……」


 現実が、追いつかない。


 でも、村人たちは違った。


 何度も見てきた恐怖。


「下がって!!」


「家に入れ!!」


 叫び声が飛び交う。


 でも、その動きには、どこか“諦め”が混じっていた。


(……ああ)


 ぼくは、理解する。


(これが、この村の現実なんだね)


 戦えない。


 逃げられない。


 だから差し出してきた。


(でも)


 ぼくは、みるくを見る。


 その手は、震えている。


 でも、逃げていない。


 目を逸らしていない。


(うん)


(やっぱり、好きだなぁ)


 ラテは、すっと、立ち上がる。


 小さな体。


(さっきの、おわびもしないとね)


 しっぽが、ふわりと揺れる。


(この村、ちゃんと守ろう)


 みるくには、まだ分からない。


 この小さなチワワが、どれだけ規格外なのか。


 ラテは、一歩前に出る。


 誰にも止められない、静かな一歩。


「ラテ……?」


 みるくが、小さく名前を呼ぶ。


 ラテは振り返らない。


 でも、ちゃんと聞こえている。


(大丈夫だよ、みるく)


 声にはしない。


 でも、その背中が語る。


(ぼくがいるから)


 魔物が、唸り声を上げる。


 地面が揺れる。


 恐怖が、空気を満たす。


 その中で。


 たった一匹のチワワが前に出た。


 世界が、静かに歪み始めた中で、小さな守護者が、本気を出す決意をした。

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