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259.全ての終わりを望みし者達

短め。

「あーあ、折角色々忠告してあげたのに。けーっきょく"烙印"も"冒涜"も負けちゃったんだねー」


 薄暗い闇の中。

 椅子の背もたれに自重を預けながら、両足をブラブラと揺らしながら、その男は呟いた。

 歳は若そうに見える、外見は十代後半から二十代前半位だろう。

 しかし、外見年齢は当てにならないだろう。

 何故なら彼の耳は尖っており――エルフと呼ばれる亜人種族に見られる特徴がある。

 外見と実年齢が乖離していてもおかしくないが、それにしても、言動に幼さを感じる。


「ま、しょうがないよねー。アイツ等って、神様の"本当の願い"をなーんにも理解してないっぽいしー」


 男は椅子から勢い良く立ち上がる。

 彼の目の前に広がるのは、赤黒い光を宿した、巨大な魔法陣。

 そして、その魔法陣の中央に陣取る、一人の影。


「キミもそう思うでしょ? "破滅"のディアドラさん?」


 魔法陣の中央――ディアドラと呼ばれた人物は、男の問いに答えない。

 一瞥(いちべつ)だけして、黙して語らず。

 その場から一歩も動かず、(うずくま)ったままである。


「ちぇー、なーんも話してくれないしさー。"怨恨"もずーっとダンマリだしー」


 男が視線を向けた先。

 壁を背にし、膝を抱え込むようにして座り込んでいる人物に水を向ける。

 目深にフードを被っており、顔立ちは分からない。

 だがそれでも、体格位は分かる。

 恐らく子供なのだろう、体勢も相まって、随分と小さく見える。


「ま、良いや。僕は僕で勝手に、真の意味での"永久の楽園"の為に動くだけさ。キミにも働いて貰うよ?」

「……ああ、分かったよ」


 男の声に答えたのは、以前は"暗躍"のミゲールと呼ばれた男と一緒に行動し、"適合者"達の根城に出入りしている男であった。

 彼は"適合者"と呼ばれる存在ではないが、何故かここを拠点にし、彼等の活動に協力していた。


「それじゃあ、これからどうするんだ"神託"さんよ」

「決まってるじゃーん」


 男――"神託"と呼ばれた男は、軽い口調で続ける。


「今までコツコツ積み上げた花火を、ドカーン! って打ち上げるんだよー!」


 腕を大きく広げ、大げさなジェスチャーを交えながら、"神託"は宣言する。


「神は滅びあれと言われた、故に消えるべし。一切合切、無へと還れ。在るべき姿へ、それこそが主の望み……でしょ?」


 誰かから、そう教わったのだろう。

 (そら)んじる"神託"。

 

「人間って愚かだからねー。僕が直接手を出さなくても、勝手に自分達で滅びるのさ」

「……その道を舗装しておいて、良く言うな」


 男はポツリと呟いた。

 "神託"は今の今まで、"魔王"に言われた通りに行動してきた。

 火種を見付けたら燃料を注ぎ、煽って炎を大きくし続けた。

 燃え上がるお膳立てをし、大火となって燃え広がるように。


「他ならぬ神様が、滅びを望んでいるんだからさあ。この世界は、滅びるべきなんだよ。そうでしょ? "魔王"様?」

「――そうだ」


 "神託"の言葉に賛同する、一人の声。

 低い、男の声が、空間の奥から聞こえてくる。


「あの場所から、"神"とやらを引き摺り出す。それで、この世界が滅びるというならば――」


 空気が、震える。

 この場の温度が、氷点下にまで下がってしまったかのような、寒気を感じる程の、圧力。


「滅びてしまえ」


 恨み、怒り、失望、殺意、渇望。

 あらゆる負の感情を押し固めたような、その一声。

 常人であらば、その一声だけで気を失い、下手すれば命すら落としかねない程に、おぞましい感情を乗せた声であった。


「じゃ、行ってくるね"魔王"様!」


 そんな声を聞いたというのに、何も動じる事無く、"神託"は軽快な足取りでその場を後にする。

 その言動は、まるで無邪気な子供かのようである。

 "神託"の後に続いて、男もその場を去る。


 積極的に喋ろうとする者がこの場から居なくなり。

 薄暗い闇に包まれたこの空間を支配するのは、静寂のみであった。

何故か毎週更新してたけどもうしないよー弾切れだよ弾切れ

そろそろ第二部を考えないと

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